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東京科学大学 研究Discovery Saga
2026年4月1日

極端な暑さ・寒さで小児けいれんの緊急入院リスクが上昇

全国データ解析で、高温で1.17倍・低温で1.22倍に増加

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域環境学数物系科学生物学工学医歯薬学
【Sagaキーワード】
情報学/社会情動的スキル/適応策/気候変動/データ解析/副腎皮質/電解質/ライフコース/副腎/ウイルス感染症/合併症/スキル/医療政策/思春期/新型コロナウイルス/歯学/臨床疫学/喘息/アナフィラキシー/ステロイド/血液/DPC/ウイルス/コミュニケーション/疫学/疫学研究/感染症/公衆衛生/社会疫学/小児/新型コロナウイルス感染症/睡眠/糖尿病/脳卒中

2026年3月31日 公開

ポイント

極端な暑さと寒さのいずれもが、小児のけいれんによる緊急入院リスクを高めることを全国規模で初めて示しました。
その影響は極端な気温が観測されてから0~1日以内にピークに達することが明らかになりました。
全国のDPC入院データ約11万6千件(2011~2019年)と日次気温データを統合解析。日平均気温の極端な高温で1.17倍、極端な低温で1.22倍入院リスクが増加しました。
子どもが極端な気温に対して特に脆弱である可能性を示しました。気候変動が進む中、暑さ・寒さへの曝露対策や医療体制の備えの重要性を示唆する成果です。

概要


東京科学大学(Science Tokyo) 医歯学総合研究科 公衆衛生学分野の片桐碧海大学院生、藤原武男教授、および医療政策情報学分野の伏見清秀教授らの研究チームは、極度の暑さと寒さのいずれもが、小児のけいれんによる緊急入院のリスクを高めることを明らかにしました。

さらに本研究では、その影響が1日以内の急性期にピークに達することが分かりました。本研究により、子どもが極度の気温に対して脆弱であることが示され、曝露を最小限に抑えるための適応策や、極端な気温が予測・観測された際の医療体制の備えの重要性が強調されました。

この研究成果は、国際科学誌「Pediatric Research」に、2026年3月18日(現地時間)に発表されました。

背景

これまでに、気温と小児けいれんの関連を検討した多くの研究は、一部の都市に限定されていました。さらに、ラグ効果[用語1]を考慮した日ごとの気温データと全国的な医療データを用いた分析は行われていませんでした。
日本は年間を通じて多様な気象条件を有しており、さらに南北に細長い地理的特性を持つことから、このような研究にとってユニークな環境を提供すると考えられます。
本研究では、全国規模の日次気温データと入院患者データを用いて、気温と小児けいれんによる緊急入院との関連を調査しました。

研究成果

本研究では、
DPCデータベース[用語2]を用いて、2011年1月1日から2019年12月31日までに発生した116,353件の小児けいれんによる緊急入院を解析しました。
その結果、日平均気温の99パーセンタイルという極度の暑さでは、小児けいれんによる緊急入院の発生が1.17倍(95%信頼区間:1.05-1.30)であることが分かりました(図1)。


図1. 12日間のラグ効果を考慮した
日平均気温パーセンタイル[用語3]と小児けいれんによる緊急入院のリスク

また、日平均気温の1パーセンタイルに相当する極度の寒さでは、小児けいれんによる緊急入院の発生が1.22倍(95%信頼区間:1.06-1.40)であることが分かりました。
さらに、これらの緊急入院は、極度の気温が発生してから0~1日の急性期に多く発生していることが分かりました(図2)。


図2. 気温が観測された日からと小児けいれんによる緊急入院が起きるまでの日数ごとのリスク

社会的インパクト

本研究により、子どもが極度の気温に対して脆弱であることが明らかになりました。また、曝露を最小化するための適応策や、極度の気温が予測・観測された際の医療体制の備えが重要であることが強調されました。

今後の展開

高温と小児のけいれんを結びつける可能性のあるメカニズムとしては、脱水や電解質バランスの乱れが考えられます。また、低温と小児のけいれんを結びつける可能性のあるメカニズムとしては、季節性のウイルス感染症が考えられます。

今後の研究では、気温と小児のけいれんの関連をより深く理解するため、水分摂取や感染症の状況についても検討することが求められます。

付記

本研究は、日本学術振興会(JSPS、JP23K19768、20H00040)国立研究開発法人科学技術振興機構(JST、JPMJSA2402)と独立行政法人国際協力機構(JICA)の連携事業である地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の支援を受けて実施されました。

用語説明

[用語1]
ラグ効果:気温が健康に対して与える影響は、気温に曝露した時点からしばらく続くことが知られており、その遷延性を「ラグ効果」と呼ぶ。
[用語2]
DPC(Diagnosis Procedure Combination)データベース:全国の対象病院から収集された入院患者に関する大規模データベースで、退院時情報や診療報酬に関するデータ等が記録されている1
1康永 秀生, 堀口 裕正, DPCデータベースを用いた臨床疫学研究, 医療と社会, 2010, 20巻, 1 号, p. 87-96
[用語3]
日平均気温パーセンタイル:各地点の気温が過去の長期的なデータの中でどの位置にあるかを示す統計指標。

論文情報

掲載誌:
Pediatric Research
タイトル:
Ambient temperature and pediatric seizure hospitalization: A time-stratified analysis in a national dataset
著者:
片桐碧海、西村久明、那波伸敏、伏見清秀、藤原武男
DOI:
10.1038/s41390-026-04875-y

研究者プロフィール


片桐 碧海 Aomi Katagiri
東京科学大学 医歯学総合研究科 公衆衛生学分野 大学院生
研究分野:社会疫学、思春期の成長発達


藤原 武男 Takeo Fujiwara
東京科学大学 医歯学総合研究科 公衆衛生学分野 教授
研究分野:公衆衛生学、疫学(社会疫学、ライフコース疫学)

関連リンク

プレスリリース 極端な暑さ・寒さで小児けいれんの緊急入院リスクが上昇—全国データ解析で、高温で1.17倍・低温で1.22倍に増加—(PDF)
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