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大阪公立大学 研究Discovery Saga
2026年3月28日

プラスチック由来物質の悪影響から精子を守る

~乳酸菌由来素材が精子機能障害を軽減する可能性~

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
有害な化学物質が生殖機能に及ぼす影響を食品由来成分で予防できる可能性を示す
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
環境学生物学工学総合生物農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
化学物質/生殖/樹脂/持続可能/持続可能な開発/エポキシ樹脂/プラスチック/熱処理/免疫調節/機能性/食品機能/食品成分/プロバイオティクス/フェノール/精巣/男性不妊/ホルモン/生理機能/腸内環境/ビスフェノールA/ラット/抗酸化/抗酸化作用/精子/内分泌/ストレス/酸化ストレス/脂質

2026年3月26日
医学研究科
プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院医学研究科 南山 幸子客員教授、竹村 茂一特任教授、石沢 武彰教授、中川 加奈子学外研究員、同志社大学 市川 寛教授、京都府立医科大学 吉川 敏一名誉教授 (大阪公立大学大学院医学研究科 特任教授兼任)

発表概要

本研究グループは、プラスチック原料などに用いられるビスフェノールA(Bisphenol A: BPA)※1が引き起こす精子機能障害に対し、乳酸菌由来素材『FK-23※2』が与える影響についてラットを用いて検証しました。その結果、FK-23はBPA曝露によって低下した精子の運動性を改善し、生殖機能に悪影響を及ぼす脂質過酸化の増加を抑制することが明らかになりました。
本研究成果は、2026年2月18日に国際学術誌「Journal of Functional Foods」 にオンライン掲載されました。



図:乳酸菌由来成分 FK-23 による BPA 誘導精子毒性の抑制機構

発表のポイント

    BPA曝露ラットでは、低下した精子の機能がFK‑23で改善されることを確認。
    FK-23は、BPA曝露によって誘導される酸化ストレスおよび脂質過酸化を抑制することを示した。
    有害な化学物質が生殖機能に及ぼす影響を食品由来成分で予防できる可能性を示した。

研究者コメント


近年、環境化学物質が生殖機能に与える影響が世界的に懸念されています。本研究は、乳酸菌由来の機能性成分が酸化ストレスを介した精子機能障害を軽減する可能性を示したものです。今後は腸内環境との関連を含め、食品成分による新しい予防戦略の可能性を検討していきたいと考えています。

研究の背景

近年、プラスチック原料などに用いられる化学物質ビスフェノールA(BPA)が、内分泌かく乱作用を介して生殖機能に影響を及ぼす可能性が指摘されています。特に、酸化ストレスの亢進による精子機能低下が男性不妊の要因の一つとして注目されています。
乳酸菌やその菌体成分は、腸内環境を介して免疫調節や抗酸化作用など多様な生理機能を示すことが知られています。近年では、生菌ではなく加熱処理菌体などを利用するパラプロバイオティクスの研究が進んでいます。
そこで、本研究では、乳酸菌Enterococcus faecalis 由来のパラプロバイオティクス素材FK-23が、BPAによる精子毒性に対して保護的に作用するかを検証しました。

研究の内容

本研究では、BPAによる精子機能への影響と、それに対する乳酸菌加熱死菌体成分FK-23の防御効果を検討しました。ラットを用いたBPA曝露モデルを作製し、精子機能および精巣組織における酸化ストレスの指標を評価しました。その結果、BPA曝露群では、精子運動性の有意な低下が認められるとともに、精巣組織において脂質過酸化マーカー(4-HNE、HELなど)の増加が確認され、BPA曝露が精巣における酸化ストレスを亢進させ、精子機能低下を引き起こすことが示唆されました。一方、乳酸菌成分FK-23を摂取した群では、BPA曝露によって低下していた精子運動性が改善し、精巣組織における脂質過酸化マーカーの発現も低下しました。これらの結果から、FK-23はBPAによって誘導される酸化ストレスを抑制することにより、精子機能の低下を防御する可能性が示されました。

期待される効果・今後の展開

本研究成果により、乳酸菌由来成分が環境化学物質による生殖毒性に対して保護的に作用する可能性が示されました。今後は、腸内環境を介した作用機序の解明やヒトでの検証を進めることで、食品成分を活用した生殖健康維持への応用が期待されます。また、環境化学物質曝露に対する新しい予防戦略として食品機能研究の発展にも寄与することが期待されます。

資金情報等

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費(21K05426)などの研究助成の支援を受けて実施されました。

用語解説

※1 ビスフェノールA(Bisphenol A: BPA):ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂の原料として使用される化学物質。体内のホルモンの働きを乱し、正常な生理機能や発達、生殖機能に影響を及ぼす作用を有する可能性が指摘されている。
※2 FK-23:乳酸菌 Enterococcus faecalis を加熱処理・濃縮して得られる菌体成分であり、生菌で はなく菌体そのものが機能を示すパラプロバイオティクス素材。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Journal of Functional Foods
【論文名】 Preventive effect of paraprobiotic Enterococcus faecalis FK-23 on bisphenol A-induced sperm toxicity
【著者】 Yukiko Minamiyama, Shigekazu Takemura, Kanako Nakagawa, Hiroshi Ichikawa, Takeaki Ishizawa, Toshikazu Yoshikawa
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.jff.2026.107205

問い合わせ先

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科
客員教授 南山 幸子(みなみやま ゆきこ)
TEL:06-6645-3841
E-mail:yukiko[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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