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大阪大学 研究Discovery Saga
2025年12月2日

甲状腺がんに対する放射性ヨウ素治療の効果を検証

甲状腺がん治療の長期予後を見据えた解析

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
甲状腺がん治療の質をさらに向上させる革新的な成果であり、がん治療全般における個別化医療の進展への寄与に期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学医歯薬学
【Sagaキーワード】
最適化/放射性ヨウ素/分子標的療法/予後予測因子/甲状腺/骨転移/死亡率/分子標的/予後予測/画像診断/がん治療/ヨウ素/内分泌/がん患者/医療の質/化学療法/個別化医療/放射線/臨床研究
2025-11-25●生命科学・医学系医学系研究科教授下村 伊一郎

発表のポイント

甲状腺がんに対する放射性ヨウ素治療の予後評価について、画像所見による分類と放射性ヨウ素集積が無増悪生存期間を予測する有意な指標になることを発見。
腫瘍サイズや骨転移が治療効果に影響することや、初回RAI治療後2年以内が追加治療を検討する至適期間である可能性が判明。
甲状腺がん治療の質をさらに向上させる革新的な成果であり、がん治療全般における個別化医療の進展への寄与に期待。

発表概要

大阪大学医学部附属病院 中谷理恵子さん(研究当時:医員)、大学院医学系研究科 渡部直史 講師(放射線医学)、下村伊一郎 教授(内分泌・代謝内科学)、福原淳範 寄附講座准教授(肥満脂肪病態学)らの研究グループは、甲状腺がんに対する放射性ヨウ素治療の予後評価について、画像所見による分類と放射性ヨウ素集積領域を評価することで、無増悪生存期間を予測する有意な指標になることが判明しました。
研究グループは、大阪大学医学部附属病院にて2010年から2021年にかけて甲状腺全摘術後に放射性ヨウ素治療を受けた290名の甲状腺がん患者の臨床記録を用いて、放射性ヨウ素全身シンチグラフィと他の画像検査を組み合わせた分類を行い、生存期間を評価しました。
その結果、無増悪生存期間を予測する有意な指標になることを発見したほか、腫瘍サイズや骨転移が治療効果に影響することや、初回RAI治療後2年以内が追加治療を検討する至適期間である可能性が示されました。
本研究は、精密な画像評価と継続的な観察が長期管理に不可欠であることを示しており、特に転移部位が予後に強く影響することを明らかにしました。甲状腺がん治療の質をさらに向上させる革新的な成果であり、がん治療全般における個別化医療の進展に寄与することが期待されます。
本研究成果は、国際専門誌「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism(JCEM)」に、10月15日に公開されました。


研究の背景

分化型甲状腺がんに対する標準治療として、甲状腺全摘術後に放射性ヨウ素を用いた治療が広く行われています。放射性ヨウ素は進行例において全死亡率の改善に寄与し、特に遠隔転移を伴う症例に対して有効とされています。放射性ヨウ素治療の効果は、病変への集積性に強く依存し、全生存期間や無増悪生存期間に大きな影響を与えることが知られています。
甲状腺がんは一般的には予後良好ながら、遠隔転移の有無が予後に大きく関与します。特に肺や骨への転移は注意が必要で、若年者かつ微小肺転移を有する患者では放射性ヨウ素治療による予後改善が期待される一方、大きな肺結節や骨転移、放射性ヨウ素非集積性病変を有する患者では予後不良となる傾向があります。

研究の内容

本研究では、放射性ヨウ素全身シンチグラフィと他の画像検査を組み合わせた所見に基づき、甲状腺がん患者を以下の3群に分類しました:遠隔転移なし(non-DM)、放射性ヨウ素非集積型遠隔転移(RAI-non-avid DM)、および放射性ヨウ素集積型遠隔転移(RAI-avid DM)。
各群において、無増悪生存期間および全生存率を評価した結果、5年および7年生存率は、non-DM群で98%→95%、RAI-non-avid DM群で86%→78%、RAI-avid DM群で82%→82%と推移しました。
さらに、放射性ヨウ素集積領域の平均カウントは、年齢、転移パターン、組織型、腫瘍サイズといった因子とは独立して、無増悪生存期間の有意な予後予測因子であることが明らかとなりました。加えて、初回RAI治療後2年以内が追加治療を検討する至適期間である可能性が示されました。一方で、腫瘍サイズが大きい症例や骨転移を伴う症例では、放射性ヨウ素治療の効果が低下する傾向が認められました。
本成果は、甲状腺がんに対する個別化医療の実現に向けた重要な知見であり、今後の治療戦略の最適化に貢献することが期待されます。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究は、甲状腺がんに対する放射性ヨウ素治療の効果を、初回の画像診断結果と臨床指標を組み合わせることで予測できる可能性を示したものです。この成果は、治療開始前に患者ごとの治療反応を見極める新たな手法の確立に寄与するものであり、今後の研究の進展により、放射性ヨウ素治療に加えて、分子標的療法や化学療法などの治療選択における評価指標としての応用が期待されます。
これにより、甲状腺がん患者様一人ひとりに最適な治療方針を提供するための医療の質の向上と、社会への還元が見込まれます。

特記事項

本研究成果は、2025年10月15日に国際専門誌「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism(JCEM)」に掲載されました。
【タイトル】“Initial evaluation of radioiodine therapy using Imaging for long-term prognosis in thyroid cancer: A retrospective study”
【著者名】中谷理恵子* 1,6, 渡部直史 2, 福原淳範* 1,3, 高野徹 1, 神谷貴史 2,4, 佐々木秀隆 2,4, 倉上弘幸 5, 7, 中田幸子 1, 大月道夫 1, 日高洋 1, 下村伊一郎 1 (*責任著者)
【所属】
1. 大阪大学 大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学
2. 大阪大学 大学院医学系研究科  放射線医学
3. 大阪大学 大学院医学系研究科 肥満脂肪病態学
4. 大阪大学 医学部附属病院 放射線部
5. 奈良県立医科大学附属病院 臨床研究センター
6. 京都府立医科大学 大学院医学研究科 内分泌・代謝内科学
7. 大阪大学 医学部附属病院 未来医療開発部
【DOI】10.1210/clinem/dgaf568