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大阪公立大学 研究Discovery Saga
2026年3月4日

認知症ケアの実践知を行動リストとして可視化

~ケアの質向上や標準化に期待~

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
テキスト分析/認知症ケア/人工知能(AI)/研修プログラム/デジタル化/持続可能/持続可能な開発/自律性/シミュレーション/体系化/妥当性/日常生活/リハビリ/コミュニケーション/チェックリスト/リハビリテーション/介護者/実践知/認知症/標準化

2026年3月4日
リハビリテーション学研究科
プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科 田中 寛之准教授

発表概要

本研究グループは、医療・介護職に従事する人を対象に、認知症の人に対する『うまくいった関わり方(Good Practice)』をオンライン調査で収集し、回答データを分析しました。その上で専門家による妥当性の検証を行い、72項目の『Good Practiceリスト』としてまとめました。
本研究成果は、2026年1月29日に国際学術誌「BMC Geriatrics」にオンライン掲載されました。

発表のポイント

    724人の自由記述データをテキスト分析し、認知症の人に対する『うまくいった関わり方(Good Practice)』をリスト化。
    具体的な実践知を誰にでも共有できるようになり、認知症ケアの質向上や標準化に役立つことが期待。




図Good Practiceリストの活用例
認知症ケアやリハビリテーションで大切なのは、症状を抑えることだけでなく、本人の安心や尊厳を守りながら日常生活を支えることです。その鍵になるのが、現場の職員が培ってきた具体的な“工夫”ですが、これまで体系化されにくい領域でした。本研究は、医療・介護職の経験知をデータとして集め、軽量テキスト分析と専門家の合意により『誰でも使える行動リスト』に変換した点に意義があります。



田中 寛之准教授

研究の背景

認知症のケア・リハビリテーションでは、本人の尊厳や自律性を守りながら、日常生活の支援(食事、排泄、入浴など)を行うことが重要です。一方で、介護・医療の現場では多忙さや人員の入れ替わりにより、経験豊富な職員が持つ『うまくいった関わり方(Good Practice)』が共有されにくい課題があります。そこで本研究では、現場職員が実際に有効だと感じている具体的なケア行動である実践知を、自由記述から体系的に抽出し、誰でも使える形(リスト)に整理することを目指しました。

研究の内容

日本国内の医療・介護職に従事する724人を対象に自由記述のオンライン調査を実施し、「認知症の人の状態が良くなった」または「落ち着いた」と感じた関わり方(Good Practice)を、6つの生活場面(食事、起居・移乗、整容、排泄、入浴・更衣、コミュニケーション)ごとに収集しました。そして、収集した記述データに関してテキスト分析を実施し、場面ごとの特徴語と具体的行動を整理しました。そこから抽出した79項目について、認知症ケアに精通する専門家16人によってデルファイ法を用いた妥当性の検証を行い、72項目を最終リストとして確定しました。確定した項目の中には、「食事内容(メニュー)を説明する」「移乗前に痛みを確認する」「相手のペースに合わせる」「目線を合わせる」「湯温を確認する」など日常的なケア場面で実践可能な行動が含まれています。

期待される効果・今後の展開


本研究で作成した72項目のGood Practiceリストは、現場での実践知を観察可能な具体的行動として可視化したものです。本リストを新人教育や研修プログラム、チェックリスト、シミュレーション演習などに組み込むことで、認知症ケアの質の底上げや標準化に役立つことが期待されます。また、本リストに関する特許を共同保有している株式会社介護サプリ社とともにケア記録アプリに組み込み、認知症の人の情報と介護者の情報の組み合わせから、最も適した『行動リスト』が即座に抽出・推奨されるAIシステムの開発・実装を進めています(図)。今後は、本リストや記録アプリを用いた研修が、行動・心理症状(BPSD)の軽減、スタッフの自己効力感向上、燃え尽き症候群の低減などにつながるかを介入研究で検証し、実装(研修教材化・デジタル化など)も視野に入れて研究を進めていく予定です。

資金情報


本研究は、JSPS科研費 基盤研究(C)(Grant-in-Aid for Scientific Research:23K10265)および2025年度大阪公立大学戦略的研究推進事業(若手研究)の支援を受けて実施しました。

用語解説


※ デルファイ法:専門家に評価を依頼し、合意形成を通じて項目の妥当性を高める手法。

掲載誌情報

【発表雑誌】 BMC Geriatrics
【論文名】 Caregiver-reported good practices and their associations with care-recipient condition in dementia care: a text-mining study 
【著者】 Hiroyuki Tanaka, Masahiro Tenjin, Haruka Atosako, Yuma Nagata, Daiki Ishimaru 
【掲載URL】https://doi.org/10.1186/s12877-026-07062-0

問い合わせ先

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科
准教授 田中 寛之(たなか ひろゆき)
TEL:06-6167-1281
E-mail:hytanaka[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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