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京都大学 研究Discovery Saga
2025年6月9日

非自明な保存量がもたらす緩和の遅れ

―孤立量子多体系における熱平衡化の理解の深化に期待―

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
数物系科学工学
【Sagaキーワード】
光格子/統計物理/統計物理学/保存量/量子多体系/冷却原子/冷却原子系/レーザー/極低温
この研究の主な対象者
企業・研究者の方
公開日

概要

周囲の環境と相互作用をしない孤立した量子多体系がどのように熱平衡状態に至るか(熱化するか)という問題は、現代の量子物理学および熱・統計物理学における重要なトピックの一つとなっています。そこでは特に、熱化のメカニズムの理解のために、逆に熱化しない非エルゴード系と呼ばれる系が注目され、盛んに研究がなされています。そのような非熱化の振る舞いをもたらす機構として、非自明な保存量が存在することで熱化が妨げられる、ヒルベルト空間断片化と呼ばれる機構が近年注目を集めています。
 本多寛太郎 理学研究科博士課程学生(現:同博士研究員)、高橋義朗 同教授らの研究グループは、段下一平 近畿大学教授らの研究グループと共同で、光格子と呼ばれるレーザーで形成された周期的な格子中に極低温の原子気体を導入した系を用いて、ある特殊な粒子配置の初期状態からの緩和の遅れを観測しました。特に、この緩和の遅れがヒルベルト空間断片化に起因することを示す非自明な保存量の存在を初めて確認しました。本成果は、孤立量子多体系の熱平衡化に関する理解を深化させ、理論と実験の双方からの更なる研究を促進すると期待されます。
 本研究成果は、2025年6月6日に、国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載されました。


一次元光格子中の極低温原子のイメージ図。緑の曲面が光格子を、青の球体が原子を表す。
研究者のコメント 「孤立量子多体系の熱平衡化については、本研究で用いた冷却原子系をはじめとする近年の人工量子系の制御技術の発展に伴い、実験的にもますますホットなトピックとなっています。そのような中で、このトピックに関してタイムリーな貢献ができたことを嬉しく思います。」(本多寛太郎)

詳しい研究内容について

非自明な保存量がもたらす緩和の遅れ―孤立量子多体系における熱平衡化の理解の深化に期待―

研究者情報

研究者名 高橋 義朗
京都大学 教育研究活動データベース

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1126/sciadv.adv3255

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/294582

【書誌情報】
Kantaro Honda, Yosuke Takasu, Shimpei Goto, Hironori Kazuta, Masaya Kunimi, Ippei Danshita, Yoshiro Takahashi (2025). Observation of slow relaxation due to Hilbert space fragmentation in strongly interacting Bose-Hubbard chains.Science Advances, 11, 23, eadv3255.

関連部局

理学部・理学研究科