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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年4月13日

\かぶせの臨床経過と三次元デジタルデータを調査/ 国民健康保険の白いかぶせ(奥歯)が外れる要因究明

日本発のメタルフリー治療による医療費低減への貢献に期待

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
歯をあまり削らずに白いかぶせ治療を行える、すなわち『より低侵襲なメタルフリー治療』が実現できる可能性
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学数物系科学工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
人工知能(AI)/データ解析/樹脂/貴金属/持続可能/持続可能な開発/CAM/コンピュータ支援設計(CAD)/医療費/歯学/パラジウム/アレルギー/生体材料/低侵襲
2026-4-8●生命科学・医学系歯学研究科准教授峯 篤史

発表のポイント

CAD/CAM冠の臨床経過と三次元デジタルデータを調査し、冠の脱離(かぶせが外れること)を抑制する治療法(土台の形の整え方、使用材料)を明らかに。
近年、金属を使用しない歯科治療へのニーズが高まり、また、金属価格の高騰も深刻化している。そうした中、保険適用された新しいメタルフリー(金属を使わない)治療法を長期的に安定させる方法が解明。
大臼歯の臨床データ解析と三次元デジタルデータ分析を統合した研究手法は世界でも初めての試みで、歯を削る量を抑えた低侵襲な(歯や体への負担が少ない)治療が大きなメリットとなることに期待。

発表概要

大阪大学大学院歯学研究科の伴晋太朗招へい教員、峯 篤史准教授らの研究グループは、大阪大学歯学部附属病院で大臼歯に装着されたCAD/CAM冠の予後を調査し、冠の脱離に影響を与える要因を、世界で初めて三次元デジタルデータと臨床データの両面から明らかにしました。
CAD/CAM冠117装置の臨床経過を調査した結果、かぶせ自体が割れたのは1装置、歯根が折れたのは1症例にとどまり、4年生存率は95.5%でした。14装置のかぶせが外れましたが、再装着後はいずれも良好な経過となりました。さらに、外れた症例を詳しく分析した結果、土台の形、かぶせの厚み、接着材の種類が脱離に影響していることが分かりました。特に、かぶせの厚みについては、厚いほど脱離しやすいことが判明しました。
本研究は、実際の臨床データと三次元デジタルデータの両面から大臼歯CAD/CAM冠の脱離原因を明らかにした世界初の報告です。本研究の結果から、歯をあまり削らずに白いかぶせ治療を行える、すなわち『より低侵襲なメタルフリー治療』が実現できる可能性が示されました。本成果は、英文科学誌「Journal of Prosthodontic Research」に掲載されました。



図. 本研究の意義

研究の背景

これまで日本では、金属を用いた、強度に優れた「かぶせ」による治療が行われてきました。しかし、金属の使用は、見た目(審美性)や金属アレルギーの観点から課題があります。また近年では、金やパラジウムなどの貴金属価格が急激に高騰しており、歯科医療機関の経費増加のみならず、国民の医療費負担につながることが大きな問題となっています。
こうした状況の中、2014年より、メタルフリー治療としてCAD/CAM冠が新たに国民健康保険に導入されました。2017年には、噛む力がより強い大臼歯(奥歯)にもCAD/CAM冠が適用できるようになりました。当初、CAD/CAM冠は金属ではなくレジン(樹脂)で製作されるため、大臼歯では割れやすくなることが懸念されていましたが、実際の長期的な経過については明らかになっていませんでした。

研究の内容

大阪大学歯学部附属病院で2017年から2021年にかけて大臼歯に装着されたCAD/CAM冠117装置の臨床経過を調査した結果、かぶせ自体が割れたのは1装置、歯根が破折したのは1症例であり、4年生存率は95.5%でした。14装置で脱離が認められましたが、再装着後はいずれも良好な経過を示しました。
さらに、脱離した症例について、かぶせと土台の形状に関する三次元デジタルデータを詳細に分析した結果、土台の形、かぶせの厚み、接着材の種類が脱離に影響を与えていることが分かりました。特にかぶせの厚みは、厚い方が脱離しやすいことが明らかとなりました。このように、本研究グループは基礎的な研究からではなく、実際の臨床データと三次元デジタルデータから脱離の原因を解明することを得意としており、大臼歯のデータを用いた研究は世界で初めてです。
本研究における三次元デジタルデータ分析は、大阪大学大学院歯学研究科の今里 聡教授、山口 哲教授、臨床データ解析は大阪公立大学医学研究科新谷 歩教授との共同研究として行われました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

CAD/CAM冠が割れることを懸念してかぶせの厚みを増すと、かえって外れやすくなることが明らかになりました。このことは、歯をあまり削らずに白いかぶせ治療を行える、すなわち低侵襲なメタルフリー治療の可能性を示すものです。また、本研究の成果が広く普及することで、医療費増加への有望な対策の一つであるCAD/CAM冠治療の質の向上に大きく寄与すると考えられます。
海外では、CAD/CAMで製作されるかぶせにはセラミックスが多く用いられており、レジン(樹脂)が用いられることは多くありません。しかし、日本の保険治療で蓄積されてきたノウハウを、オールジャパン体制の「臨産官学民」でさらに発展させることで、国内のみならず世界中の人々の歯を守ることにも寄与できると考えています。

特記事項

本研究成果は、4月7日に国際科学誌「Journal of Prosthodontic Research」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:3D digital data analysis to identify factors influencing debonding of CAD-CAM resin composite molar crowns: A 4-year clinical study.
著者名:Shintaro BAN, Atsushi MINE, Satoshi YAMAGUCHI, Mariko AOKI-MATSUMOTO, Munechika TAKAISHI, Masahiro YUMITATE, Masaya ISHIDA, Bart VAN MEERBEEK, Hirofumi YATANI, Shoichi ISHIGAKI, Satoshi IMAZATO, Ayumi SHINTANI
DOI: https://doi.org/10.2186/jpr.JPR_D_25_00149
本研究は、大阪大学大学院歯学研究科 歯科生体材料学講座の今里 聡教授、歯学研究科 AI研究ユニットの山口 哲教授、大阪公立大学医学研究科 医療統計学教室の新谷 歩教授の多大な協力を得て実施されました。

参考URL

峯 篤史 准教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-.ac.jp/ja/d948132b37ca8815.html
今里 聡 教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/207fff5b37612d3b.html
山口 哲 教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/9db559375ecbda5c.html

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