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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年1月16日

\活発な転写が要因!/ 転写が染色体異常を起こすメカニズムを発見

セントロメア領域で染色体異常が起こるしくみ

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
染色体異常が多発するガンなどの遺伝性疾患の治療法に対する新たなアプローチに期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
生物学工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
遺伝性疾患/持続可能/持続可能な開発/制御工学/変異株/クロマチン構造/微生物/ヘテロクロマチン/分裂酵母/セントロメア/免疫沈降/クロマチン/染色体/反復配列/RNA/細胞死/転写制御/ゲノム/遺伝学/抗体/染色体異常
2026-1-13●生命科学・医学系全学教育推進機構教授中川 拓郎

発表のポイント

染色体のセントロメア領域で転写が活発に起きると、RNAが鋳型DNAと安定結合してRループが蓄積し、組換え酵素Rad52蛋白がRループをADRループに変換することで染色体異常を起こすことを発見。
ヘテロクロマチンによる転写制御は染色体異常の抑制に重要だが、セントロメア領域の転写が染色体異常を引き起こす分子メカニズムは不明であった。
染色体異常が多発するガンなどの遺伝性疾患の治療法に対する新たなアプローチに期待。

発表概要

大阪大学大学院理学研究科のXU Ranさん(博士後期課程)と中川拓郎教授(全学教育推進機構)らの研究グループは、大阪大学微生物病研究所の元岡大祐講師、東京科学大学総合研究院細胞制御工学研究センターの岩﨑博史教授、坪内英生助教との共同研究により、染色体のセントロメア領域の転写が染色体異常を起こす分子メカニズムを明らかにしました。
染色体のセントロメア領域は、高度に凝縮したヘテロクロマチン構造を形成することで転写が起こりません。このヘテロクロマチンによる転写阻害は染色体異常の発生を抑制します。よって、ヘテロクロマチンが正常に形成されない変異株では、セントロメア領域で転写が起きることで染色体異常が引き起こされます。染色体異常は細胞死やガンなどの遺伝性疾患の原因となりますが、セントロメア領域の転写が染色体異常を起こす分子メカニズムは解明されていません。
今回、研究グループは、分裂酵母を用いてDNA:RNAクロマチン免疫沈降(DRIP)を行いました。その結果、セントロメア領域では転写の進行停止(Pause)、後退(Backtrack)、再開(Restart)が繰り返される転写のPBRサイクルによりRNAがDNAと安定結合したRループが蓄積することを明らかにしました(図1)。また、精製Rad52蛋白と人工合成したRループを用いた生化学実験により、Rad52蛋白がRループと相補的な1本鎖DNAとの結合を促進して新規中間体ADRループを形成することで(図2)、染色体異常を引き起こすことを明らかにしました(図3)。
本研究の成果により、Rループの形成機構、また、Rループによる染色体異常の発生機構が解明されました(図3)。ADRループの形成を制御することで、染色体異常が多発するガンなどの遺伝性疾患の治療に新たな可能性が見出されました。
本研究成果は、国際科学誌「Nucleic Acids Research」に、1月13日(火)9時01分(日本時間)に公開されました。



図1. DRIP-Seq法によるRループの検出

研究の背景

染色体のセントロメア領域では転写が起きると染色体異常が発生します。染色体異常は細胞死やガンなどの遺伝性疾患の原因となります。しかし、どのようにしてセントロメア領域の転写が染色体異常を起こすのかは明らかになっていませんでした。

研究の内容

研究グループは、DNA:RNAハイブリッドに特異的に結合するS9.6抗体を利用してDNA:RNAクロマチン免疫沈降(DRIP)を行いました。その結果、分裂酵母では、セントロメア領域で転写のPBRサイクルが起きるとRループが蓄積し、このRループの蓄積が染色体異常を引き起こすことを明らかにしました(図1)。
分裂酵母の変異株を用いた遺伝学的解析により、組換え酵素Rad52がRループによる染色体異常の発生に関与することを明らかにしました。精製Rad52蛋白と人工合成したRループを用いた生化学的解析により、Rad52蛋白がRループと相補的な1本鎖DNAの結合(アニーリング)を促進することで、今回新たに検出した中間体Annealing-induced DNA-RNA loop(ADRループ)を形成することを発見しました(図2)。



図2. Rad52蛋白によるADRループの形成

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、転写のPBRサイクルとADRループ形成により染色体異常が起きることが明らかになりました(図3)。Rループは染色体異常などのゲノム不安定化を誘導するだけではなく、生理的に重要な転写を調節する役割も報告されています。今後、本研究により発見したADRループの物理的また機能的特徴をより詳細に解析することで、セントロメア反復配列を介した染色体異常の発生メカニズムが解明されることが期待されます。また、染色体異常が多発するガンなどの遺伝性疾患の新たな治療法の開発が期待されます。



図3. セントロメア領域における転写のPBRサイクルによるRループの形成とRad52によるADRループ形成が染色体異常を引き起こす

特記事項

本研究成果は、2026年1月13日(火)9時01分(日本時間)に国際科学誌「Nucleic Acids Research」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Transcriptional PBR cycles at pericentromeric repeats cause gross chromosomal rearrangements through Rad52-dependent ADR-loop formation”
著者名:Ran Xu, Crystal Tang, Jianfang N. Wang, Daisuke Motooka, Hideo Tsubouchi, Hiroshi Iwasaki, and Takuro Nakagawa
DOI:https://doi.org/10.1093/nar/gkaf1455
なお、本研究は、JSPS科研費「転写による染色体異常の発生メカニズム(JP21H02402)」、「セントロメア領域で起きる染色体異常の発生メカニズム(JP25K09511)」、上原記念生命科学財団 研究助成金「セントロメア領域の転写による染色体異常の発生機構(202120462)」の一環として行われ、JSPS科研費(JP18K06060,JP18H02371,JP23H02409,JP22H00404)、武田科学振興財団 生命科学研究助成、JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2138)、豊中ロータリークラブの支援により実施されました。

参考URL

中川拓郎 教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/b7a3ec3c230772e0.html

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