[Top page] [日刊 研究最前線 知尋] [Discovery Saga総合案内] [大学別アーカイブス] [Discovery Saga会員のご案内] [産学連携のご案内] [会社概要] [お問い合わせ]

筑波大学 研究Discovery Saga
2025年10月30日

ランナーの下肢の外形と中身からひもとくヒトのランニング適性

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域数物系科学工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
タスク/運動習慣/身体組成/磁気共鳴/内部構造/エネルギー消費/持続可能/持続可能な開発/モデル化/磁気共鳴画像/スポーツ/スポーツ医学/筋肉/体組成/MRI
医療・健康


(Image by Real Sports Photos/Shutterstock)

概要

ランナーは経済的に走るために脂肪量を削ぎ落としていますが、その下肢は軽さほどには振りやすくないことを発見しました。この知見は、運動に従事しないヒトでも体脂肪は体の中心近くに蓄積するため、重くなっても下肢が振りにくくならないという優れた基本特性をヒトが有することを示唆します。
 ヒトは動物の中でも長距離走が得意な種ですが、体形や身体組成は個々人で異なり、普段の運動タスクに適応するように特徴づけられます。「走る」動作には、蹴り出した下肢を前後に振り戻す段階があります。付け根が重く末端が軽い"先細り"な下肢の方が振りやすいため、エネルギー消費を抑える上で有利です。それでは、日常的なランニングに身体を適応させたランナーは、さらに振りやすい下肢を持つのでしょうか?それとも、ヒトは脂肪量に関わらず、振りやすい下肢を持つのでしょうか?
 本研究では、磁気共鳴画像化装置(MRI)を用いて、ランナーと運動習慣のない一般人の下肢の内部構造(骨・筋肉・脂肪)を詳細に三次元モデル化し、質量や「回転のしにくさ(慣性モーメント)」を精密に計算しました。その結果、ランナーの下肢は一般人より軽くなっている(質量が減少している)ものの、慣性モーメントの減少は質量の減少ほど大きくないことが明らかになりました。
 この発見は、「ランナーの下肢では、軽さほどに振りやすさが改善されてない」ことと同時に、「一般人の下肢は、その重さにもかかわらず予想以上に振りやすい」とも解釈できます。つまり、ヒトの身体には、体脂肪がある程度増加して下肢が重くなったとしても、下肢の振りやすさが極端に悪化しないという、走りの経済性を維持する仕組みが備わっていると考えられます。これは、長距離を経済的に移動するために、ヒトが種として持っている基本的な特性かもしれません。
 この成果は、ヒトの身体の仕組みや成り立ちを解き明かす一助となると期待されます。

PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学 体育系
佐渡 夏紀 助教
枝川 岳史 スポーツ医学学位プログラム(3年制博士課程)2年次

掲載論文

【題名】
Proximal-specific reduced mass of lower limbs in male endurance runners does not result in improved mechanical ease of leg swing in proportion to reduced mass
(持久力男性ランナーにおける近位に特異的な下肢質量の減少は、質量の減少に見合った下肢の機械的な振りやすさの向上をもたらさない)
【掲載誌】
Journal of Biomechanics
【DOI】
10.1016/j.jbiomech.2025.113012

関連リンク

体育系
スポーツ医学学位プログラム