ナノ空間分⼦を紡いでつくる、多孔性ナノ⽷の開発
〜多孔性と柔軟性をあわせ持つ新材料〜
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 多孔性配位高分子(MOF)と呼ばれる多孔性材料は、精密に設計された細孔を有し、ガス貯蔵や分離材料としての応用が期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
研究 2026年4月1日
概要
京都大学アイセムス(高等研究院 物質ー細胞統合システム拠点:WPI-iCeMS)の宮田彩名 工学研究科博士後期課程学生と古川修平 教授らの研究グループは、ファンデルワールス力という弱い力を利用して分子を一次元的につなぎ合わせることで、新しい多孔性材料の開発に成功しました。この技術を用いることにより、従来は脆く応用範囲が限られていた多孔性材料において、合成過程の加工性が向上し、柔軟な多孔性材料の設計が可能となりました。2025年のノーベル賞の対象となった多孔性配位高分子(MOF)と呼ばれる多孔性材料は、精密に設計された細孔を有し、ガス貯蔵や分離材料としての応用が期待されています。一方で、MOFは分子同士が強い結合によって三次元的な網目構造を形成する結晶性材料であり、硬いが脆いという特性を有しています。そのため、実用化に向けては機械的柔軟性を得ることが重要な課題となっていました。
本研究では、分子の「接続性」に着目し、ナノ空間を持つ分子を弱い相互作用を用いて一次元的に並べることで、多孔性を有するナノ糸の開発に成功しました。具体的には、金属錯体多面体(MOP)と呼ばれるナノ空間を持つ分子を用い、自己集合化により分子を整列させることで、幅約15ナノメートルの多孔性ナノ糸を合成しました。MOP分子を三次元的に接続した結晶性材料は剛直で脆いのに対し、一次元的に接続した多孔性ナノ糸からなるエアロゲル材料は、大きな圧縮に対しても柔軟に変形できることが明らかになりました。また、分子が強い化学結合で接続した材料では、一度結合が切れると元の構造に戻ることが困難です。一方、本研究の多孔性ナノ糸は分子同士が引き合う弱い力(ファンデルワールス力)によって形成されているため、振とうなどの非常に小さなエネルギーでもMOP分子の会合・解離状態を可逆的に制御することが可能です。これにより、多孔性ナノ糸が絡み合うことで形成されたエアロゲル材料は、鋳型に合わせて自在に成形できる高い加工性を示しました。
本研究で示された材料設計の考え方は、MOP分子だけでなく、さまざまな多面体型分子にも適用可能です。そのため、ガス分離やガス貯蔵など、成形体としての多孔性材料が必要とされる産業分野において、その実用化を後押しする新しい材料設計指針につながることが期待されます。
本成果は 2026 年 3 ⽉ 19 ⽇(⽇本時間)に、米国出版社 American Chemical Society の雑誌である「Journal of the American Chemical Society」オンライン版で公開されました。
詳しい研究成果について
ナノ空間分⼦を紡いでつくる、多孔性ナノ⽷の開発書誌情報
論文タイトル:“One-dimensional van der Waals Porous Fibrils Assembled from Metal-organic Polyhedra”著者:Ayana Miyata, Shun Tokuda, Mako Kuzumoto, Guan-Sian Lee, Masataka Yamashita,
Taichi Nishiguchi, Masaki Negoro, Brian R. Pauw, Yi-Tsu Chan, Kazuyoshi Kanamori, Kenji
Urayama, Kunihisa Sugimoto, Shuhei Furukawa
Journal of the American Chemical Society | DOI: 10.1021/jacs.5c21654
京都大学 研究