\電気で“スピン位相”を読み取る!/ スピン流でらせん磁性体のスピン位相を検出
―ナノスケール磁性の新しい読み出し手法を提案―
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 強磁性体の磁化の代わりにらせん磁性体の位相自由度を用いた低消費電力デバイスへの発展に期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
スピン偏極/磁気構造/放射光/磁場/数値シミュレーション/円二色性/磁気モーメント/磁性体/走査型トンネル顕微鏡/磁気円二色性/超高真空/スピンバルブ/スピン流/強磁性/持続可能/持続可能な開発/強磁性体/シミュレーション/スピン/トンネル/ナノスケール/マイクロ/低消費電力/特殊環境/バルブ/ゆらぎ/プローブ
2025年11月6日
工学研究科
プレスリリース
発表のポイント
◇スピン流※1を用いて、らせん磁性体のスピン位相※2を電気的に検出できることを発見◇これまでらせん磁性体のスピン位相の検出には超高真空や放射光施設が必要であったが、表面敏感なスピン流を利用することで実験室において電気的に位相を検出することが可能に
◇強磁性体の磁化の代わりにらせん磁性体の位相自由度を用いた低消費電力デバイスへの発展に期待
概要
大阪大学大学院理学研究科物理学専攻の蒋男助教、新見康洋教授らの研究グループは、東邦大学理学部物理学科の大江純一郎教授、大阪公立大学大学院工学研究科電子物理系専攻の戸川欣彦教授と共同で、スピン流を用いた非局所スピンバルブ※3測定により、らせん磁性体Cr1/3NbS2のスピン位相と磁気ゆらぎを電気的に検出することに世界で初めて成功しました。らせん磁性体は、磁気モーメントがらせん状に配列する特性を持つ新しいタイプの材料で、従来の強磁性体にはない非磁化という特徴から、高集積化が可能で、次世代の情報媒体として期待されます。Cr1/3NbS2は、らせん型の磁気構造を有しており、このらせん磁性体の表面にスピン流を注入すると、主に表面の磁気状態とスピン流が相互作用します。この表面敏感な特性を活かし、らせん磁性体のスピン位相(らせん磁気構造の位相)を電気的に検出しました(図1)。さらに実験結果は、数値シミュレーション(マイクロマグネティックシミュレーション※4)でも再現されました。

図1:(a)スピン位相の模式図

(b)らせん磁性体Cr1/3NbS2を組み込んだ非局所スピンバルブ素子の模式図
これまで試料表面の磁気モーメントの向きであるらせん磁性体のスピン位相の検出には、表面敏感なX線磁気円二色性やスピン偏極走査型トンネル顕微鏡などの特殊環境を要する手法が必要であると考えられており、デバイス応用可能な電気的検出方法については解明されていませんでした。
今回、研究グループは、ファンデルワールス層状らせん磁性体Cr1/3NbS2を非局所スピンバルブ素子に組み込むことにより、スピン流によるらせん磁性体のスピン位相の電気的検出に成功し、大型装置を用いずにスピン位相を読み取れることが示されました。
これにより電気的にナノスケール磁性の「位相」を扱えることが示され、将来的には強磁性体の磁化の代わりにらせん磁性体のスピン位相を情報自由度として活用する低消費電力デバイスへの発展や高集積化につながると期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「Physical Review B」にLetterとして、さらにEditors’ Suggestionとして、11月6日(木)(日本時間)に公開されました。また、APS Physics MagazineにSynopsisとして掲載されました。
掲載誌情報
【発表雑誌】Physical Review B【論 文 名】Spin phase detection by spin current in a chiral helimagnet
【著 者】Nan Jiang, Shota Suzuki, Issei Sasaki, Kazuki Yamada, Ryoma Kawahara, Shintaro Takada, Yusuke Shimamoto, Hiroki Shoji, Yusuke Kousaka, Jun-ichiro Ohe, Yoshihiko Togawa, and Yasuhiro Niimi
【掲載URL】https://doi.org/10.1103/mfrs-6whs
用語解説
※1スピン流:電子は電荷に加えスピン角運動量も持っており、そのスピン角運動量の流れ。典型的な減衰スケール(スピン拡散長)は数nm~数百nmであり、本研究ではらせん磁性体の表面の磁気状態を電気的に読み出すプローブとして用いている。※2 スピン位相:らせん磁気構造の位相で、有限サイズの試料では「試料表面の磁気モーメントの向き」に対応する(図1(a))。
※3 非局所スピンバルブ:電流を流す回路と電圧を検出する回路を分け、スピン流の生成・伝搬・検出を行う手法。従来は2本の強磁性細線を非磁性体(銅など)で架橋した構造をとっているが、本研究では片方の強磁性体をらせん磁性体に置き換えることで(図1(b))、らせん磁性体のスピン位相の検出を行っている。
※4マイクロマグネティックシミュレーション:磁性体のスピン配列や磁化の時間発展を数値的に解く手法。らせん磁性体に磁場を印加した際にどのようなスピン配列になっているか、表面の磁気モーメントの向きがどの方向を向いているかなどを計算することができる。
問い合わせ先
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院工学研究科
教授 戸川 欣彦(とがわ よしひこ)
TEL:072-254-8216
E-mail:ytogawa[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
大阪公立大学 研究
