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横浜市立大学 研究Discovery Saga
2026年1月28日

「へき地度」が高い地域で脳卒中・心筋梗塞・男性自殺の死亡率が高い

— 全国自治体データを用いたエコロジカル研究 —

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
RIJを活用することで、医師偏在対策、救急医療体制整備、地域精神保健施策などにおける科学的根拠に基づく地域医療政策への応用が期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域環境学工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
多変量解析/精神保健/地域特性/持続可能/持続可能な開発/救急医療/心筋/医療政策/死亡率/心筋梗塞/妥当性/地域医療/脳梗塞/アウトカム/レセプト/医師/健康格差/高齢化/在宅医療/糖尿病/脳卒中/標準化

2026.01.28 横浜市立大学大学院データサイエンス研究科の金子惇准教授らの研究グループは、日本独自の「へき地*1」尺度であるRurality Index for Japan(RIJ)を用いて、全国の市区町村・政令指定都市行政区を対象に、医療計画における主要な5疾病(急性心筋梗塞、脳卒中、がん、精神科疾患、糖尿病)の標準化死亡比*2(精神科疾患に関しては自殺による死亡、糖尿病に関しては外来の標準化レセプト出現比)との関連を検討しました。その結果、「へき地度」が高い地域では、脳卒中および男性自殺の標準化死亡比が有意に高い傾向にあることが明らかになりました。

本研究成果は国際学術誌「BMJ Open」に掲載されました(日本時間1月27日21時15分公開)。


研究成果のポイント


● 日本全国約1,900の市区町村・行政区を対象とした包括的解析

● 日本で開発・検証されたへき地尺度(RIJ)を用いた、主要疾患による死亡に関する疾患横断的な初の分析

● 脳卒中および男性の自殺で、「へき地度」と標準化死亡比に明確な用量反応関係があった

● がんによる死亡および糖尿病の外来利用とは有意な関連を認めず

● 「へき地度」は高齢化率・社会経済的な困窮と強く相関

研究背景

日本では都市部と「へき地」で医療アクセスや健康アウトカムに格差が存在することが指摘されてきましたが、これまで「へき地」を段階的に定量化する指標が乏しく、疾患横断的な検証は限定的でした。

本研究では、先行研究で開発・妥当性が検証されたRIJを用いることで、「へき地度」と健康アウトカムの関連を評価しました。


発表内容


本研究では、全国1,897市区町村(人口約1.26億人)を対象に、公開統計データを用いたエコロジカル研究を実施しました。地域の「へき地度」は Rurality Index for Japan(RIJ)により評価し、急性心筋梗塞、脳卒中(脳梗塞・脳出血)、がん、自殺の標準化死亡比(SMR)および糖尿病外来医療の標準化レセプト出現比(SCR)との関連を検討しました。解析では、高齢化率と社会経済的困窮を示す地理的剥奪指標(Areal Deprivation Index)を調整した多変量解析を行うことで、地域特性が健康アウトカムに及ぼす影響を精緻に評価しました。

研究の結果

本研究は、「へき地」における疾患別の健康格差が一様ではないことを示しました。特に、緊急性の高い疾患(心筋梗塞・脳卒中)や男性の自殺において、「へき地度」が死亡と関連しており、脳卒中と男性の自殺においてへき地度が高くなるほど標準化死亡比が高くなる用量反応関係が見られました。これらの結果から、救急医療体制や地域精神保健対策の重点的強化の必要性が示唆されます。一方で、がんにおいては「へき地度」との関連が乏しく、疾患特性に応じた政策立案の重要性が示されました。


図1. 脳卒中及び自殺の男女別標準化死亡比と「へき地度」との関連

今後の展開

RIJを活用することで、医師偏在対策、救急医療体制整備、地域精神保健施策などにおける科学的根拠に基づく地域医療政策への応用が期待されます。今後は、個人レベルデータを用いた検証や、介入研究への展開を検討しています。

研究費

本研究は、JSPS科研費(2424K02670)および横浜市立大学戦略的研究推進事業の支援を受けて実施されました 

論文情報

タイトル:Association between rurality and mortality from major diseases in Japan: an ecological study
著者:Makoto Kaneko, Takaaki Ikeda
掲載雑誌:BMJ Open
DOI:10.1136/bmjopen-2025-103227


 

用語解説

1  へき地: 「へき地」という言葉は医療資源の乏しい郡部を指す言葉として行政文書でも用いられており、英語のruralに対応する言葉として本研究では「へき地」「へき地度」という言葉を用いている。ただ、「へき地」も”rural”もネガティブなニュアンスを含んで用いられる場合もあるものの、他に適切な用語が無いため使用されているという側面もあり、その点を鑑みて、本プレスリリースでは「」付きの「へき地」「へき地度」という表現を用いている。

2  標準化死亡比: 人口構成の違いを除去して死亡率を比較するための指標。ある集団の死亡率が、基準となる集団と比べてどのくらい高いかを示す比であり、今回は日本全国の平均と各市区町村を比較するためにこの指標を用いている。ある集団で実際に観察された死亡数が、もしその集団の死亡率が基準となる集団の死亡率と同じだった場合に予想される死亡数(期待死亡数)の何倍であるか、という形で算出される。


 

問い合わせ先

横浜市立大学 広報担当
mail:koho@yokohama-cu.ac.jp
記者発表資料 掲載論文 データサイエンス研究科 データサイエンス研究科 ヘルスデータサイエンス専攻 第6期 戦略的研究推進事業「研究開発プロジェクト」 戦略的研究推進事業 金子 惇

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