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岡山大学 研究Discovery Saga
2026年1月16日

ETA治療(Endoscopic Topical Application)による難治性過活動膀胱の症状改善を確認

~大学発の新規治療を世界で初めて実施した症例報告~

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
臨床現場における適応拡大と症例の継続的な集積を通じて、実臨床への展開を加速させていくことが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
医歯薬学
【Sagaキーワード】
感覚神経/治療標的/神経ネットワーク/内視鏡/臨床応用/筋肉/日常生活/低侵襲治療/生活の質/低侵襲/薬物療法

2026年01月16日

発表のポイント

従来の治療では十分に作用しにくい尿意の感覚経路に対し、膀胱粘膜表面から薬剤を直接作用させるETA治療*1)という岡山大学発の新しい治療アプローチを臨床応用しました。
従来治療を繰り返しても効果が限定的であった難治性過活動膀胱*2)の症例において、ETA治療を世界で初めて実施し、尿意切迫感や夜間頻尿の改善を確認しました。

 岡山大学学術研究院医療開発領域(岡山大学病院 腎泌尿器科)の定平卓也研究准教授、同領域(岡山大学病院 新医療研究開発センター)の渡部昌実教授らの研究グループは、難治性過活動膀胱に対して、膀胱三角~膀胱頸部を標的に、ボツリヌストキシン*3)を膀胱粘膜表面へ内視鏡下で直接塗布し浸透させる新規の頻尿治療法『Endoscopic Topical Application(ETA)治療』を開発し、世界で初めて臨床応用した症例(First-in-Human)を報告しました。本報告は、従来のボツリヌストキシン膀胱壁内注射では十分に改善が得られない尿意切迫感や夜間頻尿が残存する症例に着目し、膀胱三角から膀胱頸部に密集する表在性求心性感覚神経ネットワーク(尿意の感覚過敏の起点となり得る領域)を、選択的かつ直接制御するという新しい治療戦略を提示した、世界初の臨床報告です。ETA頻尿治療は、薬剤を尿で希釈されずに標的部位へ持続的に作用させる点に特徴があり、排尿や蓄尿の感覚の制御という新たな視点から過活動膀胱治療のパラダイムシフトにつながる可能性を示しています。今後は、臨床現場における適応拡大と症例の継続的な集積を通じて、実臨床への展開を加速させていくことが期待されます。
 本報告は、2026年1月9日に、米国誌『Cureus』にてオンライン公開されました。
◆研究者からひとこと
過活動膀胱の診療において、薬物療法や既存の侵襲的治療を行っても、尿意切迫感や夜間頻尿が残存し、日常生活に支障をきたす患者さんが少なくないことを常に課題として感じてきました。そうした臨床的な疑問を出発点に、尿意の感覚入力が最も強く関与すると考えられる領域に注目し、これを直接治療するという新しい治療概念を臨床で検証しました。ETA治療は、従来の治療では十分に制御できなかった尿意の感覚に対し、感覚神経ネットワークそのものへアプローチする可能性を示した点に特徴があります。今後は、難治性過活動膀胱に対する実用的な治療選択肢としての位置づけを明確にしていきたいです。


定平卓也 研究准教授
本報告は、日常診療の中で多くの患者さんが訴える『強い尿意や頻尿』、そして『夜間頻尿に伴う寝不足』など生活の質の低下に対し、その背景にある感覚機構を臨床的に捉え直した成果です。従来の治療で十分な改善が得られない頻尿症例において、膀胱三角から膀胱頸部にかけての感覚神経ネットワークを治療標的とするという発想が、実際の症状改善につながる可能性を示せたことは大きな意義があると考えています。今後、臨床現場での症例集積を進めながら、ETA頻尿治療が難治性過活動膀胱に対する新たな解決策となるよう取り組んでいきます。また、世界中の難治性頻尿・夜間頻尿の患者さんの症状改善に貢献できるよう、ETA頻尿治療を実臨床に定着させていきます。


渡部昌実 教授
過活動膀胱の治療において、排尿筋の収縮を抑えるアプローチはすでに確立されています。しかし、筋肉の動きを止めてもなお、強い尿意や夜間頻尿に苦しみ続ける、出口の見えない治療を余儀なくされている患者さんが少なくありません。今回のETA治療の成果は、従来の『筋肉を抑える』治療から、『感覚を整える』頻尿知覚治療へと、難治性過活動膀胱の治療戦略を大きく転換させるものです。長年、安全上の理由から踏み込めなかった膀胱三角周辺という知覚の聖域へ、低侵襲な手法でアプローチを可能とした意義は極めて大きく、これまでの標準治療では救いきれなかった方々への福音となると確信しています。


渡邉豊彦 教授
標準治療で限界があった難治性過活動膀胱に対し、頻尿知覚の制御へと切り込む世界初の革新的な低侵襲治療であるETA頻尿治療を、私たちの腎泌尿器科学教室から世界へ発信できることを誇りに思います。


荒木元朗 教授

論文情報

論 文 名:Endoscopic Topical Application (ETA) Therapy for Refractory Overactive Bladder: A First-in-Human Report
掲 載 誌:Cureus
著  者:Takuya Sadahira, Masahiro Sugihara, Yosuke Mitsui, Toyohiko Watanabe, Motoo Araki, Masami Watanabe
D O I:https://doi.org/10.7759/cureus.101143

<詳しい研究内容について>
ETA治療(Endoscopic Topical Application)による難治性過活動膀胱の症状改善を確認~大学発の新規治療を世界で初めて実施した症例報告~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医療開発領域(岡山大学病院腎泌尿器科)
研究准教授 定平卓也
(電話番号)086-235-7287 (FAX)086-231-3986