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熊本大学 研究Discovery Saga
2025年9月29日

タウオパチーモデルマウスではCD8陽性T細胞の脳内での増加を介して神経変性を増悪させる

~脳―免疫連関による認知症病態制御の一端を明らかに~

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
タウオパチーに対する新たな介入標的として、CD8陽性T細胞を制御することの重要性が見いだされる
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
数物系科学生物学工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
検出器/神経系/トランスジェニック/持続可能/持続可能な開発/レーザー/資源開発/リン酸/CD8/脳神経科学/染色体/中枢神経/病理/免疫抑制/臨床応用/運動機能/中枢神経系/認知機能障害/フローサイトメトリー/モデルマウス/多発性硬化症/B細胞/T細胞/がん細胞/グリア/マウス/蛍光標識/自己免疫/自己免疫疾患/受容体/神経科学/神経回路/神経細胞/神経変性/免疫細胞/免疫抑制剤/ウイルス/遺伝子/遺伝子変異/認知機能/認知症/脳卒中

発表概要

本研究は、名古屋市立大学大学院医学研究科 脳神経科学研究所 認知症科学分野 齊藤貴志 教授、上西涼平(同大学院生)、肱岡雅宣(同講師)、および熊本大学 生命資源研究・支援センター 動物資源開発研究施設(CARD)資源開発分野 竹尾透 教授らのグループによる共同研究の成果です。本共同研究グループは、多発性硬化症1)の治療薬として臨床応用されているフィンゴリモド (FTY720) 2)を認知症タウオパチーモデルマウスに投与すると、脳内のCD8陽性T細胞3)を増加させ、タウのリン酸化や脳の萎縮を促進させることを見いだしました。FTY720は本来、末梢血中のT細胞数を減少させ、脳内へのT細胞の侵入を抑制することで多発性硬化症の症状を抑制する効果が期待されます。しかし、タウオパチーモデルマウスでは、FTY720投与により末梢血中のT細胞数は減少するものの、脳内ではT細胞が増加するという予想に反した結果が示されました。
これらの結果は、脳内のCD8陽性T細胞の増加がタウ病態の進行に寄与しており、タウオパチーの発症機構において脳―免疫の相互作用が重要な役割を果たしていることを示唆しています。また、タウオパチーに対する新たな介入標的として、CD8陽性T細胞を制御することの重要性が見いだされました。
(研究助成)
本研究は、AMED (脳神経科学統合プログラムJP24wm0625303「タウオパチーにおけるグリア-末梢免疫連関および脳プロテオスタシス変容の理解と制御」、革新的先端研究開発支援事業JP20gm1210010「脳卒中・認知症の完全回復に向けた持続可能な神経回路の再構築を実現する治療開発」)、文部科学省・日本学術振興会科学研究費補助金(20H03564、JP24K02354、JP22K06865、JP24K18381、JP24KJ1888)、JST (ムーンショットJPMJMS2024 、SPRING Japan JPMJSP2130)、名古屋市立大学特別研究奨励費(2021101)、名古屋市立大学卓越研究グループ支援事業(2401101)、東京科学大学難治疾患共同研究拠点活動(Grant No. 2025-kokunai 29)、堀科学芸術振興財団助成、豊秋奨学会助成等を受けて行われました。

用語解説

1) 多発性硬化症
脳や脊髄などの中枢神経系に障害が引き起こされる自己免疫疾患の一つ。症状としては運動機能障害や認知機能障害などが存在し、再発と寛解を繰り返すことが特徴として知られています。特に、免疫細胞であるT細胞が脳内で神経細胞障害を起こし病態の進行に深く関与していることが知られています。
 
2) フィンゴリモド (FTY720)
 多発性硬化症の再発予防や身体的障害の進行抑制に用いられる免疫抑制剤。T細胞やB細胞などの免疫細胞表面に発現しているスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体 (S1PR)と結合することで、S1PRの発現を低下させます。その結果、T細胞やB細胞などの免疫細胞を二次リンパ節に留めることで、末梢血中に移行できないようにする薬剤です。これにより、脳内へのT細胞の侵入を抑制することができます。
 
3)  CD8陽性T細胞
     ウイルスやがん細胞などの異物に感染した細胞を排除する免疫細胞として知られており、細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)とも呼ばれています。
 
4)  P301S–Tauトランスジェニックマウス(Tau Tgマウス)
家族性タウオパチーの一つであるFTDP-17 (17番染色体に連鎖する家族性前頭側頭型認知症パーキンソニズム)患者から見出された遺伝子変異であるP301S変異を有するタウを過剰に発現させたタウオパチーモデルマウスです。これにより、リン酸化タウの蓄積、神経細胞の脱落などのタウ病理を呈するマウスです。
 
5)  フローサイトメトリー
  蛍光標識した細胞を流体中に分散させながら、様々なレーザー光を照射し、様々な検出器で蛍光を受け取り測定することで、特定の細胞がサンプル中にどのくらいの割合で存在するかを解析できる技術です。
 
【論文タイトル】
Fingolimod treatment exacerbates tau phosphorylation and neurodegeneration in a mouse model of tauopathy with accumulated brain CD8+ T cells
 
 
【著者】
上西 涼平1*,河田 琳菜1,眞鍋 達也1,竹尾 透2,肱岡 雅宣1#,齊藤 貴志1,3#
【著者所属】
    名古屋市立大学大学院医学研究科 脳神経科学研究所 認知症科学分野
    熊本大学 生命資源研究・支援センター 動物資源開発研究施設(CARD)資源開発分野
    名古屋大学 環境医学研究所 病態神経科学分野

* 第一著者#共同責任著者
 
【掲載学術誌】
学術誌名 BrainCommunications
DOI番号:https://academic.oup.com/braincomms/article-lookup/doi/10.1093/braincomms/fcaf330

【詳細】プレスリリース(PDF1,999KB)

 




  
<熊本大学SDGs宣言>

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