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京都大学 研究Discovery Saga
2025年6月19日

潮汐破壊現象の最高精度の偏光観測

―超大質量ブラックホールの周囲環境を調査する新たな手がかり―

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
数物系科学医歯薬学
【Sagaキーワード】
幾何構造/すばる望遠鏡/スペクトル/ブラックホール/観測装置/銀河/銀河中心/恒星/新星/超新星/望遠鏡/SPECT
この研究の主な対象者
企業・研究者の方
公開日

概要

宇野孔起 理学研究科研究員、前田啓一 同教授を中心とした国際研究グループは、京都大学せいめい望遠鏡・国立天文台すばる望遠鏡をはじめとする国際的な望遠鏡網により潮汐破壊現象AT2023clxを詳細に観測し、潮汐破壊現象に伴うガスの噴出方向と銀河中心環境が空間的に直交するという、特異な幾何構造を明らかにしました。
 銀河の中心に存在する超大質量ブラックホール(SMBH)に恒星が接近すると、その強力な重力によって恒星が引き裂かれ、明るく光り輝きます。潮汐破壊現象と呼ばれる本現象は極めて稀で、詳細な観測例は限られています。本研究グループは、突発的な天体現象として発見されたAT2023clxが潮汐破壊現象であることをせいめい望遠鏡を用いた観測により世界に先駆けて同定し、その直後からすばる望遠鏡や北欧光学望遠鏡を用いた国際連携による追跡観測を実施しました。その結果、ブラックホールから噴き出すガスの流れと銀河中心SMBH周辺に存在する塵からなる円盤状(トーラス)の構造が、空間的に90度直交するという特異な配置が明らかになりました。一般的には銀河中心の星はランダム運動をすると考えられていますが、本研究結果は、SMBH周辺環境が銀河中心の恒星軌道に影響を与える可能性を示唆します。本成果は、「せいめい望遠鏡による天体同定から国際的観測網へ」という理想的な観測連携の成果であり、潮汐破壊現象を通じて銀河中心環境の性質や構造まで読み解ける可能性を実証しました。
 本研究成果は、2025年6月18日に、国際学術誌「Astrophysical Journal Letters」に掲載されました。


左:AT2023clxの発見前(Pan-STARRS)と発見後(せいめい望遠鏡/TriCCS)の画像(せいめい望遠鏡観測画像、提供:京都大学岡山天文台/TriCCS)。右:銀河中心領域のイメージ図。塵トーラスの方向からやってきた星(青)が壊されることにより、塵トーラスと超大質量ブラックホールからのガスの噴出方向が直交する。仮に、塵トーラスの方向以外から星がやってくる(赤)と、塵の構造とガス噴出方向は直交しない。
研究者のコメント  「せいめいで同定した翌日、すばるで観測を実施しました。ちょうど観測装置が搭載されていた最終日で、関係者の迅速な対応と幸運が重なり、貴重なデータが得られました。こうしたSerendipitousな発見は観測研究の醍醐味です。次にどんなデータが出てくるのか、ワクワクしながら研究を進めることが出来ました。また、せいめいとすばるの連携が実現した本研究は、せいめいの設計理念に沿った理想的な形であり、運用開始から観測を行ってきた身として、非常に嬉しいです。」(𡧃野孔起)
「世界中でTDE研究が盛り上がってきた中で、それまで超新星の研究で培ってきた経験を生かして独自の成果に繋がる戦略として、TDEの同定観測及び偏光追観測を柱としたプロジェクトを開始したのが2022年。その直後にAT2023clxが発生したのは幸運でした。TDEであることを示すスペクトル(せいめい望遠鏡)が表示された瞬間、偏光データ(すばる望遠鏡)が美しい波長依存性と時間進化を示したことを見た瞬間、それが塵トーラスによる反射という解釈で見事に説明できると気が付いた瞬間-こういう瞬間があるので、研究ってやめられないのです。」(前田啓一)

詳しい研究内容について

潮汐破壊現象の最高精度の偏光観測―超大質量ブラックホールの周囲環境を調査する新たな手がかり―

研究者情報

研究者名 Kohki Uno ORCID 研究者名 前田 啓一
京都大学 教育研究活動データベース

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.3847/2041-8213/add71b

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/294712

【書誌情報】
Kohki Uno, Keiichi Maeda, Takashi Nagao, Giorgos Leloudas, Panos Charalampopoulos, Seppo Mattila, Kentaro Aoki, Kenta Taguchi, Miho Kawabata, Javier Moldon, Miguel Pérez-Torres, Miika Pursiainen, Thomas Reynolds (2025). Spectropolarimetry of a Nuclear Transient AT2023clx: Revealing the Geometrical Alignment between the Transient Outflow and the Nuclear Dusty Region.The Astrophysical Journal Letters, 986, 2, L23.

関連部局

理学部・理学研究科