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札幌医科大学 研究Discovery Saga
2025年12月3日

抗がん剤による末梢神経障害に対して、ミロガバリンが有効である可能性を確認

— 手指の痛みやしびれを軽減し、治療継続を支援 —

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
抗がん剤に伴う苦痛を軽減し、より長期間の抗がん剤治療継続を可能にすることで、患者さんの予後改善にもつながる可能性が期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学医歯薬学
【Sagaキーワード】
メタアナリシス/感覚神経/腫瘍学/神経障害性疼痛/肉腫/末梢神経/大腸/骨髄/多発性骨髄腫/大腸がん/副作用/膵がん/医師/化学療法/抗がん剤/生活の質/糖尿病/臨床研究/疼痛


医学部 内科学講座腫瘍内科学分野 右から:村瀬和幸講師、高田弘一教授、吉田真誠医師(北海道がんセンター)、 平川昌宏講師

概要

札幌医科大学内科学講座腫瘍内科学分野 高田弘一教授、村瀬和幸講師、平川昌宏講師、北海道がんセンター 吉田真誠医師らの研究グループは、化学療法誘発性末梢神経障害(Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy:CIPN)に対して、ミロガバリンが有効かつ安全であることを明らかにしました。本研究は、抗がん剤による副作用に対する新たな治療法の確立につながる成果です。

抗がん剤の多くは、末梢神経障害という副作用を引き起こす事が知られており、CIPNと呼ばれます。主に手足の痛みやしびれを生じ、患者さんの生活の質を著しく低下させるだけでなく、抗がん剤の減量や中止を余儀なくされることもあります。

本研究では、膵がん・大腸がん・軟部肉腫・多発性骨髄腫など多様ながん腫、およびプラチナ系・タキサン系・ビンクリスチン・ボルテゾミブ・エリブリンなど様々な抗がん剤が対象となりました。ミロガバリン治療を開始し、4週間後および8週間後に神経障害の程度を評価した結果、末梢神経障害の症状改善が確認されました。

この成果は、抗がん剤に伴う苦痛を軽減し、より長期間の抗がん剤治療継続を可能にすることで、患者さんの予後改善にもつながる可能性が期待されます。
尚、本研究成果はBMJ Supportive & Palliative Careに掲載されました(2025年12月01日)。

<研究のポイント>
抗がん剤による副作用の一つである末梢神経障害に対するミロガバリンの有効性と安全性を確認。
ミロガバリンは特にタキサン系・ビンクリスチン・ボルテゾミブ・エリブリンによって生じたCIPNに有効。
手指の痛みやしびれの軽減により、抗がん剤治療をより長く継続できる可能性が示唆。

<研究の背景>
CIPNに対する治療法はこれまで確立されていません。米国臨床腫瘍学会および日本癌支持療法学会のガイドラインでは、ランダム化試験のデータに基づき、デュロキセチンのみがCIPNに対して中等度に推奨されています。しかしながら、最近のメタアナリシスでは、デュロキセチンはプラセボと同等の有効性しかない可能性が報告され、より有効な治療法の開発が求められていました。
ミロガバリンは、糖尿病性末梢神経障害性疼痛および帯状疱疹後神経痛の治療薬として承認されています。そのため、CIPN への有用性が示唆されてきましたが、既存研究は症例数が少なく、特定の抗がん剤 (プラチナ系またはタキサン系)に限定されていました。
そこで、本研究では、様々ながん腫および様々な神経毒性抗がん剤によって誘発されるCIPNに対するミロガバリンの有効性と安全性を包括的に評価することを目的としました。

<研究方法>
2019年6月から2023年12月までに札幌医科大学附属病院腫瘍内科で、CIPNに対してミロガバリン治療を受けた100名の患者さんが対象となっています。Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG) 神経感覚スコアを用いて、ミロガバリン治療開始時と4週間後および8週間後に神経障害の程度を評価しました。また、 その間の副作用の発生状況も解析しました。

<研究結果>
100名の患者さんの中で、87名が解析対象となりました。ミロガバリン治療開始時と比較し、4週間後および8週間後で有意な症状の改善を認めました (P < 0.01)(図. 1A)。神経毒性抗がん剤別に評価しますと、プラチナ系では、その効果は限定的でしたが、タキサン系・ビンクリスチン・ボルテゾミブ・エリブリンなどでは有意な症状の改善を認めました (P < 0.05)(図. 1B–D)。


図1. CIPNに対するミロガバリン投与後8週間のECOG神経感覚スコアによる感覚神経障害の評価。(A) 全患者。(B) プラチナ系製剤投与群。(C) タキサン系製剤投与群。(D) その他の製剤 (ビンクリスチン、ボルテゾミブ、またはエリブリン)投与群。CIPNグレードの変化はウィルコクソンの符号順位検定を用いて評価した。CIPN:化学療法誘発性末梢神経障、ECOG:米国東部腫瘍学会
 また、本研究では予期せぬ重篤な有害事象は認めませんでした。

<結論>
ミロガバリンは、様々な神経毒性抗がん剤によって生じるCIPNに対して、安全かつ有効に症状を改善する可能性が示唆されました。これにより、抗がん剤治療の継続性を高め、最終的には患者さんの予後改善にも寄与することが期待されます。

<研究の意義、今後の展開など>
本研究により、ミロガバリンが様々な神経毒性抗がん剤によるCIPNに対して、有効である可能性が示されました。現在、CIPNを患う患者さんにおいても本治療がお役に立てる可能性があります。
現在、当科では「化学療法誘発性末梢神経障害に対するミロガバリンの多施設共同第Ⅱ相試験(UMIN000041467)」という前向き臨床研究を実施中です。今後、更なる検証により、CIPNに対する標準的治療法の確立に貢献できることが期待されます。

<論文情報等>
 論文名:Mirogabalin efficacy and safety for chemotherapy-induced peripheral neuropathy: single-center retrospective observational study
掲載誌:BMJ Supportive & Palliative Care
URL: https://spcare.bmj.com/content/bmjspcare/early/2025/12/01/spcare-2025-005814.full.pdf?ijkey=ViHwXxNU5xCIrOR&keytype=ref
著者:Makoto Yoshida、Kazuyuki Murase、Norito Suzuki、Yutaka Okagawa、Masahiro Hirakawa、Ryo Yokoyama、Tomohiro Kubo、Masahide Yamazaki、Soshi Iwasaki、Hirofumi Ohnishi、Kohichi Takada
DOI: 10.1136/spcare-2025-005814
PMID: 41326198

詳細は、下記のプレスリリース資料をご覧ください。


2025年12月3日発:札幌医科大学プレスリリース(PDF:843KB)