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自然科学研究機構 研究Discovery Saga
2026年4月14日

1粒子ごとの超高速分光で、光捕集アンテナの"見えない違い"を可視化

〜 不均一性で分解する新しい過渡吸収顕微分光法を開発 〜

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学数物系科学化学生物学総合理工工学総合生物医歯薬学
【Sagaキーワード】
アンテナ/太陽/分子集合体/光合成/光生物/太陽光/顕微分光/光吸収/光励起/超高速分光/ダイナミクス/ナノメートル/ピコ秒/フェムト秒/励起子/分子システム/ゆらぎ/不均一性/分子集合

2026.04.13
自然科学研究機構 基礎生物学研究所
自然科学研究機構 生命創成探究センター
総合研究大学院大学
名古屋工業大学

発表のポイント

1. 1分子レベルの測定感度に迫る超高感度過渡吸収顕微鏡を開発
2. フェムト秒時間スケールで生じる光励起ダイナミクスを「不均一性分解超高速分光法」という新たなアプローチで解析
3. 光合成の光捕集で重要な役割を担う励起子状態の不均一な挙動を明らかにした

概要

光合成生物は太陽光を効率良く集めるために、ナノメートルサイズの分子システムを構築しています。そこでは多数の色素分子が協調して光を集め、すばやくエネルギーを運んでいます。この“光吸収”と“エネルギー輸送”を担うのが光捕集アンテナであり、複数の色素分子が精微に配列されることで機能を発現します。しかし、全く同じ分子集合体からできている光捕集アンテナでも、粒子ごとの構造は完全には同じではなく、それぞれで少しずつ異なります。さらに、熱的なゆらぎや環境の変化に伴い、構造は時間的にも変動しています。こうした違いは、光吸収後にフェムト秒からピコ秒の時間スケールで生じる超高速励起ダイナミクスに影響しますが、従来の測定では多くの粒子の平均的な挙動しか得られず、個々の違いを直接調べることは困難でした。光吸収直後の振る舞いに依ってその後のエネルギーの行く末が大きく左右されるため、光捕集機能においては重大な問題となります。

基礎生物学研究所 光物理生物学研究部門/生命創成探究センター(ExCELLS) 連関系光生物学研究グループ/総合研究大学院大学の新井 峻大学院生および近藤 徹教授は、1分子レベルに迫る超高感度の過渡吸収顕微鏡を新たに開発し(図1)、名古屋工業大学生命・応用化学類の松原 翔吾助教が独自に調製した光合成生物の光捕集アンテナモデルを1粒子ごとに測定しました。超高速励起ダイナミクスを解析したところ、粒子ごとに不均一な挙動を示すことを突き止めました。さらに、平均するとほぼ同じに見えるダイナミクスの中にも、不均一分布の違いによって見分けられる複数の成分が隠れていることを明らかにしました。不均一性は生体系や分子系に普遍的に存在する特徴ですが、通常はあまり注目されることがありません。本研究では、それを解析に利用することで「不均一性分解超高速分光」という新たな分光解析アプローチを確立しました。本研究成果は2026年4月2日付でThe Journal of Physical Chemistry Letters誌にてオンライン先行掲載されました。



図1:新たに開発した過渡吸収顕微鏡の模式図(左)と写真(右)。 詳しいプレスリリースを見る