福島第一原子力発電所事故後の安定ヨウ素剤内服と甲状腺検査結果
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
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この研究の主な対象者企業・研究者の方
公開日
概要
西川佳孝 医学研究科准教授、中山健夫 同教授、鈴木千晶 医学部附属病院特定助教、後藤あや 米国ハーバード大学(Harvard University)教授、坪倉正治 福島県立医科大学教授らの研究グループは、ひらた中央病院(主たる研究機関)と共同で、2011年の福島第一原発事故で安定ヨウ素剤の配布と内服指示が実施された三春町の子どもたちを対象に調査を実施しました。本調査では、災害時の安定ヨウ素剤の服用歴などを含む住民アンケートと甲状腺超音波検診結果をふまえ、安定ヨウ素剤の内服有無が甲状腺の状態と関係するかを分析しました。その結果、安定ヨウ素剤の服用と甲状腺の要精密検査には差は認められませんでした。同町の住民集団では原発事故後の放射線被ばく量が低く、ふだんの食生活でのヨウ素摂取量も十分であったことから、原子力発電所事故による甲状腺への影響が最小限に留まったためと考えられます。また、甲状腺の体積や組織所見にも違いは認めず、安定ヨウ素剤を内服することによる副作用が大きくないことも示唆されました。今後は原子力災害に備えるための地域ごと対応や子どもや保護者へのスムーズな健康情報提供体制のあり方など、さらなる調査が期待されます。
また、原子力発電所事故発生時の妊婦の安定ヨウ素剤内服実態と、その後出生した子どもたちの甲状腺超音波検査結果についても調査しました。本調査により、原子力発電所事故発生時の妊婦の安定ヨウ素剤の内服割合は34.9%と、子どもの内服割合より低かったことがわかりました。また、安定ヨウ素剤内服の有無によって出生児に要精密検査となるような甲状腺異常はありませんでした。地域住民の日常的に十分なヨウ素栄養状態や、事故時の被ばく線量の低さが、甲状腺への影響を限定的なものとしたと考えられます。
本研究成果に基づく二編の学術論文は、2025年5月29日に国際学術誌「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」、2025年6月9日に国際学術誌「Disaster Medicine and Public Health Preparedness」に、オンライン掲載されました。

研究者のコメント
「本調査は、『安定ヨウ素剤は飲んでおいたほうが良かったのでしょうか』という現地医療スタッフの声から生まれました。長らく診療の機会を頂戴してきた、福島県におけるデータを活用させていただきました。今回の調査を通じて、原子力災害時の備えとしての安定ヨウ素剤の使用実態、健康情報の取り扱いについて、国内外の多くの専門家と議論することができました。今後も地域社会との対話をおこない、よりよい災害対策に貢献したいと考えています。」(西川佳孝)
詳しい研究内容について
福島第一原子力発電所事故後の安定ヨウ素剤内服と甲状腺検査結果研究者情報
研究者名 西川 佳孝京都大学 教育研究活動データベース 研究者名 中山 健夫
京都大学 教育研究活動データベース 研究者名 鈴木 千晶
京都大学 教育研究活動データベース
京都大学 研究