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京都大学 研究Discovery Saga
2025年11月15日

熱力学第3法則を拡張する新たな普遍原理を発見

―「時間・コスト・エラー」間に成立する限界の解明―

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
ナノマシンや量子コンピューターなど、微小な世界での高速・高精度な操作における根本的な性能限界を解明
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
数物系科学生物学工学医歯薬学
【Sagaキーワード】
非平衡/非平衡熱力学/量子コンピュータ/トレードオフ/熱力学/ダイナミクス/ナノマシン
この研究の主な対象者
企業・研究者の方
公開日

概要

Vu Tan Van(ヴー・タンバン)基礎物理学研究所准教授、齊藤圭司 理学研究科教授らの研究グループは、冷却や情報消去など、あらゆる熱力学的な操作において、「所要時間」「熱力学的なコスト」「エラー(誤差)」の間に成り立つ根本的なトレードオフ関係式を発見しました。この成果は、長年にわたり主張が曖昧であった「絶対零度には到達不可能」とする熱力学第3法則が、なぜ、どのように不可能なのかを定量的に示すものであり、第3法則を「時間・コスト・エラー」の観点から一般化・更新するものです。さらに今回の発見は、熱力学第3法則を、従来の冷却過程を超えて、コピー過程を始めとする様々な物理過程に適用可能な一般的な法則として格上げするものです。本成果は、ナノマシンや量子コンピューターなど、微小な世界での高速・高精度な操作における根本的な性能限界を解明するもので、将来の技術設計に不可欠な指針を与えます。
 本研究成果は、2025年11月13日に、国際学術誌「Physical Review X」にオンライン掲載されました。


本研究で導出したトレードオフ関係式の概念図。観測確率をゼロにする熱力学過程では、時間・コスト・エラーの間に普遍的なトレードオフ関係が生じる。代表的な例として、冷却、情報の消去、コピーなどが挙げられる。
研究者のコメント 「熱力学第3法則は非常に基礎的な基本原理でありながら、様々な分野で重要な役割を果たしてきました。それにもかかわらず、非平衡熱力学の分野では、第1法則や第2法則に比べて長年にわたり、厳密で明確な定式化が行われていませんでした。今回の研究で第3法則を厳密に定式化し、それをより幅広い熱力学的操作にまで拡張できたことを嬉しく思います。今後は、これまで扱われてこなかった様々なダイナミクスでもこの法則を一般化し、理解をさらに深めていきたいと考えています。」(Vu Tan Van、齊藤圭司)

詳しい研究内容について

熱力学第3法則を拡張する新たな普遍原理を発見―「時間・コスト・エラー」間に成立する限界の解明―

研究者情報

研究者名 VU Tan Van
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名 齊藤 圭司
京都大学 教育研究活動データベース

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1103/l6b9-rg1j
  【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/297926
  【書誌情報】
Tan Van Vu, Keiji Saito (2025). Time-Cost-Error Trade-Off Relation in Thermodynamics: The Third Law and Beyond.Physical Review X, 15, 4, 041029.

関連部局

基礎物理学研究所 理学部・理学研究科