ハンディサイズの鉄筋スキャナを開発
コンクリート製インフラを非破壊・高速・正確に診断!
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 永久磁石法は、電磁波レーダーではほぼ不可能であった水中での鉄筋探査を可能とするため、近年多発する水道管の老朽化による道路の陥没事故などの予防保全における活躍も期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
2026-1-21●工学系産業科学研究所教授千葉 大地発表のポイント
コンクリート内部の配筋状況を、モップ掛けのようになぞるだけで非破壊・高速・正確にマッピングできる、重量約2.5kgのハンディな鉄筋スキャナを開発。現在主流の電磁波レーダーを用いた非破壊鉄筋探査装置は、複数回スキャンを必要とする上、水中探査ができないという弱点を有するが、本製品はこれらの課題に対応可能な「永久磁石法」を用いている。
今後は現地調査やモニター企業のフィードバックを元に量産販売への準備を進めるほか、独自技術である永久磁石法の特長を活かし、道路陥没など事故の予防に貢献する技術開発を目指す。
発表概要
大阪大学産業科学研究所の千葉大地(ちば・だいち)教授と 協栄産業株式会社らによる研究グループは、千葉教授が独自に開発した「永久磁石法」という手法を活用し、コンクリートに埋設された鉄筋を、一度のスキャンで面的に可視化・マッピングできるハンディな鉄筋スキャナを開発しました。
図. 完成したハンディ鉄筋スキャナのプロトタイプ

図. YouTubeにて本技術の紹介動画を公開中 https://youtu.be/JcnngMj7U3A
研究の内容
日本には、高度経済成長期に建設されたコンクリート製インフラが多く、橋梁やトンネル、水道管などで老朽化が進んでいます。コンクリートはひび割れや中性化、鉄筋腐食などで劣化しやすく、その進行が目に見えにくいため、近年、これらの問題が表面化する事故が相次いで発生しています。未然に防ぐためには、構造物の劣化状況を正確かつ効率的に把握する技術が不可欠です。コンクリートの非破壊鉄筋探査装置としては、電磁波レーダーが広く普及しています。しかし、面的に内部の状況を把握するには、何度もスキャンを繰り返す必要があります。また、コンクリートの湿潤状況や漏水は電磁波の伝搬や反射を妨げ、計測結果に影響を及ぼすほか、水中での探査は困難です。
このような課題を解決するため、千葉教授はNEDOの実施する「官民による若手研究者発掘支援事業」のマッチングサポートフェーズにおいて、永久磁石法を確立しました。その後、同共同研究フェーズにおいて、 協栄産業株式会社と共同で、製品化を念頭に鉄筋スキャナの開発に着手しました。今回完成したプロトタイプは、ハンディサイズ(約2.5 kg)でありながら、多数のセンサを集積化したモジュールを内蔵することにより、一度のスキャンで面的に配筋状況を可視化することが可能となりました。まるでモップ掛けのようにコンクリート壁をなぞるだけで、素早く、大面積の点検が可能となります。
今後、研究グループは引き続き「住民と育む未来型知的インフラ創造拠点」などとも連携し、各所での現場調査を進めていきます。同時に、1年以内に製品プロトタイプを完成させ、現場調査やモニターユーザー企業からのフィードバックを集めながら2年以内の量産販売を目指します。
また、永久磁石法は、電磁波レーダーではほぼ不可能であった水中での鉄筋探査を可能とするため、近年多発する水道管の老朽化による道路の陥没事故などの予防保全における活躍も期待できます。千葉教授は今後、インフラ点検保守を進める企業等とも連携し、水中での探査技術の開発を進める予定です。そのための新しい計測原理、および鉄筋の腐食状況の把握が可能な技術の開拓に向け、引き続きチャレンジを続けます。
大阪大学 研究