
活性アルデヒドによるT細胞代謝変化と疲弊化の機序解明
―活性アルデヒド蓄積が引き起こす免疫不全の解明―
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | この代謝的悪循環を断つ新たな治療戦略をPD1阻害療法と組み合わせることで、がん免疫療法のさらなる効果向上が期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
有害物質/CD8/アルデヒド/免疫不全/T細胞疲弊/がん免疫/がん免疫療法/抗腫瘍免疫/微小環境/解糖系/腫瘍微小環境/免疫療法/T細胞/エネルギー代謝/ミトコンドリア/細胞代謝/脂肪酸/腫瘍免疫/脂質
この研究の主な対象者企業・研究者の方
公開日
概要
茶本健司 医学研究科教授、白康晴 同博士課程学生、北岡功次 同博士課程学生らの研究グループは、がん免疫療法の効果を発揮する腫瘍内CD8+T細胞が疲弊してしまう要因を、細胞エネルギー代謝の視点から解析しました。T細胞の機能は、分化の促進につながる解糖系と、長期生存に有利な脂肪酸酸化(FAO)のバランスによって保たれていますが、疲弊T細胞でこの均衡がどのように破綻するのかは未解明でした。本研究グループは、腫瘍内最終疲弊T細胞が解糖系に過度に依存し、FAOが大きく低下した「代謝的疲弊」に陥っていることを明らかにしました。その背景には、FAO低下が引き起こす脂質過酸化と、それによって生じる有害物質「活性アルデヒド」があります。活性アルデヒドはミトコンドリアから産生され、FAOを阻害して解糖系依存性をさらに強める悪循環が存在することを突き止めました。活性アルデヒドの蓄積はT細胞疲弊を加速させ、分化を促進し抗腫瘍免疫を著しく弱めることも示されました。また、活性アルデヒドや脂質過酸化を抑制する薬剤がPD1阻害療法の効果を増強することも確認されました。今後、この代謝的悪循環を断つ新たな治療戦略をPD1阻害療法と組み合わせることで、がん免疫療法のさらなる効果向上が期待されます。本研究成果は、2026年1月7日に、国際学術誌「Nature Immunology」にオンライン掲載されました。

研究者のコメント
「腫瘍内T細胞の疲弊化メカニズムを解明する過程では、多くの試行錯誤と困難がありましたが、代謝的悪循環を突き止め、PD1阻害療法と組み合わせた新しい治療戦略の可能性を示せたことは大きな喜びです。今後は、より多様な腫瘍タイプでの検証を進め、がん免疫療法の効果向上に貢献したいと考えています。」(茶本健司)
詳しい研究内容について
活性アルデヒドによるT細胞代謝変化と疲弊化の機序解明―活性アルデヒド蓄積が引き起こす免疫不全の解明―研究者情報
研究者名 茶本 健司京都大学 教育研究活動データベース 研究者名 白康 晴 Researchmap 研究者名 Koji Kitaoka ORCID
書誌情報
【DOI】https://doi.org/10.1038/s41590-025-02370-w
【書誌情報】
Yasuharu Haku, Koji Kitaoka, Koki Ichimaru, Tomoko Hirano, Jun Wang, Kazuhiro Sonomura, Asuka Maruo, Shuhei Hirose, Yu Wang, Katsuhiro Ito, Tomohiro Kozuki, Keiko Yurimoto, Mai Kiyono, Hidetaka Kosako, Toshi Menju, Hiroshi Date, Takashi Kobayashi, Koichi Omori, Tomonori Yaguchi, Tasuku Honjo, Kenji Chamoto (2026). Active aldehydes accelerate CD8⁺ T cell exhaustion by metabolic alteration in the tumor microenvironment.Nature Immunology.
京都大学 研究