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大阪公立大学 研究Discovery Saga
2026年2月19日

炭水化物好きは太りやすい

~同じカロリーでも体重・脂肪が増加すると判明~

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
高炭水化物食品への偏りと食行動が肥満に関与する可能性を示す
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
複合領域工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
エネルギー消費量/食行動/エネルギー消費/持続可能/持続可能な開発/脂質輸送/嗜好性/炭水化物/脂肪酸合成/高脂肪食/アミノ酸/イミン/エネルギー代謝/マウス/血液/脂肪酸/代謝物/リスク因子/遺伝子/遺伝子発現/栄養指導/脂質/脂質異常症/脂質代謝/食生活/生活習慣病/糖尿病/動物実験

2026年2月19日
生活科学研究科
プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院生活科学研究科 松村 成暢准教授、藤谷 美菜客員研究員(米国テキサス大学サウスウェスタン医療センター研究員)、藤川 哲兵客員准教授(米国テキサス大学サウスウェスタン医療センター准教授)、石橋 ちなみ講師、竹中 重雄教授

発表概要

本研究グループは、従来の高脂肪食中心の肥満研究を拡張し、高炭水化物食品の影響を調べました。マウスに通常の標準飼料とともにパンや小麦粉、米粉を自由摂取させた結果、強い嗜好性により標準飼料をほとんど食べなくなり、総摂取カロリーが大きく増えないにもかかわらず、体重と脂肪量が増加することが分かりました。本研究結果は、高炭水化物食品への偏りと食行動が肥満に関与する可能性を示しました。
本研究成果は、2026年1月22日に、栄養学・食品科学分野の国際学術誌である「Molecular Nutrition & Food Research」にオンライン掲載されました。

発表のポイント

    肥満研究において、従来の高脂肪食中心の食品ではなく、主食として日常的に摂取されているパンや米などの高炭水化物食品の影響を調べた。
    マウスに基礎的な栄養を満たした標準飼料とともに、パンや小麦粉、米粉を自由選択で摂取させ、体重変化、エネルギー消費量、血中代謝物、肝臓での遺伝子発現を解析。
    マウスは、パンや小麦粉、米粉に強い嗜好性を示し、標準飼料摂取が減少。総摂取カロリーが大きく増えないにもかかわらず、体重・脂肪量が増加した。
    高炭水化物食品への偏りと食行動、それに伴う代謝変化が肥満に関与する可能性。




<研究者のコメント>
本研究が示しているのは、「特定の食品が悪い」のではなく、「おいしすぎる食品に偏ることが、代謝や体重に影響を与える可能性がある」という点です。これは、パンだけでなく、米や麺類、甘味の強い食品など、あらゆる主食・嗜好食品に共通する重要な視点です。


松村 成暢准教授

研究の背景

肥満は糖尿病や脂質異常症、心血管疾患など多くの生活習慣病のリスク因子であり、その予防は世界的な課題となっています。これまでの肥満研究では、脂質の過剰摂取が主要な原因と考えられ、高脂肪食を用いた動物実験系が広く用いられてきました。一方で、パンや米、麺類などの高炭水化物食品は、主食として日常的に摂取されているにもかかわらず、これらが肥満や代謝に及ぼす影響を検証する研究は限られていました。また、「パンは太りやすい」「炭水化物は控えるべき」などの一般的な認識がある一方で、それが食品そのものの性質によるものなのか、嗜好性や食行動の変化によるものなのかは明確ではありませんでした。

研究の内容

本研究では、脂質に偏ってきた従来の肥満研究の枠組みを拡張し、小麦や米のような高炭水化物食品がマウスにとっても好ましいものなのか、これらの食品の摂取がエネルギー代謝や体重調節にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的としました。そして、マウスに通常の標準飼料とともに、パンや焼成した小麦粉を自由に選択摂取させる実験系を構築し、体重変化、エネルギー消費量、血中代謝物、肝臓における遺伝子発現を包括的に解析しました。
その結果、マウスはパンや小麦粉に対して非常に強い嗜好性を示し、標準飼料をほとんど摂取しなくなることが明らかになりました。この条件下では、総摂取カロリーは大きく増加していないにもかかわらず、体重および脂肪量の増加が認められました(図1左)。また、同様の実験を米粉を用いて行ったところ、小麦粉と同じように体重増加が生じることが確認されました(図1右)。この結果は、体重増加が小麦特有の影響ではなく、高炭水化物食品に対する強い嗜好性と、それに伴う代謝変化が関与している可能性を示しています。


