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埼玉大学 研究Discovery Saga
2025年7月9日

腹鳴りホルモンであるモチリンは摂食を刺激する

-スンクスを用いた胃運動と摂食行動の同時解析-(大学院理工学研究科 坂田一郎教授、金谷萌子助教、坂井貴文学長)

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
複合領域生物学総合生物農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
食行動/神経系/実験動物/哺乳類/ペプチドホルモン/摂食行動/哺乳動物/視床/グレリン/視床下部/摂食障害/ホルモン/交感神経/副交感神経/アミノ酸/イミン/モデル動物/小腸/迷走神経/薬理学/遺伝子

2025/7/8
プレスリリース全文はこちらからご覧ください。

発表のポイント

腹鳴りホルモンであるモチリンは摂食を刺激することを明らかにした。
モチリンの摂食刺激作用が迷走神経を介した作用であることを解明。
本研究により、モチリンを標的として摂食亢進薬の開発に期待。



発表概要

本研究では、小腸から分泌されるペプチドホルモン「モチリン」に注目しました。モチリンは、摂食を促進する「グレリン」と同じファミリーに属し、空腹時に強い胃の収縮を引き起こすことが知られています。しかし、モチリンが実際に摂食行動の調節に関わっているのかどうかは、これまで明らかにされていませんでした。本研究では、ヒトと同様にモチリンが機能する小型哺乳類スンクス(ジャコウネズミ)をモデル動物として用い、モチリンが胃の運動および摂食行動に及ぼす影響を詳細に解析しました。その結果、モチリンの血中濃度が上昇するタイミングで摂食量が増加すること、さらに外因性にモチリンを投与すると摂食が促進されることが明らかとなりました。興味深いことに、この摂食促進作用は迷走神経を切除したスンクスでは見られず、脳幹や視床下部に存在する摂食関連の神経群がモチリン投与により活性化されることも確認されました。これらの結果から、モチリンは単に胃運動を調節するホルモンであるだけでなく、「食べる」という行動そのものにも関与することが示されました。本研究の成果は、今後、摂食障害や食欲不振といった病態に対する新たな治療法の開発につながる可能性が期待されます。

本研究は、埼玉大学大学院理工学研究科生体制御学プログラムの坂田一郎教授と金谷萌子助教、埼玉大学坂井貴文学長、埼玉大学大学院理工学研究科博士後期課程学生(Jin Huang)及び博士前期課程学生(渡邊あゆみ、五味彩乃、横山遥香、石井日翔里、中村友亮)、富山大学学術研究部理学系の今野紀文講師、自治医科大学医学部薬理学講座分子薬理学部門の東森生講師、グランソール免疫研究所の海谷啓之博士の共同研究で実施され、本成果は『The Proceedings of the National Academy of Sciences』に7月7日付(米国東部時間)でオンラインにて掲載されました。

論文情報

雑誌名 The Proceedings of the National Academy of Sciences
論文タイトル Motilin stimulates food intake linked to gastric motility inSuncus murinus: Simultaneous recordings of food intake and gastric motility in conscious state
著者 Jin Huang(埼玉大学), 渡邊あゆみ(埼玉大学), 金谷萌子 (埼玉大学), 五味彩乃(埼玉大学), 横山遥香(埼玉大学), 石井日翔里(埼玉大学), 中村友亮 (埼玉大学), 東森生 (自治医科大学), 今野紀文(富山大学), 海谷啓之(グランソール免疫研究所), 坂井貴文(埼玉大学), 坂田一郎(埼玉大学)
DOI 10.1073/pnas.2424363122
URL https://doi.org/10.1073/pnas.2424363122

用語解説

「モチリン」上部小腸から分泌される22アミノ酸残基からなるペプチドホルモン。

「スンクス」食虫目トガリネズミ科、ジネズミ亜科、ジャコウネズミ属に位置する小型哺乳動物で、日本で実験動物化された。げっ歯類では偽遺伝子化しているモチリンを産生する。

「迷走神経」第10脳神経にあたる脳神経で、主に副交感神経系として働きます。
坂田 一郎|埼玉大学研究者総覧
金谷 萌子|埼玉大学研究者総覧
坂井 貴文|埼玉大学研究者総覧