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京都大学 研究Discovery Saga
2025年9月3日

植物の時計が停止する温度では成長も停止することを野外データから発見

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学生物学工学農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
機械学習/アブラナ科/モニタリング/生態学/概日時計/トランスクリプトーム/遺伝子/遺伝子発現
この研究の主な対象者
企業・研究者の方
公開日

概要

工藤洋 生態学研究センター教授と村中智明 同特定研究員(現:名古屋大学助教)、湯本原樹 同研究員(現:信州大学特任助教)、本庄三恵 同准教授らの研究グループは、永野惇 名古屋大学教授、Ji Zhou 英国国立農業植物学研究所(National Institute of Agricultural Botany)教授との共同研究において、アブラナ科多年草のハクサンハタザオを対象とした野外トランスクリプトームと個体モニタリングにより、遺伝子発現の日周リズムが7℃以下で停止すること、その温度帯では成長も停止することを発見しました。
 植物には概日時計という1日周期のリズム(日周リズム)を生み出すメカニズムがあり、様々な生理現象を昼夜サイクルに同調させて制御しています。工藤教授は兵庫県多可町のハクサンハタザオ自然集団の長期モニタリングを継続してきましたが、これまでの研究で気温が低下する冬季には、多くの遺伝子で日周リズムが停止し、発現が高止まりすることを報告していました。一方で、リズムが停止する閾値温度は不明でした。今回、野外トランスクリプトームの1時点データから概日時計の振動振幅を推定する方法を開発しました。その結果、日平均気温が約7℃低下すると、振幅が大きく減少することを見出しました。興味深いことに、個体サイズのモニタリングにおいて、同じく7℃以下では成長が停止することが示唆されました。概日時計の下流には低温耐性の遺伝子が含まれることから、冬季のリズム停止は、成長よりも低温耐性を優先するスイッチとして機能すると考察しました。また、今回の解析では、一部の遺伝子では冬季でも日周リズムが維持されることも明らかとなり、機械学習によるトランスクリプトームからのサンプリング時刻の推定は冬季でも可能であったことから、低温下においても時間情報は保持されていることも示唆されました。
 本研究成果は、2025年8月7日に、国際学術誌「Plant and Cell Physiology」にオンライン掲載されました。


各季節の概日時計の軌道(PCA空間)と概日時計の振動が再開する時期のハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri subsp. gemmifera
研究者のコメント 「概日時計の研究者はリズムが好きなので、冬季にリズムが消える現象の解析は新鮮かつ困難も多かったです。どうにか低温でもリズムを刻む植物を作って、何が起きるかを知りたいと思います。」(村中智明)

詳しい研究内容について

植物の時計が停止する温度では成長も停止することを野外データから発見

研究者情報

研究者名 工藤 洋
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名 Tomoaki Muranaka ORCID 研究者名 湯本 原樹 Researchmap 研究者名 本庄 三恵
京都大学 教育研究活動データベース

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1093/pcp/pcaf092
【書誌情報】
Tomoaki Muranaka, Genki Yumoto, Mie N Honjo, Atsushi J Nagano, Ji Zhou, Hiroshi Kudoh (2025). Coincidence of the Threshold Temperature of Seasonal Switching for Diel Transcriptomic Oscillations and Growth.Plant and Cell Physiology, pcaf092.

関連部局

生態学研究センター