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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年1月9日

\AIがナノロボットを創る?!/ AI×走査型プローブ顕微鏡で単原子を室温で操作

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
原子レベルでのデバイス動作検証や単原子レベルでの化学反応制御をはじめ、ナノテクノロジー、材料科学、生命科学、量子工学といった幅広い分野において、従来の技術では到達困難であった革新的な知見や技術創出をもたらすことが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学数物系科学化学総合理工工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
画像認識/言語モデル/人工知能(AI)/熱揺らぎ/揺らぎ/構造形成/プローブ顕微鏡/原子操作/材料科学/超高真空/反応制御/シリコン表面/持続可能/分光測定/持続可能な開発/局所構造/原子配列/シリコン/ナノスケール/ロボット/極低温/自動化/自動計測/酵素反応/ナノテクノロジー/プローブ/ラット
2026-1-5●工学系基礎工学研究科教授阿部 真之

発表のポイント

AIが実験研究をするための新技術を走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscopy; SPM)に組み込みこむことで、室温原子操作実験を、AIの自律的な計測により代替できる自動化システムを世界で初めて実現
分光測定や原子操作実験では、高度な技術と精密な制御が必要なことや限られた環境で研究を行うという課題があり、だれもが実験を行える状況ではなかった
AIによる大規模の原子操作へ展開させることにより, 原子レベルで表面を自由に組み立てるAtomic-level Manufacturing技術の実現プラットフォームとなることに期待

発表概要

大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻 DIAO ZHUO(刁琢)助教、奥山純矢さん(研究当時:大学院博士前期課程)、同研究科附属極限科学センター 阿部真之教授らの研究グループは、AIの手法を走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscopy; SPM)に組み込み、自律的に試料表面の単一原子を動かすことや取り上げることを可能にする技術を開発しました。
AIが測定試料表面の状態を原子レベルで把握し、測定装置自身の状態を判断しながら、必要に応じて修正や調整を行い、自律的に個々の単原子を操作します。これまでのいわゆる自動計測とは異なり、人間に代わりAIが実験研究をする新技術です(図1)。
従来、室温環境での原子操作は熱揺らぎの影響により極めて困難でしたが、本技術ではAIが連続的に状況を判断・対応することで、室温でのシリコン表面上に存在するAg原子の移動やピックアップに成功しました。また、AIによる長時間の連続運転により、今後は、人手では不可能であった複雑な原子レベルのパターンの作製や、取得困難な大規模データの収集が可能となり、人間の能力を超えた実験の実現が可能となります。
今後、この手法を様々なSPM測定に応用することで、原子レベルでのデバイス動作検証や、単原子レベルでの化学反応の誘起・観察など、従来のアプローチでは不可能だった新しい発見や原理の解明につながると期待されます。本技術は、原子レベルの精密な研究をより効率的かつ再現性の高いものへと変革し、ナノテクノロジー研究をさらに発展させるものです。
本研究成果は、12月16日(火)米国科学誌「Nano Letters」のオンライン版で公開されました。



図1. (上)走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いたAtomic-level Manufacturingの概念、(下)AI-SPMによる原子操作実験。

研究の背景

走査型プローブ顕微鏡 (SPM)は、ナノスケールから原子レベルまで表面観察が可能な、科学や工学の分野における必須の測定装置です。SPMを用いると、単一の原子や個々のクラスター、局所構造の物性の評価を行うこと(分光測定)や個々の表面原子を動かすことや引き抜くこと(原子操作)など、他の装置にはない画期的な実験環境を提供します。
しかし、分光測定や原子操作実験では、高度な技術と精密な制御が必要であり、極めて微小なスケールでの操作が要求されることや、環境からの振動や熱的揺らぎの影響を受けやすいため、限られた環境(例えば極低温や超高真空)での研究が一般的でした。さらに、高度な実験技術を必要とするため、だれもが実験を行える状況ではありませんでした。
本研究グループでは、高度DX化したSPM装置を構築し, これをベースにAIによる自律的なSPM実験(https://doi.org/10.1002/smtd.202400813)や、大規模言語モデルによるSPM実験(https://doi.org/10.1088/1361-6501/adbf3a)といった、新しい実験システムについて発表してきました。

研究の内容

研究グループでは、AIの手法をSPMに組み込んだ自律原子操作システムを開発しました。このシステムの最大の特徴は、AIが人間に代わって原子レベルの実験を自律的に遂行できる点にあります。具体的には、AIが試料表面の状態を画像認識により原子レベルで把握し、探針の状態や装置のコンディションを常に判断しながら、必要に応じて修正や調整を行い、単一原子の操作を実行します。
特筆すべきは、従来極めて困難とされてきた室温環境での原子操作を実現した点です。室温では熱揺らぎにより原子が不規則に動くため、人間による手動操作では安定した原子操作がほぼ不可能でした。本システムでは、AIが瞬時に状況を判断し連続的に対応することで、この課題を克服しました。実際に研究グループでは、シリコン表面上に吸着したAg原子を狙った位置へ移動させたり、表面から取り上げたりすることに成功しています。
さらに、AIによる長時間の連続自律運転により、人手では到底実現できなかった大規模な実験データの取得が可能となりました。加えて、複雑な原子配列パターンの作製など、高度な精度と忍耐力を要する作業もAIが担うことで、人間の能力を超えた実験が実現します。この技術は、原子レベルでのデバイス動作検証や単原子レベルでの化学反応制御など、ナノテクノロジー研究の新たな可能性を切り拓くものと期待されます。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

原子レベルの実験において、室温(有限温度)環境での研究は極めて重要な意味を持ちます。タンパク質の機能発現や酵素反応などバイオ分野の現象、また熱揺らぎが引き起こす表面化学反応や原子拡散の動的過程など、実際の応用や自然現象の本質的な理解には有限温度での原子レベル実験が不可欠です。本技術により、これまで技術的制約から困難であった室温での原子操作実験が可能となり、これらの重要な研究領域への道が開かれました。
また、AIによる自律実験は、研究者を単調で長時間にわたる手作業から解放し、より創造的な研究活動に集中することを可能にします。さらに、本成果は原子操作を基盤とする Atomic-level Manufacturingの実現に向けた重要なデモンストレーションとなり、原子一個単位での構造形成・機能設計・動作検証を効率よく実行する道を拓きます。将来的には、原子レベルでのデバイス動作検証や単原子レベルでの化学反応制御をはじめ、ナノテクノロジー、材料科学、生命科学、量子工学といった幅広い分野において、従来の技術では到達困難であった革新的な知見や技術創出をもたらすことが期待されます。

特記事項

本研究成果は、12月16日(火曜日)米国科学誌「Nano Letters」(オンライン)で公開されました。
タイトル:“Integrated AI Framework for Room-Temperature Atom Manipulation in Scanning Probe Microscopy”
著者名:Junya Okuyama, Zhuo Diao, Hayato Yamashita, Masayuki Abe
DOI:https://doi.org/10.1021/acs.nanolett.5c04982

参考URL

阿部真之教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/6c8472101ddc0854.html

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