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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年3月12日

\変異に左右されにくい新しい抗ウイルス戦略/ 宿主因子GBF1を標的とする核酸医薬が インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの増殖を抑制

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
ウイルスではなく宿主を標的とした核酸医薬による広域抗ウイルス薬の開発に期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域数物系科学化学生物学工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
アルゴリズム/オプション/シナジー/スペクトル/人工核酸/ゴルジ体/持続可能/持続可能な開発/宿主因子/微生物/RNA合成/増殖抑制/SARS-CoV-2/SPECT/アンチセンス/ゲノム変異/細胞毒性/mRNA/新型コロナウイルス/RNA/siRNA/アンチセンス核酸/インフルエンザ/インフルエンザウイルス/スクリーニング/核酸医薬/抗ウイルス薬/創薬/ウイルス/ゲノム/ワクチン/感染症/薬剤耐性
2026-3-5●生命科学・医学系微生物病研究所教授渡辺 登喜子

発表のポイント

インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスに共通して増殖に必要な宿主因子GBF1を同定
GBF1を標的としたアンチセンス核酸(ASO)を設計・合成し、ナノモル濃度というごくわずかな量で、インフルエンザウイルスおよび新型コロナウイルスの増殖抑制効果を実証
ウイルスではなく宿主を標的とした核酸医薬による広域抗ウイルス薬の開発に期待

発表概要

大阪大学微生物病研究所のVictoria Simanihurukさん(大学院医学系研究科博士課程4年)、渡辺登喜子教授らの研究グループは、医薬基盤・健康・栄養研究所との共同研究により、インフルエンザウイルスおよび新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の両方に共通して必要な宿主因子「GBF1」を同定し、その発現を抑制するアンチセンス核酸(ASO)を設計しました。開発したASOは、複数のインフルエンザウイルス株およびSARS-CoV-2に対してナノモルレベルで増殖抑制効果を示しました。本研究成果は、ウイルスそのものではなく宿主側因子を標的とすることで、複数の呼吸器RNAウイルスに作用する核酸医薬の可能性を示したものです。これにより、宿主標的型の広域スペクトルを有する抗ウイルス薬の開発が期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「iScience」に2026年1月29日にオンライン掲載されました。



図. ウイルス増殖に関わる宿主因子の同定

研究の背景

現在使用されている多くの抗ウイルス薬は、ウイルス由来のタンパク質を標的としています。そのため特定のウイルスにしか効果を示さないことが多く、複数のウイルスに対して有効な薬剤の開発は困難でした。また、インフルエンザウイルスやSARS-CoV-2のようなRNAウイルスはゲノム変異が起こりやすいため、薬剤耐性株の出現といった問題があります。そこで近年、ウイルスが増殖に利用する宿主因子を標的とする「宿主標的型」治療戦略が注目されています。宿主因子を標的とすれば、複数のウイルスに共通して作用する治療法の開発につながる可能性がありますが、具体的な標的分子の同定と、実際に安全かつ有効な阻害手段の開発が課題となっていました。

研究の内容

本研究では、これまでにインフルエンザウイルス複製に関与すると報告されていた91個の宿主因子について再検証を行い、その中からSARS-CoV-2の増殖にも必要な因子を探索しました。その結果、ゴルジ体関連タンパク質であるGBF1が、インフルエンザウイルス、SARS-CoV-2、さらにヒトコロナウイルス229Eの増殖に関与することを明らかにしました。
細胞内のGBF1の分布を解析したところ、GBF1は通常ゴルジ体に存在しますが、SARS-CoV-2が感染した細胞ではウイルスのゲノムが複製されている場所に集まることが明らかとなりました。また、siRNAによりGBF1の発現を抑制すると、ウイルスのサブゲノムRNA合成および感染性ウイルス産生が有意に低下しました。
さらに、計算設計アルゴリズムを用いてGBF1 mRNAを標的とするアンチセンス核酸を設計し、その中から抗ウイルス活性の高い有望な候補(GBF1-ASO#1502)を同定しました。このASOは、インフルエンザA型(H1N1およびH3N2亜型)、インフルエンザB型、ならびにSARS-CoV-2に対してナノモル濃度で増殖抑制効果を示し、細胞毒性は低いことが確認されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究は、宿主因子GBF1が複数の呼吸器RNAウイルスに共通して必要であることを示し、その発現を核酸医薬で制御することにより広域抗ウイルス効果を得られることを実証したものです。ウイルス特異的薬剤とは異なるアプローチとして、宿主標的型治療戦略の可能性を示す基礎的知見となります。また将来的には、新興感染症の発生初期や複数ウイルスが同時に流行する状況において、ウイルス種に依存しない治療オプションの開発につながることが期待されます。

特記事項

本研究成果は、2026年1月29日に米国科学誌「iScience」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Broad-spectrum antiviral activity of antisense oligonucleotides targeting GBF1 against SARS-CoV-2 and influenza viruses”
著者名:Victoria Simanihuruk, Yurie Kida, Kosuke Takada, Harumi Yamaguma, Natsumi Kameoka, Itsuki Anzai, Shintaro Shichinohe, Satoshi Obika, Yuuya Kasahara, and Tokiko Watanabe
DOI:https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.114851
なお、本研究は、日本医療研究開発機構 革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「広域スペクトルを有する抗ウイルス薬開発を目指した創薬標的探索と次世代創薬モダリティの基盤構築」(22gm1610010)、日本医療研究開発機構 先進的研究開発戦略センター(AMED SCARDA)ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点群大阪府シナジーキャンパス(大阪大学ワクチン開発拠点)」(JP223fa627002)等の支援を受けて実施されました。
また、本研究は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 創薬デザイン研究センター 人工核酸スクリーニングプロジェクト・笠原勇矢プロジェクトリーダーおよび大阪大学大学院薬学研究科・小比賀聡教授の協力を得て行われました。

参考URL

大阪大学微生物病研究所 渡辺登喜子教授
https://www.biken.osaka-u.ac.jp/researchers/detail/75
大阪大学微生物病研究所 分子ウイルス分野
https://watanabe-lab.biken.osaka-u.ac.jp/

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