海洋研究開発機構(JAMSTEC)と欧州海洋研究掘削コンソーシアム(ECORD)による国際海洋科学掘削計画(IODP3)の覚書締結及びIODP3-NSF第501次研究航海の終了について
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
フレームワーク/技術戦略/地球科学/海洋/海洋科学/環境変動/IODP/海水準変動/気候変動/古生物学/深海掘削/地球深部/地球内部/地球内部構造/地質学/内部構造/データ解析/化学組成/深海底/地球環境/センサー/栄養塩/透水性/地球環境変動/微生物/ラット
Press Releaseプレスリリース
2025.10.20


国立研究開発法人海洋研究開発機構
概要
国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和 裕幸)は、2025年4月より開始した国際海洋科学掘削計画(IODP3: International Ocean Drilling Programme)(※1) への参加について、欧州海洋研究掘削コンソーシアム(ECORD: European Consortium for Ocean Research Drilling)(※2)との覚書を締結しました。本覚書には、地球深部探査船「ちきゅう」及び海底広域研究船「かいめい」を提供する海洋研究開発機構と、特定任務掘削船(※3)を提供するECORDがIODP3のコアメンバーとなり、日欧の協力体制の下2025年から2029年の5年間において深海掘削を通じて地球科学や環境科学の重要課題に取り組んで行くことが盛り込まれています。
IODP3の発足後、最初の航海として実施していた第501次研究航海「ニューイングランド沖大陸棚の水理地質」(別紙参照)について、本研究航海の目的を達成し、2025年8月4日に終了しましたことを併せてお知らせします。本研究航海は、IODP3と米国の国立科学財団(NSF)の合同で実施する初めての航海でもありました。ECORDが提供する特定任務掘削船によって、米国ニューイングランド地方、マサチューセッツ州マーサズ・ヴィニヤード島沖の大陸棚浅海域で実施されました。本航海の参加研究者として、13か国から計41名が参加しており、日本からは4名が参加、うち2名が乗船しました。 用語解説 ※1
国際海洋科学掘削計画(IODP3: International Ocean Drilling Programme)
国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)を引き継いで、2025年4月より開始された日欧が主導する海洋科学掘削に関する多国間科学研究共同プログラム。現在、掘削プラットフォームを提供する海洋研究開発機構とECORDがコアメンバーとなり、掘削船を保有しない豪州・ニュージーランド国際科学掘削コンソーシアム(ANZIC: Australian and New Zealand International Scientific Drilling Consortium)がアソシエートメンバーとして参加している。本プログラムは海洋科学掘削2050サイエンスフレームワーク(2050 Science Framework: Exploring Earth by Scientific Ocean Drilling)に基づいて実施され、日欧がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行っている。 ※2
欧州海洋研究掘削コンソーシアム(ECORD: European Consortium for Ocean Research Drilling)
ヨーロッパの14か国にカナダを加えた全15か国が連合し、国際的な海洋科学掘削の研究協力プログラムへの参加を管理するために組織されたコンソーシアム。IODP3においては、海域に合わせて最適な船を調達し掘削を行う「特定任務掘削船」の提供と運用、ヨーロッパ・カナダ各国から研究航海に参加する研究者の取りまとめなどを担っている。 ※3
特定任務掘削船
IODP3に用いる科学掘削船のうち、ECORDが提供する掘削船や掘削リグ(やぐら)の総称。ECORDは特定の掘削船を持たず、航海ごとの海域に最適な船をその都度傭船し、運用している。傭船されるのは必ずしも科学目的専用の船とは限らないため、通常、採取したコア試料は、掘削直後の実施が必要な分析について船上で一部の研究者が行い、コア試料が陸上のコア保管庫に移送された後、改めて研究者全員で基礎的な記載・分析やサンプリングを行う。
別紙
ニューイングランド沖大陸棚の水理地質
New England Shelf Hydrogeology

1. 日程(現地時間)
IODP3-NSF合同第501次研究航海
2025年 5月 19日 研究航海開始
(出港地:ブリッジポート(アメリカ合衆国))
2025年 8月 1日 研究航海終了
(入港地:ブリッジポート(アメリカ合衆国))
2. 日本からの参加研究者
| 氏名 | 所属/役職 | 担当専門分野 |
| 林 武司* | 秋田大学/教授 | 水理地質学 |
| Feng Shuai* | 京都大学/博士後期課程 | 物性科学 |
| 桑野 太輔 | 京都大学/助教 | 微古生物学(石灰質ナノ化石) |
| 新谷 毅 | 産業技術総合研究所/研究員 | 水理地質学 |
※特定任務掘削船の航海では、一部の研究者が乗船して船上での掘削直後の分析を実施し、航海終了後にその他の研究者とともに陸上のコア保管庫に移送されたコア試料の記載・分析・サンプリングを行います。上記*印は、本研究航海に乗船する研究者を示します。
3.研究の背景・実施内容・結果概要
世界各地の大陸棚では、沖合の地層中に淡水性の地下水が存在していることが知られており、ニューイングランド沖の大陸棚はその代表的な場所の一つです。低塩分濃度の地下水が100 km以上の沖合まで広がっていることが知られています。
IODP³-NSF合同第501次研究航海では、このような海底下に広がる淡水性地下水の起源や分布のメカニズムを説明するモデルを検証するために、ニューイングランド、マサチューセッツ州のマーサズ・ヴィニヤード島沖の大陸棚浅海域において3地点で掘削を行い、718本のコアサンプル(総コア回収長871.83メートル)を採取することに成功しました。洋上ではコア試料の採取の他、検層(各種センサーを掘削孔内に下ろして地層の物性を計測する調査)、揚水試験(地層の透水性を計測する調査)、地層中の流体(液体)やガスの採取等を実施し、流体の分布、化学組成、水理地質等を分析し、気候変動や海水準変動をふまえた大陸棚における地下水の動態、ならびに微生物や炭素等の栄養塩の循環との関与の解明に向けてデータ解析を進めてまいります。
実施要領書:
Dugan,B., Johannesson,K., Everest,J., 2024. IODP3-NSF Expedition 501 Scientific Prospectus: New England Shelf Hydrogeology. International Ocean Drilling Programme.
https://iodp3.org/documents/expedition-501-scientific-prospectus/

図1 本研究航海の掘削地点
| サイト名 | 緯度 | 経度 |
| MV-03C | 40.8746°N | 70.2697°W |
| MV-04C | 40.618333°N | 70.136972°W |
| MV-08A | 40.9976°N | 70.2697°W |

図2 本研究航海で使用した特定任務掘削船L/B Robert (SEACOR Marine社)
ⒸECORD/IODP3 ※本図はECORDによる本研究航海の公式ウェブサイトより引用。
Expedition 501 New England Shelf Hydrogeology
https://expedition501.wordpress.com/
https://www.ecord.org/expedition501/
【参考】ECORD Legal Statements
https://www.ecord.org/legal-statements/
お問い合わせ先 国立研究開発法人 海洋研究開発機構
(IODP³及び本航海の科学計画について)
研究プラットフォーム運用部門
地球深部探査船運用部 部長斎藤 実篤 (報道担当)
海洋科学技術戦略部 報道室
海洋研究開発機構 研究