
近視、強度近視では緑内障手術を要するリスクが最大約4倍に上昇
―1400万人追跡調査で判明―
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 将来の緑内障診療のあり方を変え、失明予防につながる礎となることを期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
この研究の主な対象者企業・研究者の方
公開日
概要
日本人の多くが抱える「近視」が、失明原因の上位を占める緑内障の、特に手術を要するリスクを最大4倍に高めることが明らかになりました。近視は世界的に増加している代表的な眼科疾患で、様々な眼合併症との関連が指摘されています。中でも、日本の失明原因の第一位を占める緑内障との関連は古くから研究が進められており、近視患者において緑内障が多いことはよく知られています。しかし、「近視の程度によって、将来的にどの程度緑内障を発症しやすいのか?」について大規模なデータを用いて長期間検証した研究はほとんどなく、「手術が必要になるほど重症化もしやすいのか?」を検証した研究はありませんでした。
三宅正裕 医学研究科特定講師、赤田真啓 同博士課程学生、辻川明孝 同教授らの研究グループは、厚生労働省が管理する全国の診療報酬請求データベース(NDB)を用いて、40歳以上で屈折検査を受けた約1,420万人を対象に、約7.5年間追跡する研究を行いました。緑内障のない対象者を非近視、近視、強度近視に分け、緑内障を新たに発症したか、また、緑内障の手術を受けるに至ったかを調べたところ、強度近視の人は近視のない人に比べ、将来の緑内障の発症リスクが約2.7倍高いだけでなく、進行した緑内障に対する手術(濾過手術)を受けるリスクが約4倍に達することが判明しました。本研究は、近視、とりわけ強度近視の人に対する、緑内障の早期発見・早期治療の重要性を強く示唆する重要な知見といえます。
本研究成果は、2026年1月5日に、国際学術誌「Ophthalmology」にオンライン掲載されました。

研究者のコメント
「近視は世界的に増加しており、中でも東アジアにおいて顕著です。ですが、近視は⾝近な病態であるにも関わらず、その仕組みや原因は⼗分に解明されていません。私たちのグループは、疫学研究、ゲノム疫学研究、臨床研究といった多様な観点から近視や強度近視の研究を進めてきました。本研究はその⼀環となります。
本研究で用いたNDB(ナショナルデータベース)には、日本国内の保険診療で行われた手術情報がほぼ全て集約されています。つまり、手術というアウトカム(結果)の評価において、これ以上ない網羅性と信頼性を持つデータです。一方で、レセプト上の『病名』については、必ずしも医学的に正確な状態を反映していない可能性があるという課題がありました。そこで私たちは、NDBの強みである手術データの網羅性を活かしつつ、課題である病名の正確性を担保するために、複数の医療機関の電子カルテ調査による徹底した精度検証(バリデーション)を行い、病名の正確性を確認しました。
『手術データの悉皆性』と『検証された病名精度』。この両輪が揃ったことで、1,400万人という規模でかつてない規模の解析が可能となりました。本研究で示された事実が、将来の緑内障診療のあり方を変え、失明予防につながる礎となることを期待しています。」
詳しい研究内容について
近視、強度近視では緑内障手術を要するリスクが最大約4倍に上昇―1400万人追跡調査で判明―研究者情報
研究者名 三宅 正裕京都大学 教育研究活動データベース 研究者名 赤田 真啓 Researchmap 研究者名 辻川 明孝
京都大学 教育研究活動データベース
京都大学 研究