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筑波大学 研究Discovery Saga
2025年10月14日

脳損傷治療に有効な冬眠様低体温状態を誘導する汎用的新手法を開発

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
持続可能/交通事故/持続可能な開発/視床/視床下部/脳損傷/ニューロン/低体温/運動機能/外傷/マウス/神経細胞/睡眠
医療・健康


(Image by Anton MirMar/Shutterstock)

概要

マウス脳損傷モデルにおいて、視床下部にあるQニューロンという神経細胞を刺激して誘導される冬眠様低体温状態が、神経炎症を抑え神経細胞の生存と運動機能の回復を促進することを明らかにしました。外部冷却を用いない生理的低体温法として、外傷性脳損傷の新たな治療戦略になる可能性があります。
 交通事故や転倒などで頭を強く打つと、外傷性脳損傷(TBI)と呼ばれる状態が起こります。このとき、脳が損傷した後に炎症が広がり、神経細胞がさらに壊れてしまうため、運動や記憶に長く後遺症が残ることがあります。その治療法として、現在、体温を下げて脳を守る「治療的低体温療法」が注目されていますが、外部から体を冷やすことは体への負担が大きく、汎用的な方法として限界がありました。
 本研究グループは、マウスの脳の視床下部にある「Qニューロン」と呼ばれる神経細胞を化学的に刺激して、自然な冬眠に似た深い低体温状態(QIH)を作り出す方法を研究しています。今回、脳に小さな損傷を与えたマウスにQIHを誘導したところ、長時間にわたって体温が下がり、そのために脳の中で炎症に関わる細胞の過剰な働きが抑えられることで神経細胞が守られ、運動機能の回復が早まることが分かりました。外部から体を冷やさずに脳を守る新しい治療法につながる成果です。
 この成果は、脳が本来持つ仕組みを利用して安全に体を冷やすという手法が、事故や病気による脳損傷後の新たな治療になり得ることを示唆しています。

PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系/筑波大学高等研究院(TIAR)国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)
櫻井 武 教授

掲載論文

【題名】
Q Neuron-Induced Hypothermia Promotes Functional Recovery and Suppresses Neuroinflammation After Brain Injury
(Qニューロンがつくる冬眠様低体温が、脳損傷からの回復を助け神経炎症を抑える)
【掲載誌】
Journal of Neuroscience
【DOI】
10.1523/JNEUROSCI.1035-25.2025

関連リンク

高等研究院(TIAR)
国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)
医学医療系