[Top page] [日刊 研究最前線 知尋] [Discovery Saga総合案内] [大学別アーカイブス] [Discovery Saga会員のご案内] [産学連携のご案内] [会社概要] [お問い合わせ]

大阪公立大学 研究Discovery Saga
2026年2月21日

3D測量データの不要なノイズをAIで自動除去

~2次元画像×幾何学的情報で、効率的&高精度な除去を実現~

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
これまで手作業で数時間かかっていたノイズ除去作業を大幅に短縮し、建設現場のDXや文化遺産のデジタルアーカイブ化への貢献が期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学数物系科学工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
フィルタリング/物体認識/画像処理/情報学/深層学習/人工知能(AI)/幾何学/ノイズ/持続可能/文化遺産/持続可能な開発/3次元計測/デジタルツイン/レーザー/自動化/実証実験/ICT

2026年2月20日
プレスリリース
現代システム科学研究科
情報学研究科

発表者

大阪公立大学大学院情報学研究科 小村 風我大学院生、吉田 大介准教授、現代システム科学域 植田 凌生さん(4年生)

発表概要

本研究グループは、レーザーで周囲の形状を立体的に計測する装置である地上型レーザースキャナ(TLS)のデータに含まれる歩行者などの不要なノイズを、深層学習と幾何学的な特徴判定を組み合わせて自動除去する手法を開発しました。本手法は、TLSと同時にカメラで撮影した2次元画像上でAIが「人物ノイズ」を検出し、その情報を3次元空間に投影します(図1)。さらに、投影時のズレや誤認識を防ぐために「対象が平面的か(壁・地面ではないか)」「点の密度は適切か」といった幾何学的な検証を行うことで、従来手法よりも高精度にノイズのみを除去することに成功しました(図2)。
本研究成果は、国際学術誌「Sensors」に2026年2月13日にオンライン掲載されました。

発表のポイント

    TLSで計測した3次元点群データから、歩行者などの「人物ノイズ」を自動かつ高精度に除去する新手法を開発。
    2次元画像でのAI物体認識結果を3次元空間へ投影し、さらに形状の特徴(幾何学的整合性)を判定することで、背景(壁・地面など)の誤除去を抑えつつ、人物由来ノイズを除去。
    これまで手作業で数時間かかっていたノイズ除去作業を大幅に短縮し、建設現場のDXや文化遺産のデジタルアーカイブ化への貢献が期待される。




図1人物の3次元点群を自動認識(赤色)



図2既存手法との人物点群の認識性能の比較結果
(赤:除去対象の人物点群、青:誤除去された点群)
<研究者コメント>
レーザースキャナで得られる3次元点群は非常に精細ですが、その分、歩行者などの人物由来ノイズを取り除く作業は大きな負担となっていました。本手法は、AIによる認識結果に幾何学的な整合性チェックを組み合わせ、背景を過剰に消さないようにしながら、人物由来ノイズの実用的な自動除去を目指したものです。この研究が、測量や文化財保全などでの3次元データ活用をさらに加速させる一助になれば幸いです。



吉田 大介准教授

研究の背景

近年、現実空間をデジタルデータとして再現する「デジタルツイン」技術が注目されており、建設現場の進捗管理や文化財保全において、地上型レーザースキャナ(TLS)による3次元計測が普及しています。しかし、街中や観光地で計測を行うと、通行人が「ゴースト(幽霊)」のようなノイズとしてデータに残ってしまう問題がありました。これまでは、専門家が手作業でノイズを削除していましたが、膨大な時間と労力が必要でした。自動化の手法も研究されていますが、既存の3次元フィルタではノイズを取りきれなかったり、逆に壁や看板などの必要なデータまで誤って消してしまったりするという課題がありました。

研究の内容

本研究では、TLS計測時に同時に撮影される「2次元画像」に着目しました。まず、画像処理AIを用いて画像上の「人」領域を特定します。次に、その領域を3次元点群空間へ投影して除去候補を選定します。しかし、単に画像を投影するだけでは、カメラとレーザースキャナの位置ズレなどにより、人の背後にある壁などの静止物まで除去してしまうリスクがあります。そこで本グループは、除去候補となった点群に対し、「小さな塊か(孤立点群除去)」「平面ではないか(背景保護)」「スキャナからの距離に応じた密度か」といった多段階の幾何学的フィルタリング(Geometry-Aware Filtering)を導入しました。これにより、AIの検出能力を活かしつつ、誤除去を大幅に抑えるシステムを実現しました。
大学のキャンパスや歴史的町並みでの実証実験により、TLSの計測条件(スキャン間隔や遮蔽など)の影響を受けやすい状況でも、人物ノイズ除去の再現率(Recall)は約90%と安定して維持できることを確認しました。さらに、幾何学的フィルタリングにより、背景(壁・地面など)の誤除去も抑制できます。

期待される効果・今後の展開


本手法により、大規模な3次元点群データのクリーニング作業が自動化され、デジタルツイン構築のコストと時間が大幅に削減されます。これにより、i-Construction(ICTの全面的な活用)の推進や、観光客の多い場所での文化財デジタルアーカイブ化などが、より手軽かつ高品質に行えるようになると期待されます。今後は、人物以外の動的ノイズへの対応やWebシステム化を目指します。

資金情報

本研究は、JST共創の場形成支援プログラム「住民と育む未来型知的インフラ創造拠点」(課題番号:JPMJPF2115)の支援を受けて行われました。

用語解説


※ 幾何学的フィルタリング(Geometry-Aware Filtering):物体の形や位置関係といった“幾何学的な特徴”を利用して、データから不要な情報(ノイズ)を取り除く処理手法。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Sensors
【論文名】 Geometry-Aware Human-Noise Removal from TLS Point Clouds via 2D Segmentation Projection
【著者】 Fuga Komura, Daisuke Yoshida, Ryosei Ueda
【掲載URL】https://doi.org/10.3390/s26041237

問い合わせ先

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院情報学研究科/現代システム科学域
准教授 吉田 大介(よしだ だいすけ)
TEL:06-6605-3382
E-mail:daisuke[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs