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物質・材料研究機構 研究Discovery Saga
2025年7月9日

高エントロピー酸化物で低抵抗・高性能TMR素子を実現

〜 大容量磁気ストレージでスマート社会を支える新材料 〜

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学環境学数物系科学総合理工工学医歯薬学
【Sagaキーワード】
データ駆動/機械学習/最適化/金属元素/磁気抵抗/エントロピー/異方性/酸化マグネシウム/スピントルク/トンネル電流/磁気異方性/磁性体/MRAM/メモリ/材料設計/垂直磁化/垂直磁気異方性/電気抵抗/電子構造/スピン/スピントロニクス/トルク/トンネル/トンネル効果/マグネシウム/酸化物/磁気記録/電子顕微鏡/半導体/ラット

2025.07.09
NIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)
NIMSは、複数の金属元素を組み合わせた高エントロピー酸化物をTMR(トンネル磁気抵抗)素子のバリア層に応用し、強い垂直磁化、高いTMR比(抵抗変化率)、そして低電気抵抗の同時実現に成功しました。HDD(ハードディスク)やMRAM(磁気抵抗メモリ)のさらなる小型化と大容量化・高性能化につながると期待されます。本研究成果は、2025年7月6日付で国際科学誌『Materials Today』に掲載されました。

概要

従来の課題

TMR素子は、磁性体の間にある極薄の絶縁層を電子が量子トンネル効果で通過することで動作します。この絶縁層には、現在主に酸化マグネシウム(MgO)が使用されています。MgOは、磁気状態による抵抗の変化率(TMR比)が高く、磁気状態の検出性能に優れている一方で、電子が通りにくい「バリア高さ」が高いため、トンネル電流が抑制され、素子全体の電気抵抗が大きくなるという課題がありました。このため、トンネル効果を維持しながらバリア高さを下げ、トンネル電流を増加させられる新たなバリア材料の開発が強く求められていました。

成果のポイント

NIMSは、5金属元素からなる高エントロピー酸化物「LiTiMgAlGaO」を開発し、原子レベルで均一に分散した高品質なバリア層の作製に成功しました[図 (a)]。このバリアは、垂直磁気異方性[図 (b)]と80%超の高TMR比に加え、バリア高さをMgOの半分以下に抑えることに成功し、トンネル電流の増加によって電気抵抗の大幅な低減を可能にしました。本成果は、次世代MRAMやHDDの高速・大容量化に貢献するものです。



図: (a) 均一な元素分布を示すLiTiMgAlGaOバリア層の断面構造。 (b) バリア層により磁性層に強い垂直磁気異方性を付与。

将来展望

今後は、元素の組合せや組成比の最適化により、低抵抗かつ高TMR比を両立する理想的なバリア材料の開発を目指します。あわせて、機械学習などのデータ駆動型手法を活用して材料設計の加速と実用化を推進し、MRAMやHDDのさらなる大容量化・高性能化に貢献します。

その他


本研究は、NIMS 磁性・スピントロニクス材料研究センター スピントロニクスグループのSIHOMBING Rombang Rizky (ションビン ロンバン リズキ) ポスドク研究員、介川 裕章 グループリーダーを中心に、同グループのSCHEIKE Thomas (シャイケ トーマス) 客員研究員、温 振超 (ウェン ジェンチャオ) 主任研究員、三谷 誠司 上席研究員、技術開発・共用部門 材料創製・評価プラットフォーム 電子顕微鏡ユニットの埋橋 淳 主幹エンジニア、同プラットフォーム 表面・バルク分析ユニットの安福 秀幸 主幹エンジニア、ならびに磁性・スピントロニクス材料研究センターの大久保 忠勝 副センター長らで構成される研究チームによって実施されました。
本研究は、⽂部科学省データ創出・活⽤型マテリアル研究開発プロジェクト(JPMXP1122715503)、日本学術振興会 科学研究費補助金(22H04966、24H00408)、および文部科学省 次世代X-nics半導体創生拠点形成事業(JPJ011438)の支援を受けています。
本研究成果は、2025年7月6日に国際科学誌「Materials Today」オンライン版に掲載されました。

掲載論文

題目 : High entropy oxide epitaxial films with interface perpendicular magnetic anisotropy and tunnel magnetoresistance effect toward spintronic applications
著者 : Rombang Rizky Sihombing, Thomas Scheike,Jun Uzuhashi,Hideyuki Yasufuku,Tadakatsu Ohkubo,Zhenchao Wen,Seiji Mitani, andHiroaki Sukegawa
雑誌 : Materials Today
DOI :10.1016/j.mattod.2025.06.025
掲載日時 : 2025年7月6日

関連ファイル・リンク


プレスリリース詳細 PDF - [2.84MB]
磁性・スピントロニクス材料研究センター

問い合わせ先

研究内容について

NIMS 磁性・スピントロニクス材料研究センター
スピントロニクスグループ
グループリーダー
介川 裕章 (すけがわ ひろあき) E-Mail: SUKEGAWA.Hiroaki=nims.go.jp([ = ] を [ @ ] にしてください)
TEL: 029-860-4642

報道・広報について

NIMS 国際・広報部門 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1 E-Mail: pressrelease=ml.nims.go.jp([ = ] を [ @ ] にしてください)
TEL: 029-859-2026
FAX: 029-859-2017

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