【研究成果】 ヘムの存在を記録する
-ヘム依存的なラベル化反応で、細胞・組織でのヘム分布を明らかにする
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | Mito-m-NEt2-Noxはヘムの生命現象を解明するための有用なツールとして貢献することが期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
水溶液/キノン/生細胞/アミン/NOx/光プローブ/生体内/リン酸/輸送体/ウシ/生合成/シークエンス/生体組織/血清/細胞毒性/細胞内シグナル/RNA/RNAシークエンス/アルブミン/イミン/グリア/スクリーニング/プローブ/ヘモグロビン/ポルフィリン/マウス/ミクログリア/官能基/蛍光プローブ/血液/細胞・組織/生体分子/体内動態/代謝酵素/薬物代謝/薬物代謝酵素/ストレス/酸化ストレス
研究教育成果
発表概要
鉄とポルフィリンの複合体であるヘムは、血液中に含まれるヘモグロビンや薬物代謝酵素CYP450など様々なタンパク質に結合し、活性中心として生理的に重要な機能を担うことが知られています。一方で、タンパク質に結合していないヘム(遊離ヘム)も知られており、遊離ヘムは主に細胞内シグナル伝達に関与することや、過剰に存在する場合に酸化ストレスによる細胞毒性を示すことが報告されています。以上のように、ヘムは生命現象に深く関わる生体内化学種ですが、ヘムの輸送体やトランスポーター等、ヘムの細胞内・生体内動態は現在も不明な点が多く、ヘムの細胞内・生体内挙動を可視化できる強力なヘム検出ツールの開発が望まれています。当研究室では、第三級アミン-N-オキシドが二価鉄ないしはヘム鉄と選択的に反応することを化学的スイッチとして利用し、生細胞内で二価鉄およびヘム鉄を検出可能な蛍光プローブを開発してきました。本研究では、このN-オキシド化学を拡張し、ヘム存在下で生体分子(タンパク質等)をラベル化する反応へと導くことで、生体組織に適用可能なヘム検出蛍光ラベル化剤を創出し、生体組織でのヘムイメージングを実現しました。
はじめに、スクリーニング的調査により、N-オキシドを駆動力としてヘムを活性化し、タンパク質をラベル化する構造要件 (m-フェニレンジアミン-N-オキシド: PDANO)を見出しました(図1a)。PDANOに検出用の蛍光団を導入したm-NEt2-Noxを用いて、水溶液中でタンパク質(ウシ血清アルブミン:BSA)のラベル化反応を実施したところ、ヘム存在下でのみラベル化反応が進行し、ヘム以外の金属種や生体内に存在する酸化・還元化学種ではラベル化反応は進行しないことが明らかになりました(図1b)。また、メカニズム解析により、N-オキシドがヘムを活性化し、続いて生成する1,4-キノンイミンが生体分子の求核性官能基(タンパク質のリシン残基等)と反応することで、本ラベル化反応が進行することを明らかにしました(図1c)。

次に、PDANO構造を基盤として、イメージング用分子として設計したMito-m-NEt2-Nox (図2a)をマウスの脳組織イメージングに適用したところ、ヘム合成誘導群(5-アミノレブリン酸経口投与群)において、顕著な蛍光シグナルの増大を確認し、脳内における遊離ヘムの濃度変動を可視化することに成功しました(図2b)。同様に、組織透明化技術を用いた三次元イメージングにも適用できることが示されました。さらに、Mito-m-NEt2-Nox 陽性細胞種を同定するため、シングルセル RNAシーケンス解析を実施しました。その結果、5-アミノレブリン酸の経口投与によるヘム濃度の増大によって、 主に C1q陽性ミクログリアが染色されていることが示唆されました(図2c)。

本研究成果のポイント・今後期待される成果
N-オキシド化学をヘムの活性化と生体分子の修飾反応へと拡張し、ヘムの三次元イメージングやシングル RNAシークエンス解析に適用可能な蛍光分子Mito-m-NEt2-Noxを開発しました。
本研究成果は、小分子ケミカルツールを活用して、マウス脳内で生合成されたヘムを検出した最初の例です。
本研究で提供するヘム検出ツールMito-m-NEt2-Noxを活用することで、ヘムが豊富な細胞を選択的に単離できる可能性が示され、Mito-m-NEt2-Noxはヘムの生命現象を解明するための有用なツールとして貢献することが期待されます。
論文情報
雑誌名:Journal of the American Chemical Society論文名:N-Oxide-Driven Heme-Activatable Biomolecule Labeling for Visualization of Labile Heme in Living Cells and Mouse Brain
著者:Ryo Kakiuchi, Tadanori Fukaya, Satomi Tamakoshi, Shohei Tsuji, Honoka Fujimori, Masamitsu Shimazawa, Tomonori Tamura, Itaru Hamachi, Takeru Ochi, Hiroko Matsunaga, Haruko Takeyama, Hideko Nagasawa, Tasuku Hirayama
DOI番号:10.1021/jacs.5c04990
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.5c04990
研究室HP
https://yakka-gifu-pu.jp/
岐阜薬科大学 研究