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大阪大学 研究Discovery Saga
2025年12月10日

世界初!魚の卵を用いて ノロウイルスの人工合成に成功

新規ノロウイルスワクチン・治療薬の開発を加速する新手法確立

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
簡便な抗ウイルス薬の評価、病原性や抗原性を制御した新規ワクチン開発が可能になり、治療法・予防法開発のスピードの向上に期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
複合領域化学生物学工学総合生物農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
シナジー/化学発光/クローン/マイクロインジェクション/持続可能/ノロウイルス/持続可能な開発/マイクロ/遺伝子改変/診断法/プラスミド/リバースジェネティクス/病原性/微生物/ウイルス学/小型魚類/cDNA/寿命/オルガノイド/RNA/抗ウイルス薬/抗原/抗体医薬/迅速診断/腸炎/培養細胞/ウイルス/ゲノム/ワクチン/異分野融合/遺伝子/疫学/疫学調査/感染症/健康寿命/抗体/生理学
2025-12-2●生命科学・医学系微生物病研究所教授小林 剛

発表のポイント

ゼブラフィッシュ卵(胚)を用いることで、ノロウイルスの人工合成に世界で初めて成功
ウイルス学と小型魚類モデル研究の異分野融合により、長年の課題をついに克服
任意の変異を自在に導入し、発光タンパク質を発現するウイルスなど、従来技術では困難であった様々な遺伝子改変ノロウイルスの作製に成功
本技術により簡便な抗ウイルス薬の評価、病原性や抗原性を制御した新規ワクチン開発が可能になり、治療法・予防法開発のスピードの向上に期待

発表概要

大阪大学微生物病研究所の小瀧将裕助教、龝枝佑紀助教、石谷太教授、小林剛教授らの研究チームは、和歌山県立医科大学、大阪健康安全基盤研究所との共同研究により、小型魚類(ゼブラフィッシュ)を用いてヒトノロウイルス(ノロウイルス)の人工合成に世界で初めて成功しました(図1)。この技術により、ノロウイルスのゲノムを任意に改変することが可能となり、ウイルスの増殖機構の解明や新規ノロウイルスワクチンの開発研究が飛躍的に進むと期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」に、12月2日(火)午前5時(日本時間)以降に公開されました。



図1. ゼブラフィッシュ胚を用いたノロウイルス人工合成法

研究の背景

RNAウイルスの人工合成技術は、ウイルスゲノム由来の核酸を培養細胞に導入し、感染性をもつ組換えウイルスを合成する技術で、ウイルス研究では広く活用されています。この技術によりウイルス遺伝子を任意に改変でき、ウイルス学の発展に大きく寄与してきました。ノロウイルスは急性胃腸炎を引き起こすウイルスで、その感染者数や社会的損失の大きさから、最も重要な腸管感染症の原因ウイルスの一つです。しかし、そのワクチンや治療薬の開発は遅れています。その要因として、ノロウイルスでは人工合成法の開発の遅れが挙げられます。近年、ノロウイルスの培養にはヒトの腸の細胞から作ったミニ腸(ヒト腸管オルガノイド)が使われていますが、技術的に難しくコストも高く、ウイルス増殖も効率的とは言えないことが課題でした。そのような中、ゼブラフィッシュという小型魚類がノロウイルスの培養に適していることが報告され、注目を集めていました。

研究の内容

本研究では、ゼブラフィッシュの胚を用いることで、感染性のあるノロウイルスを人工的に作り出すことに世界で初めて成功しました。まず、ノロウイルスゲノム由来cDNAを含むプラスミド(ノロウイルスcDNAクローン)を培養細胞に導入し、培養上清をマイクロインジェクションによりゼブラフィッシュ胚に注入することでウイルスの作製に成功しました(図2)。



図2. 培養細胞とゼブラフィッシュ胚を組み合わせたノロウイルス人工合成法
これは、培養細胞とゼブラフィッシュ胚を組み合わせることで、感染性ノロウイルスの産生を実証した重要な成果です。さらに、培養細胞を介さずにゼブラフィッシュの胚に直接ノロウイルスcDNAクローンをマイクロインジェクションにより注入するという新しい手法を確立し、より高効率かつ簡便にノロウイルスを作製できることを示しました(図1)。
今回の技術は、魚の胚の中でノロウイルスのようなヒトに病気を引き起こすウイルスを作るという、これまでにない新しい方法です。この技術を用いて、任意の変異を導入したウイルスや、化学発光タンパク質遺伝子を含むウイルスの作製にも成功しました(図3)。



図3. 発光するノロウイルスの作製

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、ノロウイルスの増殖機構の解明と新規ワクチン開発研究が飛躍的に進展することが期待されます。ノロウイルスゲノムに任意の変異を導入できるようになったことで、ウイルス複製に重要な遺伝子を同定することが可能となります。得られた情報に基づき、増殖性や病原性を弱めたウイルスを作製することが可能となり、新規ワクチンとしての応用が期待されます。さらに、本技術を用いて感染に伴って発光するノロウイルスの作製にも成功しました。このようなウイルスを用いることで、ウイルス感染量を簡便に可視化・定量化でき、抗ウイルス活性の評価が容易となるため、抗ウイルス薬の開発を大幅に加速させることが期待されます。

特記事項

本研究成果は、2025年12月2日(火)5時(日本時間)以降に米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Recovery of Infectious Recombinant Human Norovirus Using Zebrafish Embryos”
著者名:Tomohiro Kotaki, Yuki Akieda, Zelin Chen, Megumi Onishi, Sayuri Komatsu, Daisuke Motooka, Hiroko Omori, Shigeyuki Tamiya, Yuta Kanai, Shohei Minami, Takahiro Kawagishi, Naomi Sakon, Shintaro Sato, Tohru Ishitani, and Takeshi Kobayashi
DOI:10.1073/pnas.2526726122
なお、本研究は、日本医療研究開発機構 (AMED) 革新的先端研究開発支援事業 「革新的リバースジェネティクスを駆使した新たなウイルス学研究の創出」(22gm1610008), 「健康寿命の個体差・性差の分子基盤の理解と予測技術の創出」(24gm2010001)、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「疫学調査と流行動向変化に基づいた、下痢症ウイルスに対する革新的粘膜ワクチン、抗体医薬、迅速診断法、およびインビトロ評価系の開発」(23fk0108668)、新興・再興感染症研究基盤創生事業 「タイ王国における下痢症ウイルスに関する研究」(20wm0225006), 「日本・タイ感染症共同研究拠点における新興・再興感染症の基礎研究の推進」 (22wm0125010)、日本医療研究開発機構 先進的研究開発戦略センター(AMED SCARDA)ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点群大阪府シナジーキャンパス(大阪大学ワクチン開発拠点)」(JP223fa627002)、科学技術振興機構 (JST) ムーンショット型研究開発事業「ウイルス-人体相互作用ネットワークの理解と制御」(JPMJMS2025)、セコム科学技術振興財団の支援を得て行われました。
また、和歌山県立医科大学・薬学部・病態生理学研究室 佐藤慎太郎教授、大阪健康安全基盤研究所 左近直美主幹研究員の協力を得て行われました。

参考URL

大阪大学微生物病研究所 小林 剛 教授
https://www.biken.osaka-u.ac.jp/researchers/detail/21
大阪大学微生物病研究所 ウイルス免疫分野
https://www.biken.osaka-u.ac.jp/laboratories/detail/16

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