図1 マウスに標準飼料とパン、小麦粉、米粉を与えると肥満になる


図2 小麦粉摂取時に酸素消費量(=エネルギー消費量)が低下する。
そして、呼気ガス分析を用いた間接熱量測定では、体重増加の背景には「食べ過ぎ」ではなく、エネルギー消費量の低下が関与していることが示されました(図2)。さらに、血液中の代謝物解析では脂肪酸の増加や必須アミノ酸の低下が認められ、肝臓では脂肪の蓄積(図3)と脂肪酸合成や脂質輸送に関わる遺伝子の発現量が増えました。そして、小麦粉の摂取を中止すると、体重増加や代謝異常は速やかに改善しました(図4)。これは小麦中心の食生活から、バランスのとれた食事(標準飼料)に切り替えることで、容易に体重がコントロールできることを示しています。


図3 小麦粉摂取を継続すると肝臓に脂肪が蓄積する。(肝臓を薄くスライスし、脂肪染色薬(BODIPY) で脂肪滴を緑色に染色)


図4 小麦粉摂取を中断すると体重増加が止まる

期待される効果・今後の展開


本研究は、マウスにおいて高脂肪食を用いず、小麦粉や米粉などの高炭水化物食品の摂取によって体重増加や代謝変化が生じることを体系的に示した点で、新しい一歩を踏み出した研究と位置づけられます。これは、肥満研究の対象を脂質中心の枠組みから拡張し、炭水化物の質や嗜好性、食行動との関係を議論する基盤を提供するものです。
また、本研究では、小麦粉に限らず米粉でも体重増加が認められたことから、問題は特定の食品そのものではなく、嗜好性の高い高炭水化物食品に偏った摂取が、エネルギー消費や脂質代謝に影響を及ぼす可能性にあることが示唆されました。これは、「パンが悪い」「米が悪い」のような単純な二項対立ではなく、食事全体の構成やバランスを科学的に捉える必要性を示しています。
今後は、ヒトを対象とした研究を通じて、本研究で明らかになった代謝変化が実際の食生活においてどの程度当てはまるのかを検証するとともに、全粒粉や未精製穀類・食物繊維を含む食品、タンパク質や脂質との組み合わせ、食品の加工方法や摂取タイミングなどの要因が、炭水化物摂取時の代謝応答にどのような違いをもたらすかを明らかにしていく予定です。
本研究成果は、肥満予防や生活習慣病対策において、脂質中心で議論されてきた従来の枠組みを補完し、炭水化物を含む主食の「質」や「食べ方」に着目した新たな栄養学的視点を提供するものです。将来的には、栄養指導、食育、食品開発の分野において、「おいしさ」と「健康」を両立させるための科学的基盤としての活用が期待されます。

資金情報

本研究は、JSPS科研費JP23K26857、公益財団法人 飯島藤十郎記念食品科学振興財団 学術研究助成、公益財団法人エリザベス・アーノルド富士財団 学術研究助成からの支援を受けて実施しました。

掲載誌情報

【発表雑誌】Molecular Nutrition & Food Research
【論文名】Wheat Flour Intake Promotes Weight Gain and Metabolic Changes in Mice
【著者】 Shigenobu Matsumura*, Miona Marutani, Eri Nousou, Nagisa Murakami, Saki Mizobata, Miyu Fujisawa, Mizuki Fujiwara, Nanase Iki, Soyoka Horie, Yuka Yamato, Azumi Yamamoto, Mina Fujitani, Teppei Fujikawa, Chinami Ishibashi, and Shigeo Takenaka
【掲載URL】https://doi.org/10.1002/mnfr.70394

問い合わせ先

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院生活科学研究科
准教授 松村 成暢(まつむら しげのぶ)
TEL:06-6167-1359
E-mail: smatsumura@omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
該当するSDGs