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横浜市立大学 研究Discovery Saga
2026年3月4日

DNA修復欠損がんを選択的に殺傷する手法を開発

—Molecular Therapy Nucleic Acidsに掲載—

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
ミスマッチ修復欠損がんを標的とした新たな治療法の確立につながることが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
化学工学総合生物医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
人工DNA/持続可能/持続可能な開発/ゲノムの安定性/増殖抑制/DNA修復/がんゲノム/マウスモデル/異種移植/染色体/脳神経外科/臨床応用/分子標的/ゲノム編集/悪性腫瘍/発がん/DNA複製/がん細胞/がん治療/マウス/細胞死/細胞治療/免疫チェックポイント/免疫チェックポイント阻害薬/ゲノム/バイオマーカー/遺伝子/分子生物学/分子標的治療/分子標的治療薬

2026.03.04 横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 分子生物学研究室の足立典隆教授と斎藤慎太助教、新井宇沙姫さん(博士後期課程1年)らの研究グループは、横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科の加藤真吾准教授、同脳神経外科の立石健祐准教授らと共同で、ミスマッチ修復と呼ばれるDNA修復機構を欠損したがん細胞を選択的に殺傷できるシステムの開発に成功しました。ミスマッチ修復欠損がんを標的とした新たな治療法の確立につながることが期待されます。

本研究成果は、米国遺伝子細胞治療学会の学術誌「Molecular Therapy Nucleic Acids」に掲載されました(2026年2月5日オンライン公開)。

研究成果のポイント 


● ミスマッチ修復機構を欠損した細胞でのみ自殺遺伝子の発現が誘導されるシステムを開発

● ミスマッチ修復欠損に依存した細胞殺傷効果を種々のヒト細胞で実証

● ミスマッチ修復欠損がんの増殖が有意に抑制されることを担がんマウスモデルで確認

研究背景

ミスマッチ修復(mismatch repair: MMR)は、細胞の増殖に必須なDNA複製の際に生じる塩基対の不一致を修復する役割を担っており、ゲノムの安定性を維持するために重要なDNA修復機構です。MSH2、MSH6、MLH1、PMS2などの遺伝子の異常によってMMRの機能が失われると、ゲノム中に変異が蓄積し、発がんにつながります。MMR欠損がんは臓器横断的に認められ、全悪性腫瘍の10%以上を占めるといわれています。

MMR欠損は臨床的にも重要なバイオマーカーとして注目されており、その結果生じるゲノム異常や変異蓄積を標的とした治療法はいくつか知られていますが(免疫チェックポイント阻害薬など)、MMR欠損そのものを直接利用する治療戦略は開発されていませんでした。

発表内容

研究グループは、一本鎖アニーリング(SSA)と呼ばれるDNA組換え反応がMMRによって抑制されるという基礎的知見に着目しました。この仕組みを利用し、SSA反応が起こった場合にのみ不完全な遺伝子断片から正常な遺伝子が生成される人工DNAを設計しました。この人工DNAを細胞に導入すると、SSA反応によってジフテリア毒素A断片(DT-A)遺伝子が生成された場合にのみ毒性タンパク質の発現が起こり、細胞死が誘導されます。正常なMMR機能をもつ細胞ではSSA反応が抑制されるため、毒性タンパク質の発現は低く抑えられます。

実際、さまざまなヒトがん細胞を用いた実験により、MMR欠損細胞で顕著に細胞死が誘導されること、また、MMR機能を回復させた細胞では毒性が著しく低下することが確認され、このシステムががん種に依存しない手法であることが示されました。さらに研究グループは、マウスの異種移植腫瘍モデルにおいて、MMR欠損依存的に腫瘍増殖抑制が認められることを確認しました。



今後の展開

今回開発されたシステムは、ヒト細胞のDNA修復機構の違いそのものを利用してがん細胞を選択的に殺傷するという新しい概念に基づいています。MMR欠損は多くのがんに共通してみられる特徴であり、本技術は臓器横断的に適用可能ながん治療法となる可能性があります。現在、臨床応用に向けた研究が進められています。



研究費

本研究は、主にJSPS科研費(JP19H01151、JP22K19382、JP24K15289、JP24K22025)と公益財団法人上原記念生命科学財団研究助成金、横浜市立大学学長裁量事業 第5期戦略的研究推進事業「研究開発プロジェクト」の支援を受けて実施されました。

論文情報

タイトル:dMMR killer: a conditional suicide gene that preferentially kills DNA mismatch repair-deficient cells
著者:Shinta Saito, Shingo Kato, Usaki Arai, Kensuke Tateishi and Noritaka Adachi
掲載雑誌:Molecular Therapy Nucleic Acids
DOI:10.1016/j.omtn.2026.102858
 

参考文献

[1] Saito S, Kato S, Arai U, En A, Tsunezumi J, Mizushima T, Tateishi K, Adachi N. HR eye & MMR eye: one-day assessment of DNA repair-defective tumors eligible for targeted therapy. Nature Communications. 2025 May 12;16:4239. doi:10.1038/s41467-025-59462-2.

[2] Saito S & Adachi N. Characterization and regulation of cell cycle-independent noncanonical gene targeting. Nature Communications. 2024 Jun 18;15(1):5044. doi:10.1038/s41467-024-49385-9.

[3] Saito S, Maeda R, Adachi N. Dual loss of human POLQ and LIG4 abolishes random integration. Nature Communications. 2017 Jul 11;8:16112. doi:10.1038/ncomms16112.

[4] Chang HHY, Pannunzio NR, Adachi N, Lieber MR. Non-homologous DNA end joining and alternative pathways to double-strand break repair. Nature Rev. Mol. Cell Biol. 2017 Aug;18(8):495-506. doi:10.1038/nrm.2017.48.

問い合わせ先

横浜市立大学 広報担当
mail:koho@yokohama-cu.ac.jp
記者発表資料 掲載論文 生命ナノシステム科学研究科 附属病院 がんゲノム診断科 医学研究科 脳神経外科学 第5期 戦略的研究推進事業「研究開発プロジェクト」

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