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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年4月7日

指定難病「免疫性血小板減少症」の新たな治療指標を発見

補体活性化による難治性患者の分類

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
補体活性化制御薬が有効な患者を簡便に診断できる可能性が示され、難治性ITP患者に対して、より良い治療を選択する一助となることに期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
生物学農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
副腎皮質/抵抗性/副腎/治療抵抗性/免疫抑制/寿命/フローサイトメトリー/自己抗体/ステロイド/血液/血小板/自己免疫/自己免疫疾患/受容体/免疫学/免疫抑制剤/脾臓/疫学/抗体/高齢者/小児/難病
2026-4-3●生命科学・医学系医学系研究科教授保仙 直毅

発表のポイント

免疫性血小板減少症 (ITP)において、補体活性化が関与する一群を世界で初めて見出し、それを実臨床で簡便に検出できる可能性を秘めた検査法を明らかに。
ITP患者の病態は多様で、血小板が破壊される原因や機序は明らかになっていなかったが、ITP患者血小板の表面に結合した分子種を解析した結果、3種の異なった血小板破壊機序を発見。
補体活性化制御薬が有効な患者を簡便に診断できる可能性が示され、難治性ITP患者に対して、より良い治療を選択する一助となることに期待。

発表概要

大阪大学免疫学フロンティア研究センター (WPI-IFReC)・大阪大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学 の保仙直毅教授、中田継一さん(大学院生)、柏木浩和招へい教授らの研究グループは、中外製薬株式会社の大浪一生氏、松下浩明氏(IFReC、大阪大学医学系研究科兼務)らとの共同研究で、免疫性血小板減少症(ITP)において補体活性化が関与する一群を世界で初めて見出し、それを実臨床で簡便に検出できる可能性がある検査法を明らかにしました。
ITPは抗血小板自己抗体により血小板減少をきたす自己免疫疾患であり厚労省から難病に指定されている疾患です。近年、その治療には大きな進展がみられていますが、従来の治療に無効である症例が存在し、そのような難治例における血小板減少のメカニズムの解明および治療法の開発が課題でした。
今回、研究グループはITP患者40名の検体を用い、フローサイトメトリーによりITP患者の血小板表面における補体沈着のパターンが3群に分類されることを明らかにしました。特に補体活性化が進行したIII群においてはIgG自己抗体だけでなくIgM自己抗体が関与している可能性があること、血小板破壊が著明であり幼若な血小板の割合が増加していること、さらに従来の治療に対する反応が悪い例が多いことを明らかにしました。
現在、補体活性化を制御する薬剤の開発が進んでおり、難治性ITP患者に対して、より良い治療を選択する一助となることが期待されます。
本研究は、2026年 3月 31 日にBlood(オンライン版)に掲載されました。


研究の背景

ITPは血小板に結合したIgG自己抗体を介して、主に脾臓において血小板が貪食・破壊されることにより血小板が減少する自己免疫疾患です。皮下出血(紫斑)を中心とする出血や止血困難をきたし、従来、特発性血小板減少性紫斑病とよばれてきた疾患です。小児、若い女性および高齢者に好発しますが、特に成人においては慢性化し長期にわたる治療を必要とする場合が多く、難病に指定されています。
治療としてはIgG抗体の産生を抑制する副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤や脾臓摘出術が行われてきましたが、近年、血小板の産生を刺激するトロンボポエチン受容体作動薬の有効性が示され、大いに進展がみられています。しかし、これらの治療が無効である症例が一定数存在し、そのような症例における血小板減少のメカニズムの解明および治療法の開発が課題でした。

研究の内容

研究グループは、ITP患者40名の血液を採取し、血小板表面に結合した補体成分(C1q, C3d, C4d)およびIgG、 IgM抗体を、フローサイトメトリーを用いて定量しました。その結果、血小板に補体成分の沈着を認めないI群、補体古典的経路の開始因子であるC1qの沈着のみを認めるII群、および補体活性化の進行を意味するC3dおよびC4dの沈着を認めるIII群の3つのグループに分類できました。IgM抗体は主にIII群、IgG抗体はII群およびIII群において認めました。また、第一選択薬である副腎皮質ステロイドが無効である症例がI群に比べ特にIII群に多く認められました。
ITPにおいては血小板破壊の亢進に伴い血小板寿命が短縮し、若い血小板の割合(幼若血小板比率)が増加します。幼若血小板比率は自動血球分析装置にて簡便かつ迅速に測定することができます。血小板における補体沈着は幼若血小板比率の増加と相関を認めたことから、特にIII群における血小板減少に補体活性化に伴う血小板破壊の亢進が関与しており、従来の治療に対する抵抗性と関連している可能性が示されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究によりITP患者の中で補体活性化が強く関与する一群が存在し、治療抵抗性と関連している可能性があること、また幼若血小板比率測定という非常に簡便な方法でそのような患者を選別できる可能性があることが示されました。近年、難治性ITPに対する新薬の開発が進んでおり、補体活性化阻害薬もその一つです。今回の研究は、難治性ITP患者に対して、より良い治療を選択する一助となることが期待されます。

論文情報

掲載紙: Blood 2026年 3月31日オンライン版
タイトル: “Complement activation profile in adult primary immune thrombocytopenia”
著者名: Keiichi Nakata*, Ichio Onami*, Hisashi Kato, Satoru Kosugi, Yoshiaki Tomiyama, Hiroaki Matsushita, Atsuo Kurata, Kazuki Sato, Kasumi Takahashi, Fumie Sawamura, Ken Ohmine, Shuichi Ohtomo, Naoki Hosen, Hirokazu Kashiwagi‡ (*: equally contributed; ‡: correspondence)
DOI:https://doi.org/10.1182/blood.2025032255
本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業(22K08476)、中外製薬の支援を受けて行われました。