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大阪公立大学 研究Discovery Saga
2026年2月4日

ストレス情報×機械学習で長期休職は予測可能か?

~10年以上、23万人のデータから検証~

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
ストレスチェック制度の限界と可能性を明確に示し、今後は健康診断結果や体調変化など他の指標と組み合わせることで、より実用的な予測モデルの構築につながることが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
AI/機械学習/人工知能(AI)/持続可能/持続可能な開発/精神医学/健康診断/予測モデル/うつ/うつ病/ストレス/メンタルヘルス/精神疾患

2026年2月4日
プレスリリース
医学研究科

発表のポイント

◇大規模なストレスチェックデータと機械学習を組み合わせて、長期休職を早期に予測できるかを検証。
◇一部の機械学習モデルは「休職者を見逃しにくい」点で高い性能を示した。
◇一方で誤判定の課題も明らかとなり、ストレス情報のみでの高精度予測には限界があることを示した。

発表概要

日本において、就労者の長期休職の原因は精神疾患が最も多く、社会的な課題となっています。そこで、就労者に年に一度実施される『ストレスチェック制度』の結果を活用し、長期休職を早期に予測することができないかと研究が進められてきました。しかし、従来の研究は調査人数が少ないことなどさまざまな制約から、休職予測の有効性は十分に示されていませんでした。
大阪公立大学大学院医学研究科神経精神医学の岩﨑 進一准教授らの研究グループは、10年以上にわたって収集された日本の公務員のべ約23万人分のストレスチェックデータと機械学習を組み合わせて、長期休職を予測できるかどうかを検証しました。
複数の機械学習モデルを用いて比較を行った結果、一部の方法では「休職者を見逃さない」という点で高い性能を示しました。しかし同時に「休職しない人まで危険と判断してしまう」という課題も明らかになり、ストレス情報のみでは高精度な予測は困難であることが示されました。
この結果は、ストレスチェック制度の限界と可能性を明確に示し、今後は健康診断結果や体調変化など他の指標と組み合わせることで、より実用的な予測モデルの構築につながることが期待されます。
本研究成果は、2025年12月16日に国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

<岩﨑 進一准教授からのコメント>


私たちの研究では、「仕事のストレスの情報だけで、将来こころの病気による長期休職を予測できるのか」を、最新の手法を使って検証しました。結果として、仕事のストレスは確かに関係しているものの、それだけでは正確な予測は難しいことが分かりました。この結果は、職場のメンタルヘルス対策を考えるうえで、とても重要な示唆を与えるものだと考えています。

研究の背景


こころの病気による長期間の休職は、本人の生活だけでなく、職場や社会全体にも大きな影響を与えます。日本では、長期休職の原因として、うつ病などの精神疾患が最も多いことが分かっています。一方で厚生労働省の制度である『ストレスチェック制度』によって、多くの就労者が毎年仕事のストレスを質問票で回答しています。そのため、このストレスチェックの結果を活用すれば、将来長期休職する人を早期に見つけられるのではないかという期待からさまざまな研究が進められてきました。
しかし、これまでの研究にはいくつかの問題がありました。例えば、調査人数が十分ではないこと、長期休職する人の割合は非常に少なく分析が難しいこと、そして予測の正確さを適切に評価できていないことなどです。また「人工知能(AI)や機械学習を使えば予測精度が向上するのではないか」という考えもある一方で、その有効性については一致した見解が得られていませんでした。
そこで本研究では、10年以上、のべ23万人以上の対象者という非常に大きなデータを使い、「仕事のストレス × 機械学習」で、どこまで予測できるのかを本格的に調べました。

研究の内容


本研究では、2011年から2022年までに集められた、日本の公務員のべ231,425人のストレスチェックのデータを使用し、「仕事のストレス」と「機械学習」を組み合わせることで、どこまで長期休職を予測できるのかを検証しました。
分析では5種類の機械学習手法と、休職する人が非常に少ないというデータの偏りを補正する6種類のサンプリング手法を組み合わせて、複数の手法を比較しました。
その結果、一部の方法では「休職する人を見逃さない」という点で高い性能を示しました。しかし同時に、「実際には休職しない多くの人まで危険と判断してしまう」という課題も明らかになりました。つまり、仕事のストレスに関する情報だけでは、将来の長期休職を高い精度で予測することは難しいという結論に至りました。
一方で、分析を詳しく見ると、『不安感が強い』『仕事量が多い』『食欲が落ちている』といった項目は、長期休職と比較的強く関係していることが分かりました。これらの項目は、より早い段階での支援につなげる際の重要な手がかりとなる可能性があります。

期待される効果・今後の展開


本研究の最も重要な意義は、ストレスチェックのデータにより構築した予測モデルが、「できること」と「できないこと」を示した点にあります。今回の結果から、ストレスチェック制度はメンタルヘルス対策として重要である一方で、機械学習モデルにおいて、その情報だけで将来の長期休職を正確に予測するのは難しいことがわかりました。長期休職をより的確に見通すためには、健康診断の結果やこれまでの体調変化など、ストレス以外の情報と組み合わせる必要があるということが示唆されました。
今後は、他の職場や国でも同じ方法が有効であるかを検証するとともに、健康診断データなど他の指標を組み合わせて、より実用的な仕組みを構築する研究を進めていきます。さらに、予測だけでなく長期休職のリスクがある人に対して『早めの支援につなげる方法』も研究していく予定です。この研究が、働く人が安心して長く働ける社会づくりにつながることを期待しています。

資金情報

 本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(JSPS科研費:JP20K10325)の支援を受けて実施されました。

掲載紙情報


【発表雑誌】Scientific Reports
【論 文 名】Machine learning prediction of long-term sickness absence due to mental disorders using Brief Job Stress Questionnaire data
【著者】Shinichi Iwasaki, Yasuhiko Deguchi, Shohei Okura, Kunio Maekubo, Ayaka Matsunaga, Koki Inoue
【掲載URL】https://doi.org/10.1038/s41598-025-32857-3

問い合わせ先

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科神経精神医学
岩﨑 進一(いわさき しんいち)
shinichiiwasaki05[at]gmail.com
※[at]を@に変更してください

問い合わせ先

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp 
※[at]を@に変更してください
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