[Top page] [日刊 研究最前線 知尋] [Discovery Saga総合案内] [大学別アーカイブス] [Discovery Saga会員のご案内] [産学連携のご案内] [会社概要] [お問い合わせ]

千葉大学 研究Discovery Saga
2026年4月1日

細胞を使うことなく受容体膜タンパク質の人工進化に成功

-阻害剤感受性を10倍向上させたGタンパク質共役型受容体「アデノシン2A受容体」の新規変異体を同定し、細胞種特異的なシグナル制御を実現-

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
約1012種類規模のGPCRライブラリーから目的の機能を持つ変異体をスクリーニング可能とするものであり、創薬やケモジェネティクス分野における新規GPCR変異体探索の基盤技術となることが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域生物学工学総合生物農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
最適化/産学連携/タンパク質合成/シミュレーション/タンパク質合成系/無細胞タンパク質合成系/変異体/哺乳動物/アデノシン/シグナル伝達系/分子機構/次世代シーケンサー/GPCR/Gタンパク質/Gタンパク質共役型受容体/in vitro/スクリーニング/リガンド/共培養/受容体/阻害剤/創薬/膜タンパク質

2026年03月31日
研究・産学連携

研究のポイント

○従来は困難だったヒト由来Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の実験室内人工進化を無細胞タンパク質合成系とナノディスク技術の組み合わせで実現

○新規「アデノシンA2A受容体(A2AR)」変異体を同定。哺乳動物細胞内で内因性リガンドであるアデノシンへの応答性を保持しながら、阻害剤感受性を10倍以上に向上

〇新規変異体を用いることで、A2ARシグナルを細胞種選択的に制御できることを実証

〇細胞を用いることなく、GPCR変異体ライブラリーサイズを約1兆(10¹²)規模に拡大可能に
 

発表概要

 東京科学大学(Science Tokyo)生命理工学院 生命理工学系の深澤元喜修士課程学生(研究当時)、北尾彰朗教授、同大学 地球生命研究所の松浦友亮教授、福永圭佑特任助教(現:宮崎大学研究・産学地域連携推進機構 テニュアトラック推進室 准教授)、名古屋大学大学院工学研究科 松岡佑真博士後期課程学生、清中茂樹教授、千葉大学 大学院理学研究院 村田武士教授らの研究チームは、細胞を用いずに膜タンパク質を実験室内で人工進化させる技術を開発し、リガンド結合能が10倍程度向上したヒト由来アデノシン「A2A受容体(A2AR)」の変異体を同定しました。この変異体を用いることで細胞種特異的なシグナル伝達系の制御が可能です。
 細胞外のシグナルを細胞内に伝える役割を担う「Gタンパク質共役型受容体(GPCR: G Protein-Coupled Receptor)(用語1)」の機能を改変した変異体を、合理的に設計することは、膜タンパク質の柔軟性・不溶化しやすい特性から難しく、多くの試行錯誤を要します。本研究では、無細胞タンパク質合成系(用語2)とナノディスク技術を組み合わせ、GPCRの1つであるA2ARが機能発現するよう条件を最適化しました。さらに、実験室進化と次世代シーケンサー(用語3)解析を用いて、変異体集団から特定の阻害剤に対する結合能が向上した変異体を同定しました。変異体は、哺乳動物細胞においてシグナル阻害活性が10倍程度向上しており、この分子機構を原子レベルのシミュレーションで明らかにしました。さらに獲得された変異体の特性を利用し、細胞種特異的にGPCRシグナル伝達を抑制可能であることも示しました。
 本研究で開発した手法は、約1012種類規模のGPCRライブラリーから目的の機能を持つ変異体をスクリーニング可能とするものであり、創薬やケモジェネティクス(用語4)分野における新規GPCR変異体探索の基盤技術となることが期待されます。
 本成果は、3月6日付(現地時間)の「Journal of the American Chemical Society」誌に掲載されました。

論文情報

掲載誌:Journal of the American Chemical Society
論文タイトル:In vitroevolution of the adenosine A2A receptor based on an antagonist binding using a ribosome display
著者:Genki Fukasawa, Yuma Matsuoka, Duy Phuoc Tran, Haruka Nishigaki, Keisuke Fukunaga, Takayoshi Watanabe, Tomohiro Doura, Naohiro Terasaka, Ako Kagawa, Takeshi Murata, Akio Kitao,*Shigeki Kiyonaka, Tomoaki Matsuura
DOI:10.1021/jacs.6c02372
 




図2:取得した変異体は、細胞種特異的シグナル阻害を可能とする。2つの異なる細胞種を共培養し、アデノシンを加えた場合は、両細胞とも活性化されたが、アデノシンと阻害剤を加えた場合は、変異体発現細胞でのみシグナル阻害が観測された。



プレスリリース本文はこちら