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東北大学 研究Discovery Saga
2026年3月5日

電流印加によってエネルギー的に不安定な方位にスピンを安定化させることに成功

―大きなスピンのゆらぎを使った新原理コンピューティングに道―

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学数物系科学総合理工工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
コンピューティング/生成モデル/ニューラルネットワーク/最適化/異方性/最適化問題/磁場/スピントルク/磁気異方性/材料科学/強磁性/持続可能/持続可能な開発/スピン/スピントロニクス/トルク/ニューラルネット/金属材料/原子力/高効率化/組合せ最適化/ゆらぎ/ナノテクノロジー
2026年3月 5日 10:00

研究者情報

〇金属材料研究所 教授 関剛斎
研究室ウェブサイト

発表のポイント

磁石の向き(スピン)がどの方位にも向きやすい性質(等方性)の薄膜を使って、電流でスピンを効率よく操作できる素子を作製しました。
電流を流すことで、外部磁場によってエネルギーが極大になる方位(不安定点)にスピンを安定化できる「磁化の動的な安定化」を実証しました。
電流と外部磁場の大きさを調整することでスピンのゆらぎを最大化でき、このスピンの動きを制限ボルツマンマシン(注1)の動作原理として適用できることを提案しました。

発表概要

磁石の向き(スピン)を情報担体とするスピントロニクス素子は、電気を切っても磁石の向きは変わらないという情報の不揮発性から動作電力を大きく低減できます。一方で、この不揮発性を排除してスピンがあらゆる方位を向くことができる性質(等方性)を活用できれば、情報を0と1の二値ではなく連続的な値として処理する新原理の情報処理などの実現に繋がるため、等方性の磁石のスピンを効率よく操作するための材料や技術が切望されていました。
今回、東北大学金属材料研究所および先端スピントロニクス研究開発センターの紅林秀和教授と関剛斎教授、日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所 先端基礎研究センターの山本慧研究副主幹らは、非磁性層と強磁性層を組み合わせた薄膜を使って等方性磁石を作製しました。等方化したことにより、電流印加で発生するスピントルクが高効率化され、外部磁場によってエネルギーが極大となる方位でもスピンを安定化できること(磁場と真逆の方向にスピンを向けられること)を示しました。等方性磁石ではスピンのゆらぎも最大化されるため、二値ではなく連続的な変数を使った制限ボルツマンマシンの実現などに繋がる成果です。
本成果は、2026年3月4日10:00(英国時間)に、科学誌Nature Materialsにオンライン掲載されました。
なお本成果は、東北大学金属材料研究所の山崎匠助教、Varun K. Kushwaha特任助教、Xueyao Hou博士研究員、同大学先端スピントロニクス研究開発センターのTroy Dion助教、同大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)のGerrit E. W. Bauer教授、英リーズ大のJoseph Barker准教授、英University College LondonのHarry Youel氏、Daniel Prestwood 氏、および英Imperial College LondonのKilian D. Stenning研究員との共同研究によるものです。



図1.  (a) 一軸の磁気異方性を有する磁石のエネルギーの角度依存性の模式図。南極方向からの角度θが0ºと180ºでエネルギーが極小となり、安定な状態となる。(b) 等方性磁石に外部磁場を印加したときのエネルギーの角度依存性の模式図。θ= 0ºのみがエネルギー的に安定な状態であるが、外部からスピントルク(太い赤色の矢印)を作用させることにより、まるで逆立ちした振り子が激しい振動によって直立を維持するように、本来は不安定なはずの磁場と真逆の向き(エネルギーが最も高い山の頂上の状態)』でスピンを安定して保持(動的安定化)できるようになる。

用語解説

注1. 制限ボルツマンマシン
複雑な組合せ最適化問題や確率的生成モデルでの学習に利用可能なニューラルネットワーク。可視層と隠れ層という二つの層からなる制限ボルツマンマシンは、同じ層内(可視層同士・隠れ層同士)には結合がないという「制限」を加えることで、一般のボルツマンマシンよりも学習や推論が計算的に扱い易くなる。

論文情報

タイトル:Dynamical stability by spin transfer in nearly isotropic magnets
著者:Hidekazu Kurebayashi*, Joseph Barker, Takumi Yamazaki, Varun K. Kushwaha, Kilian D. Stenning, Harry Youel, Xueyao Hou, Troy Dion, Daniel Prestwood, Gerrit E. W. Bauer, Kei Yamamoto*, and Takeshi Seki*
*責任著者:
ユニバーシティカレッジロンドン ロンドンセンターフォーナノテクノロジー
教授 紅林 秀和
(兼)東北大学先端スピントロニクス研究開発センター
(兼)東北大学金属材料研究所
(兼)東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所 先端基礎研究センター
研究副主幹 山本 慧
東北大学金属材料研究所 教授 関 剛斎
(兼)東北大学先端スピントロニクス研究開発センター
掲載誌:Nature Materials
DOI:10.1038/s41563-026-02510-z

詳細(プレスリリース本文)

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所
教授 関 剛斎
TEL: 022-215-2095
Email: takeshi.seki*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所
情報企画室広報班
TEL: 022-215-2144
Email: press.imr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)






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