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東北大学 研究Discovery Saga
2025年8月20日

プロトンと電子の両方が高速に伝導する酸化物を発見

ー中温域で動作する低コストな電気化学リアクターや水素透過膜への応用に期待ー

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
数物系科学化学総合理工工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
物質科学/ブロッキング/電気伝導度/プロトン伝導/電気分解/水素透過/キャリア/選択性/持続可能/持続可能な開発/チタン/ニオブ/酸化チタン/電気伝導/電池/燃料電池/拡散係数/酸化物/電解質/電気化学/プロトン
2025年8月20日 11:00

研究者情報

〇多元物質科学研究所 助教 山﨑智之
多元物質科学研究所 教授 小俣孝久
研究室ウェブサイト

発表のポイント

ニオブ(Nb)をドープしたルチル型酸化チタン(TiO2)が、200~300℃の中温域でプロトン(H+)と電子(e-)のいずれもが高速で伝導する、優れた混合伝導体(注1であることを発見しました。
TiO2へのNbのドープには、電子キャリア密度の増大による電子伝導度の向上だけでなく、プロトンキャリア密度(注2と、拡散係数(注3)の増大によりプロトン伝導度(注4を向上する作用があることを実証しました。
中温域で作動する次世代型の燃料電池などの水素の関わる反応の電気化学リアクター(注5の電極材料および水素透過膜への応用が期待されます。

発表概要

プロトン(H+)と高い電子(e)の両方が電荷担体(キャリア)となる混合伝導体は、500℃以上の高温域で動作する燃料電池や水電解素子など、水素が関わる反応を利用した電気化学リアクターの電極や、水素透過膜などとして使われます。近年それらのデバイスは、耐用年数の延伸や反応の促進に必要な触媒にかかるコスト低減、反応の選択性向上などの観点から、従来の燃料電池が稼働する500℃以上の高温域に対して200~500℃の中温域での動作が望まれており、その実現に向けた要素材料の開発が進められています。
東北大学多元物質科学研究所の山﨑智之助教と小俣孝久教授らの研究グループは、Nbをドープした酸化チタン(Nb-TiO2)が、200~300℃で高いプロトン伝導性と高い電子伝導性を併せ持つ、優れた混合伝導体であることを発見しました。この成果は、中温域で動作する燃料電池をはじめとする様々な電気化学リアクターの電極材料を提供するとともに、プロトンをキャリアとする混合伝導体や電解質(注6の設計に新たな指針を提供します。
本研究の成果は米国現地時間の2025年8月18日、米国化学会の学術誌Journal of the American Chemical Societyにてオンライン掲載されました。



図1. Nb-TiO2中のプロトン-電子混合伝導と電子ブロッキング法によるプロトン伝導度測定法の模式図

用語解説

注1. 混合伝導体:2種類以上の電荷キャリアが伝導する物質のこと。
注2. プロトンキャリア密度:物質中を移動する電荷キャリアの単位体積当たりの数を表す。キャリア密度が大きいほど電気伝導度は大きい。
注3. 拡散係数:物質中での一つ一つのキャリアの移動のしやすさを表す指標。拡散係数が大きいほどより高速にキャリアが移動でき、電気伝導度は大きくなる。
注4. プロトン伝導度:H+の伝導による電気伝導度。
注5. 電気化学リアクター:化学エネルギーと電気エネルギーの相互変換を行う素子の総称。例えば、燃料電池は酸素と水素の反応から電気エネルギーを取り出す素子、水電解素子は水を電気分解して水素を生成する素子。
注6. 電解質:イオンのみが電荷キャリアとして伝導する材料。これに対して電極にはイオンと電子の両方が伝導する混合伝導性が求められる。

論文情報

タイトル:Enhanced Proton Transport in Nb-Doped Rutile TiO₂: A Highly Useful Class of Proton-Conducting Mixed Ionic Electronic Conductors
著者:Takuma Shiraiwa, Tomoyuki Yamasaki*, Kizuku Kushimoto, Junya Kano, and Takahisa Omata*
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 助教 山﨑智之、教授 小俣孝久
掲載誌:Journal of the American Chemical Society
DOI:https://doi.org/10.1021/jacs.5c05805

詳細(プレスリリース本文)

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
助教 山﨑智之
TEL: 022-217-5215
Email: tomoyuki.yamasaki.a1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学多元物質科学研究所
教授 小俣孝久
TEL: 022-217-5832
Email: takahisa.omata.c2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)






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