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山口大学 研究Discovery Saga
2025年6月27日

中枢性神経免疫疾患における血液脳関門破綻に関する総説論文を発表

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
数物系科学生物学工学総合生物農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
ブレイン/Vcam-1/有害物質/接合部/運動失調/小脳/神経筋接合部/大脳/顆粒細胞/カルシウムチャネル/接着因子/病原体/血管内皮/中枢神経/末梢神経/リンパ球/自己抗体/多発性硬化症/B細胞/T細胞/アクアポリン/アストロサイト/カルシウム/血液/血液脳関門/血管内皮細胞/自己免疫/自己免疫疾患/神経細胞/創薬/内皮細胞/免疫細胞/抗体/神経疾患/難病

 

発表のポイント

中枢性神経免疫疾患(多発性硬化症、視神経脊髄炎、自己免疫性脳炎、自己免疫性小脳失調症)における血液脳関門破綻に関する総説論文を発表しました。
多発性硬化症では、血液脳関門を超えたリンパ球流入が初期の病態に大きく関与し、皮質下の血液脳関門破綻による脳萎縮が進行期の病態に大きく関与します。
視神経脊髄炎では、GRP78抗体による血液脳関門破綻が抗アクアポリン4抗体(AQP4抗体)の脳内侵入を惹起し、視神経脊髄炎発症に関与します。
MOG抗体関連疾患においても、GRP78抗体が血液脳関門破綻に関与します。
自己免疫性小脳失調症の一つである傍腫瘍性小脳変性症を合併したランバート・イートン筋無力症候群では、GRP78抗体が血液脳関門破綻を引き起こすことで、P/Q型VGCC抗体の小脳内への侵入を促し、小脳失調を引き起こします。

総説論文の内容


 山口大学大学院医学系研究科臨床神経学講座の清水文祟准教授らの研究グループは血液脳関門の構造や機能について概説しました。
 中枢性神経免疫疾患(多発性硬化症、視神経脊髄炎、自己免疫性脳炎、自己免疫性小脳失調症)における血液脳関門破綻の機序について概説し、研究グループが発見したGRP78抗体の果たす役割について詳しく解説しました。
 



図1. 多発性硬化症での血液脳関門破綻機序
初期あるいは再発寛解期にはVCAM-1やICAM-1などの接着因子を介して、T細胞/B細胞が血液脳関門を通過し、中枢神経内に侵入します。中枢神経内でリンパ球が活性化され、内側から血液脳関門を壊すことで、更に大量のT細胞やB細胞が中枢神経内に侵入します。B細胞が髄膜に集簇し、異所性リンパ濾胞を形成し、脳萎縮や症状進行に関与していきます。
 



図2.視神経脊髄炎関連疾患での血液脳関門破綻
末梢血に存在するGRP78抗体が血液脳関門内皮細胞に存在するGRP78に結合、その後NFκBを活性化し、血液脳関門を破綻させAQP4抗体の脳内侵入を惹起します。AQP4抗体はアストロサイト足突起に存在するAQP4に結合し、補体介在性障害、IL-6産生を介して更に血液脳関門を壊します。
 



図3. 傍腫瘍性小脳変性症を合併したランバート・イートン筋無力症候群の病態機序
GRP78とP/Q型VGCCは腫瘍細胞表面に発現しています。腫瘍細胞との交差免疫により産生されたGRP78抗体が、血液脳関門内皮細胞に発現するGRP78に結合し、NFκBシグナル活性化により血液脳関門を破綻させます。同じく腫瘍との交差免疫により産生されたP/Q型VGCC抗体の脳内流入を促進しプルキンエ細胞傷害、顆粒細胞傷害を惹起します。
 
 本成果は2024年10月2日付で「International Journal of Molecular Sciences (IF 4.9)」に掲載されました。

論文情報

タイトル:Blood–Brain Barrier Disruption in Neuroimmunological Disease
著 者:Fumitaka Shimizu, Masayuki Nakamori
掲載誌:International Journal of Molecular Sciences
掲載日:2024年10月2日
D O I:10.3390/ijms251910625

謝辞

 科研費 (24K10621, 21K07416, 20H00529)、公益財団法人中学創薬科学財団、ブレインサイエンス振興財団の支援を受けて行いました。

用語解説

・血液脳関門(BBB:Blood-Brain Barrier)
脳内微小血管内皮細胞により構成される血液と脳を隔てるバリアー構造物。外部の有害物質や病原体から末梢神経内の神経細胞を守り、免疫細胞の侵入を防ぐと同時に脳内の細胞に必要な栄養素を積極的に取り込む役割を果たす。
・多発性硬化症
視力障害、感覚障害、運動麻痺などさまざまな神経症状の再発と寛解を繰り返す自己免疫性神経疾患で、厚生労働省が指定する難病の1つ。
・視神経脊髄炎
視神経と脊髄および大脳に病変が生じることで視力低下や感覚異常などを繰り返す病気で、厚生労働省が指定する難病の1つ。 免疫の異常によって自分の体の組織が攻撃される自己免疫疾患で、アクアポリン4に反応する自己抗体(抗アクアポリン4抗体:AQP4抗体)により、脳・脊髄・視神経が攻撃されて発症する。
・ランバート・イートン筋無力症候群
P/Q型電位依存性カルシウムチャネル自己抗体 (抗P/Q型VGCC抗体)が検出される神経筋接合部疾患。小細胞肺癌との関連が知られている傍腫瘍症候群である。10%に小脳性運動失調を合併することが報告されている。
・GRP78抗体
研究グループが同定した血液脳関門を破綻させる作用を持つ自己抗体。視神経脊髄炎やMOG抗体関連疾患、傍腫瘍性小脳変性症を合併したランバート・イートン筋無力症候群の患者さんの血液で検出され、血液脳関門破綻に関与することを、これまで研究グループが報告してきた。

問い合わせ先

<研究に関すること>
山口大学大学院医学系研究科臨床神経学講座
TEL:0836-22-2719 准教授 清水 文崇
E-mail:fshimizu@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)
<報道に関すること>
山口大学医学部総務課広報・国際係
TEL:0836-22-2009
E-mail:me268@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)