細胞内カルシウム濃度の変化を検出する新たなバイオセンサーを開発
血中生理活性物質の測定や創薬開発の迅速化に貢献
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
スループット/センサータンパク質/ハイスループットスクリーニング/加水分解/診断薬/水分解/持続可能/持続可能な開発/センサー/バイオセンサー/ハイスループット/カルシウムイオン/Ca2+/細胞内カルシウムイオン/細胞膜/血清/細胞内シグナル/ホルモン/筋肉/神経伝達物質/GPCR/Gタンパク質/Gタンパク質共役型受容体/カルシウム/スクリーニング/リガンド/ルシフェラーゼ/細胞内カルシウム/受容体/生理活性/生理活性物質/創薬/膜タンパク質
2026年4月 2日 11:00
研究者情報
〇薬学研究科分子細胞生化学分野 教授 井上飛鳥研究室ウェブサイト
発表のポイント
細胞内カルシウムイオン濃度の上昇に応じて発光量が減少するバイオセンサー(CalLuc-2.1)を開発しました。CalLuc-2.1を用いることで、従来の手法と比較して、特別な計測機器を用いることなく、CalLuc-2.1とGPCR注1を発現する細胞にリガンドを添加するだけで簡便に細胞内カルシウムイオンの上昇を検出できました。
GPCRの結合因子である生理活性物質(リガンド注2)の血清濃度の測定や、ハイスループットスクリーニング注3に応用可能であることを実証しました。
発表概要
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、ホルモンや神経伝達物質などの刺激を受け取り、細胞内へ情報を伝える膜タンパク質です。GPCRの情報伝達の主要な経路として、三量体Gタンパク質注4を介した細胞内カルシウムイオン(Ca2+)の濃度上昇があり、神経伝達物質の分泌や筋肉の収縮など多様な生命現象を制御します。しかし、この細胞内Ca2+濃度の変化は数秒から数十秒の短時間で起こるため、細胞内Ca2+応答の計測には特殊な測定機器が必要でした。東北大学大学院薬学研究科博士課程 土居耕介 大学院生(研究当時、兼 ヤマサ醤油株式会社研究員)と、東北大学大学院薬学研究科 井上飛鳥教授(兼 京都大学大学院薬学研究科 教授)らの研究グループは、ホタル由来の発光タンパク質ルシフェラーゼ注5を改変した新しいバイオセンサー注6(CalLuc-2.1と命名)を開発しました。このバイオセンサーは、短時間で起こる細胞内Ca2+濃度の変化を数十分間持続する発光シグナルへと変換する性質を有しており、汎用の測定機器に適用可能な有用なツールであることがわかりました。
本研究成果は、2026年3月29日に学術誌Communications Biologyに掲載されました。

図1. CalLuc-2.1の模式図
用語解説
注1. Gタンパク質共役型受容体(GPCR)細胞膜表面に存在する受容体タンパク質であり、細胞膜を 7 回貫通する特徴的な構造を持つ。細胞外に存在する特定のリガンドと結合することで細胞内に情報伝達を導く。
注2. リガンド
GPCRに特異的に結合する分子であり、GPCRを活性化して細胞へシグナルを伝達する。ホルモン、神経伝達物質などがリガンドとして機能する。
注3. ハイスループットスクリーニング
多数の化合物や資料を短時間で一括して評価する実験手法。創薬研究などで有望な候補物質を探索するために用いられる。
注4. 三量体Gタンパク質
Gα、Gβ、Gγからなるヘテロ三量体 Gタンパク質であり、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の下流で働くシグナル伝達分子。GTPとの結合およびその加水分解を通じて、細胞内シグナルのオン・オフを制御する。
注5. バイオセンサー
タンパク質、核酸などの生体成分(バイオ)を改変して特定の物質を検知するツール
注6. ルシフェラーゼ
ホタルなどが光る際に利用している酵素で、基質(D-ルシフェリン)と反応することで発光する性質を持つタンパク質。
論文情報
タイトル:A luminescent calcium biosensor enabling endpoint measurement of GPCR-mediated calcium signaling(日本語訳:GPCR下流のカルシウム応答をエンドポイント計測可能な発光カルシウムバイオセンサーの開発)
著者:Kosuke Doi1,2, Ryoji Kise2,3, Kota Shimizume2,3, Masataka Yanagawa2,3,4, Asuka Inoue2,3*
1. ヤマサ醤油株式会社 診断薬事業部 診断薬基礎開発室
2. 東北大学大学院 薬学研究科
3. 京都大学大学院 薬学研究科
4. 理化学研究所 開拓研究本部 細胞情報研究室
*責任著者:東北大学 大学院薬学研究科 教授(京都大学 大学院薬学研究科 教授兼任)井上飛鳥
掲載誌:Communications Biology
DOI:10.1038/s42003-026-09920-4
詳細(プレスリリース本文)
問い合わせ先
(研究に関すること)東北大学大学院薬学研究科
教授 井上 飛鳥(いのうえ あすか)
TEL:022-795-6861
Email:iaska*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科総務係
TEL:022-795-6801
Email:ph-som*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)


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