CAR-T治療、スピードが鍵
―CAR-T細胞療法の待機期間をどう調整するかのヒントを発見―
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
この研究の主な対象者企業・研究者の方
公開日
概要
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、再発・難治性B細胞リンパ腫に対する治療の切り札として期待されています。本治療では、まず病院で患者さんからT細胞採取を行い、それを原料に細胞調整施設でCAR-T細胞が製造され、完成した細胞が病院に納品されて投与されます。T細胞採取からCAR-T細胞納品までは通常4~6週間を要するうえ、病勢管理や入院調整も必要で、投与までに待機期間が生じます。特に病床数が限られる中、CAR-T細胞療法の件数は増加しており、待機期間は延長傾向です。待機期間延長によって病勢進行や合併症によって治療効果が損なわれる可能性がありますが、治療成績への影響に関するデータがありませんでした。そこで、森本俊 医学研究科博士課程学生、城友泰 医学部附属病院助教、新井康之 同講師、長尾美紀 同教授、山下浩平 同特定准教授、髙折晃史 同教授らの研究グループは、再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫90症例についてT細胞採取から投与までの待機期間がCAR-T細胞療法後の臨床転帰に及ぼす影響を解析しました。その結果、待機期間の延長はCAR-T後予後の不良因子であることが明らかになりました。特に、投与前にリンパ腫病勢を十分に抑制できない患者では、待機期間延長の悪影響が顕著で、一方で病勢を抑制できた症例では悪影響はみられませんでした。また、延長した待機期間中に化学療法を追加しても病勢が改善しない例が多く、効果の乏しい化学療法を長引かせないことが、治療成績向上の鍵であることが示唆されました。本結果から、症例毎に待機期間を最適化する運用の構築によって、CAR-T細胞療法全体の治療成績を改善できることが期待されます。
本研究成果は、2025年8月11日に、国際学術誌「British Journal of Haematology」にオンライン掲載されました。

研究者のコメント 「CAR-T治療では、細胞を採ってから体に戻すまでにどうしても時間がかかります。この 『待ち時間』が患者さんの治療成績にどれほど影響するかは、はっきりしていませんでした。今回の研究で、特にリンパ腫の病勢が不安定な症例では待ち時間の悪影響が顕著であることが明らかになりました。今後は、病勢が不安定な症例に対して化学療法延長は回避して早期に優先してCAR-T投与をつなげるなど、段取りを個別化して全体の予後改善に取り組みます。」(森本俊、城友泰、新井康之)
詳しい研究内容について
CAR-T治療、スピードが鍵―CAR-T細胞療法の待機期間をどう調整するかのヒントを発見―研究者情報
研究者名 城 友泰京都大学 教育研究活動データベース 研究者名 新井 康之
京都大学 教育研究活動データベース 研究者名 長尾 美紀
京都大学 教育研究活動データベース 研究者名 山下 浩平
京都大学 教育研究活動データベース 研究者名 髙折 晃史
京都大学 教育研究活動データベース
書誌情報
【DOI】https://doi.org/10.1111/bjh.70090
【書誌情報】
Suguru Morimoto, Tomoyasu Jo, Toshio Kitawaki, Takashi Sakamoto, Chisaki Mizumoto, Junya Kanda, Momoko Nishikori, Kouhei Yamashita, Miki Nagao, Akifumi Takaori-Kondo, Yasuyuki Arai (2025). Prolonged chimeric antigen receptor-T apheresis to infusion time is associated with inferior outcomes in diffuse large B-cell lymphoma.British Journal of Haematology.
京都大学 研究