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東北大学 研究Discovery Saga
2025年10月20日

セラミックス粒界における高速原子拡散の直接観察に成功

―セラミックスの焼結メカニズムの解明と新たな粒界設計指針の構築―

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学数物系科学総合理工工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
ニューラルネットワーク/機械学習/結晶格子/拡散過程/時間分解/多結晶/多結晶体/電子線/材料科学/原子分解能/原子分解能電子顕微鏡/走査透過型電子顕微鏡/持続可能/材料特性/持続可能な開発/STEM/イオン伝導/原子構造/原子配列/アルミニウム/シミュレーション/ニューラルネット/結晶粒界/電子顕微鏡/電子顕微鏡法/動力学/分解能/分子動力学/量子力学/空間分解能/分子動力学計算
2025年10月20日 10:00

研究者情報

〇材料科学高等研究所 教授 幾原雄一
研究室ウェブサイト

発表のポイント

時間分解型の原子分解能電子顕微鏡法により、結晶粒界における添加元素の拡散過程の直接観察に成功した。
実験と理論計算を組み合わせることで、結晶粒界において空孔・格子間拡散機構により高速拡散が誘起されることをはじめて明らかにした。
電子顕微鏡法と理論計算による原子レベルでの拡散機構の理解に基づき、効率的で高性能な多結晶体材料の開発に繋がることが期待される。

発表概要

東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構の幾原雄一東京大学特別教授(兼:東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)教授)、柴田直哉教授、石川亮特任准教授、二塚俊洋特任研究員らのグループは、名古屋大学の松永克志教授、横井達矢准教授と共同で、原子分解能電子顕微鏡法(注1)と理論計算(シミュレーション、注2)により、原子が結晶粒界(注3)に沿って高速拡散(注4)する機構を明らかにしました。
セラミックスの多結晶体に極微量の添加元素を導入すると、さまざまな材料物性の性能を向上させることができます。これまでに、結晶粒界が添加元素の高速拡散経路であることは知られていましたが、原子レベルでの高速拡散機構は不明でした。本研究では、ハフニウム(Hf)を添加した酸化アルミニウム(α-Al2O3)の結晶粒界を対象に、時間分解型の原子分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)(注5)を用い、個々のHf原子が結晶粒界に沿って拡散する様子を追跡することに成功しました。さらに、機械学習ポテンシャル(注6)を用いた大規模な分子動力学計算(注7)により、結晶粒界特有の格子間サイト(注8)を経由する新しい拡散機構を明らかにしました。これらの発見は、結晶粒界を介したイオン伝導など、材料特性の設計に新たな指針を与えるものです。
本研究成果は、2025年10月17日(英国夏時間)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。



本研究の概要

用語解説

(注1)原子分解能電子顕微鏡法
0.1nm以下に収束した電子線で試料上を走査し、透過・散乱した電子線の強度分布から原子配列を直接観察する手法。現在の空間分解能は0.04nmにまで達しており、材料内部の結晶粒界などの原子構造を直接観察できる。
(注2)理論計算(シミュレーション)
コンピューターを用いて材料の性質を予測する計算手法。
(注3)結晶粒界
多結晶体の結晶粒子間に形成される界面。微細な結晶粒により構成される多結晶体中には多数の結晶粒界が存在する。
(注4)拡散
固体中の原子が濃度勾配に従って移動する現象。
(注5)走査透過型電子顕微鏡(STEM)
(注1)を参照。電子線を1nm以下に収束し、試料上を収束した電子線で走査することにより、試料を透過・散乱した電子線の強度分布を用いて結像する方法。特に、0.1nm以下に収束した電子線を用いる場合、原子像が直接観察できるので、本報では原子分解能電子顕微鏡法と呼んでいる。
(注6)機械学習ポテンシャル
機械学習により、量子力学計算で求めた原子間相互作用を学習した原子間ポテンシャル。量子力学計算と近い精度かつ高速の計算が可能である。本研究では、学習にニューラルネットワークを用いた。
(注7)分子動力学計算
運動方程式を解き、原子の動きを追跡する理論計算手法。
(注8)格子間サイト
原子が占有しない結晶格子間の原子サイトのこと。結晶内部では通常、格子間サイトの占有には高いエネルギーが要求される。

論文情報

雑誌名:Nature Communications
題 名:Direct observation of substitutional and interstitial dopant diffusion in oxide grain boundary
著者名:Toshihiro Futazuka, Ryo Ishikawa*, Tatsuya Yokoi, Katsuyuki Matsunaga, Naoya Shibata, Yuichi Ikuhara*
DOI:10.1038/s41467-025-64798-w

詳細(プレスリリース本文)

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学材料科学高等研究所
教授 幾原 雄一
TEL: 022-217-5929
E-mail: yuichi.ikuhara.b3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学材料科学高等研究所
広報戦略室
TEL: 022-217-6146
E-mail: aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)






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