\⾃分の健康データは⾃分で守り、活かす!/ NFTを活⽤した「⾃⼰主権型」データ流通基盤を開発
医療・ヘルスケア分野での実証により、社会実装に向けた実現可能性と改善指針を明確化
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 特定の企業や組織に依存せず、個人が自らのデータを主体的に管理・制御する自律分散型の「自己主権型データ流通」の仕組みへの期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
2026-3-18●工学系国際医工情報センター寄附研究部門教授山田 憲嗣発表のポイント
NFT(非代替性トークン)とブロックチェーン技術を活用し、個人が自らのデータを管理・制御する「自己主権型」データ流通基盤を開発し、医療・ヘルスケア分野向けのPHR(Personal Health Record)アプリを実装。一般利用者・医療従事者・研究者の3つの異なる視点から実証評価を行い、自己主権型システムの実用性・受容性・有用性を客観的・多面的に評価。
総じて肯定的な評価が得られ、自己主権型データ流通システムの社会実装に向けた実現可能性を示すとともに、今後の社会浸透に向けた改善指針を明確化。
発表概要
大阪大学国際医工情報センターの四條能伸特任研究員、宮西七海特任研究員(常勤)、山田憲嗣寄附研究部門教授らの研究グループは、個人の健康情報を自らが安全に管理・流通できる「自己主権型」データ流通基盤を研究開発し、これを用いたPHRアプリの実証評価を行いました。近年、個人が自らのデータを主体的に管理する「自己主権型」のデータ管理が注目を集めています。しかし、その独特の概念ゆえに、機能面での実証は進む一方で、実際の利用者にとっての実用性や受容性といったユーザビリティの観点での客観的な評価は十分にされてきませんでした。
今回、研究グループは一般利用者、医療従事者、研究者という3つのステークホルダーを対象に、有用性(価値があるか)、実用性(使いやすさ)、受容性(受け入れられやすさ)を多面的に評価し、日常の健康管理や救急・災害時の活用において本システムの有用性や受容性が総じて高いことを確認しました。一方で、実用面でのデータの読み込み時間といった体感性能や運用ルールの整備といった具体的な課題も浮き彫りになりました。本成果は、個人のデータ主権を尊重した新たなデータ流通システムの社会浸透に向けた重要な一歩となります。
なお、本システムの基盤技術に関する論文は、国際会議「IEEE International Conference on Consumer Electronics (ICCE) 2026」の予稿集に掲載されました。

図1. 実装したアプリケーションのデータ登録画⾯とデータ提供画⾯
研究の背景
Society 5.0やデータ駆動型社会の進展に伴い、医療・ヘルスケア分野においても多様なデータの利活用が求められています。一方で、従来の中央集権型クラウドによるデータ管理では、機密情報の漏洩や単一故障点(システムの一部が停止すると全体が停止してしまう箇所)のリスク、さらにはデータ所有者本人の意図しない形でのデータ利用といった課題が顕在化しています。これに対し、特定の企業や組織に依存せず、個人が自らのデータを主体的に管理・制御する自律分散型の「自己主権型データ流通」の仕組みへの期待が高まっています。しかし、自己主権型システムは「個人がすべての権限を管理・制御する」という独特の概念に基づいており、暗号鍵やアクセス権の管理などを利用者が担うことになります。そのため、システムとして機能・性能的に成立していても、実際のユースケースにおいて実用性・受容性・有用性といった観点で課題があり、これまでステークホルダーを交えた客観的な評価はなされてきませんでした。
研究の内容
Society 5.0やデータ駆動型社会の進展に伴い、医療・ヘルスケア分野においても多様なデータの利活用が求められています。一方で、従来の中央集権型クラウドによるデータ管理では、機密情報の漏洩や単一故障点(システムの一部が停止すると全体が停止してしまう箇所)のリスク、さらにはデータ所有者本人の意図しない形でのデータ利用といった課題が顕在化しています。これに対し、特定の企業や組織に依存せず、個人が自らのデータを主体的に管理・制御する自律分散型の「自己主権型データ流通」の仕組みへの期待が高まっています。しかし、自己主権型システムは「個人がすべての権限を管理・制御する」という独特の概念に基づいており、暗号鍵やアクセス権の管理などを利用者が担うことになります。そのため、システムとして機能・性能的に成立していても、実際のユースケースにおいて実用性・受容性・有用性といった観点で課題があり、これまでステークホルダーを交えた客観的な評価はなされてきませんでした。
表1. 実証評価の概要と主な結果

一般利用者: 日常の健康管理や受診時の利便性に加え、自己コントロール感やプライバシーの安心感など、有用性と受容性において非常に高い評価(肯定率90%以上)を得ました。
医療従事者: 本人の同意に基づき必要なデータを閲覧できる仕組みは、救急・災害時等における迅速な情報把握や医療安全への寄与につながると強く支持されました。
研究者: 同意に基づくデータ収集の手間削減や、マルチソースからの大規模研究の実現性において高い有用性が確認されました。
日常の健康管理や救急・災害時の活用において本システムの有用性や受容性が総じて高いことを確認でき、一方で、実用性の面では、データの読み込み時間といった体感性能に対する課題が顕在化しました。
これに対し、より処理の高速なブロックチェーン基盤へ変更する追加実験を行ったところ、体感評価の改善傾向が確認され、今後の性能向上の道筋を得ることができました。さらに、今後の社会浸透に向けた改善指針として、緊急時手順の増加や運用ルールの整備といった、懸念・課題も浮き彫りになりました。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
日常の健康管理や救急・災害時の活用において本システムの有用性や受容性が総じて高いことを確認でき、一方で、実用性の面では、データの読み込み時間といった体感性能に対する課題が顕在化しました。これに対し、より処理の高速なブロックチェーン基盤へ変更する追加実験を行ったところ、体感評価の改善傾向が確認され、今後の性能向上の道筋を得ることができました。さらに、今後の社会浸透に向けた改善指針として、緊急時手順の増加や運用ルールの整備といった、懸念・課題も浮き彫りになりました。
特記事項
本アプリケーションの基盤となっている非集中型ネットワーク内ストレージフレームワークの概要に関する論文は、国際会議「IEEE International Conference on Consumer Electronics (ICCE) 2026」の予稿集に掲載されました。なお、本研究成果は、NICTの委託研究(No. 23801)により得られたものです。
参考URL
山田憲嗣寄附研究部門教授 研究者総覧https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/d50e27db60be2fd5.html
大阪大学 研究