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東京科学大学 研究Discovery Saga
2026年3月26日

必要な免疫を残し、有害な免疫だけを狙い撃つ新治療法

動物実験で有効性を実証

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
副作用の少ない自己免疫疾患の新規治療法や臓器移植での新規拒絶反応抑制法の開発につながるものと期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域化学医歯薬学
【Sagaキーワード】
情報学/移植医療/分子構造/新規治療法/全身性エリテマトーデス/免疫不全/動物モデル/病理/病理学/免疫制御/免疫抑制/リンパ球/歯学/B細胞/マウス/モデル動物/拒絶反応/自己免疫/自己免疫疾患/副作用/免疫応答/免疫学/免疫抑制剤/ウイルス/疫学/抗体/細菌/臓器移植/糖尿病/動物実験

2026年3月25日 公開

ポイント

自己免疫や移植拒絶反応など有害な免疫応答のみを抑制する治療法を開発し、動物モデルでその有効性を実証しました。この成果は3月24日(現地時間)に、非営利出版団体PLoSの旗艦誌として定評のある科学誌「PLoS Biology 」誌に掲載されました。副作用の少ない自己免疫疾患の新規治療法や臓器移植での新規拒絶反応抑制法の開発につながるものと期待されます。

概要

人の体は外敵から身を守る「免疫システム」を備えていますが、自己免疫といって免疫が自分自身の体を攻撃したり、移植した臓器を異物とみなして攻撃したりすることがあります。こうした有害な免疫応答を抑制する薬剤が開発されていますが、ウイルスや細菌と戦うための必要な免疫の働きも同時に弱めてしまうという課題がありました。
日本大学歯学部の龍旺研究員、浅野正岳教授(故人)、鍔田武志客員教授(東京科学大学名誉教授)らの研究グループは東京科学大学、東京理科大学、藤田医科大学、慶應義塾大学、理化学研究所との共同研究により、自己免疫や移植拒絶反応など有害な免疫応答だけを抑制する新しい治療法を開発し、動物モデルでその有用性を実証しました。
今回の新しい免疫制御のスキームは、副作用の少ない治療法や、移植医療の安全性向上等に役立つものと期待されており、研究チームではさらに研究を進める方針です。


図. B細胞の表面分子CD22に結合し、特殊な活性を発揮する抗体を樹立した。この抗体をマウスに投与したところ免疫反応を抑制するB細胞(制御性B細胞)を増幅し、自己免疫によって発症する糖尿病や移植した皮膚への拒絶反応を顕著に抑制した。一方、異物への免疫応答は損なわれなかったため、自己免疫や移植臓器の拒絶反応のみを抑制することが示唆された。

研究成果

B細胞は抗体産生に関わるリンパ球ですが、一部のB細胞は免疫応答を抑制する物質を産生することで免疫応答を抑制することが知られており、このようなB細胞は制御性B細胞と呼ばれています。さまざまな自己免疫疾患で制御性B細胞の異常が示され、また、移植の際の臓器の定着に制御性B細胞が関わることが示されています。これまで、制御性B細胞を増幅する刺激がいくつか知られていましたが、いずれも炎症を増悪させるもので、治療に使用することが困難でした。今回、B細胞の表面に存在するCD22と呼ばれる分子への抗体の中で特殊な活性を持った抗体が制御性B細胞を増幅することを明らかにしました。さらに、この抗体を自己免疫機序によって発症する糖尿病(1型糖尿病)のモデル動物に投与すると糖尿病の発症が抑制され、皮膚移植の動物モデルに投与すると、移植に用いられている免疫抑制剤シクロポリンと同程度に移植片拒絶を抑制することが明らかになりました。一方、異物を投与した場合の免疫応答は抑制しないことから、この治療法が自己免疫や移植免疫といった有害な免疫応答のみを抑制することが明らかになりました。

研究助成

日本学術振興会科学研究費助成事業 26293062、18H02610、21K19373、21H02679

論文情報

掲載誌:
PLoS Biology
タイトル:
Disrupting CD22-cis-ligand interactions ameliorates type 1 diabetes and graft rejection by expanding regulatory B cells
著者:
Wang Long, Ayaka Endo, Hashadi Nadeesha Walakulu Gamage, Tianyi Yang, Toru Suzuki, Takeshi Nitta, Hiromu Takematsu, Kenya Honda, Masatake Asano, Takeshi Tsubata
DOI:
10.1371/journal.pbio.3003681

発表者・研究者等情報

鍔田武志 日本大学 歯学部 病理学講座 客員教授、東京科学大学 名誉教授
龍旺(筆頭著者) 日本大学 歯学部 病理学講座 研究員(2025年6月まで)
遠藤彩香 東京科学大学 医歯学総合研究科 医歯理工保健学専攻 免疫学分野 大学院生(当時)
Hashadi Nadeesha Walakulu Gamage 東京科学大学 医歯学総合研究科 生命理工医療科学専攻 分子構造情報学分野 大学院生
楊天儀 東京科学大学 医歯学総合研究科 医歯理工保健学専攻 免疫学分野 大学院生(当時)
鈴木亨 東京科学大学 総合研究院 難治疾患研究所、バイオサイエンスセンター 助教
新田剛 東京理科大学 生命医科学研究所 教授
竹松弘 藤田医科大学 医療科学部 医療検査学科 教授
本田賢也 慶應義塾大学 医学部 教授、国立研究開発法人理化学研究所 生命医科学研究センター チームディレクター
浅野正岳(故人) 日本大学 歯学部 病理学講座 教授

関連リンク

プレスリリース 必要な免疫を残し、有害な免疫だけを狙い撃つ新治療法—動物実験で有効性を実証—(PDF)
自己免疫疾患全身性エリテマトーデス(SLE)の発症抑制の仕組みの解明 | 旧・東京医科歯科大学
抗体産生不全を呈する免疫不全症での内在性機能回復の仕組みの発見 | 旧・東京医科歯科大学
標的分子への抗体産生を増強する多糖をベースとした担体の開発 | 旧・東京医科歯科大学
難治疾患研究所免疫疾患分野、鍔田武志教授がオイゲン・ウント・イルゼ・ザイボルト賞を受賞しました | 旧・東京医科歯科大学

鈴木 亨 Toru Suzuki | Science Tokyo 研究情報データベース(医歯学系)
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東京科学大学 名誉教授
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