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東京科学大学 研究Discovery Saga
2025年5月21日

デジタル技術を活用した橋梁点検の合理化

インフラ維持管理の省力化を目指して

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域環境学工学
【Sagaキーワード】
セグメンテーション/自動運転/ディープラーニング/デジタル画像/画像処理/画像認識/人工知能(AI)/検索システム/海洋/デジタル化/コンクリート/マネジメント/社会基盤/鉄筋コンクリート/セメント/トンネル/維持管理工学/構造工学/自動化/自動車

2025年5月21日 公開

ポイント

点検時間や点検方法の制限を受ける跨線橋と交通規制を伴う横断歩道橋の効率的な点検方法を確立
劣化や損傷のデジタル画像と変状検知のAIの活用により従来の目視点検に代わる手法を提案
今後の労働者人口の減少を見据えて、インフラ維持管理の省力化に寄与

概要

東京科学大学(Science Tokyo) 環境・社会理工学院 土木・環境工学系の岩波光保教授らの研究チームは、東京都大田区およびキヤノン株式会社と共同で、点検時間や点検方法の制限を受ける跨線橋と交通規制を伴う横断歩道橋の点検方法を、劣化や損傷のデジタル画像と変状検知のAIを活用し効率化する提案をしました。また、この取り組みから得られたインフラ点検におけるデジタル画像とAIの活用にあたっての効果と留意点を明らかにしました。

今回の成果は産官学の深い連携によって達成されたものですが、今後も産官学の連携を強化して、デジタル技術を活用したインフラ維持管理の省力化と高度化を目指します。これにより、今後労働者人口が減少する状況においても、安全で安心な社会の実現に寄与していきます。

本成果は、5月26日付の「土木学会AI・データサイエンス論文集」誌に掲載されます。
図1. AIによる腐食検知

背景

2012年12月に発生した中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故を契機として、2014年に道路法が改正され、橋長2m以上の道路橋は5年に1度の近接目視による定期点検が義務化されました。しかし、全国には約73万橋の道路橋が存在することから、点検の効率的な実施が求められています。点検は、基本的には橋梁に近接した状態での目視により行うことになっていますが、目視による点検は多くの人手がかかるだけでなく、天候などの制約も大きく受けます。

一方で、デジタル技術の革新のスピードは目覚ましく、道路橋などのインフラ維持管理に活用することで、点検の省力化に貢献すると期待されています。本研究では、デジタル画像とAIを活用して、道路橋の目視点検に代わる効率的な点検手法を検討しました。

研究成果

本研究では、道路橋の点検の中でも特に効率化が求められている二つのユースケースを対象にして、デジタル画像とAIを活用した新たな点検手法を検討しました。一つ目は、点検作業が夜間に限定される跨線橋点検において、鉄筋コンクリート床版に生じるひびわれの把握と記録です。二つ目は、近接目視時に交通規制が必須となる横断歩道橋点検において、鋼部材に生じる腐食の把握と記録です。利用したAIは、ディープラーニング技術を用いた
セマンティックセグメンテーション[用語1]によりデジタル画像に写るひびわれの位置を抽出するとともに、その抽出過程で得た特徴量からひびわれ幅を推定するものです。

デジタル画像とAIを活用した橋梁点検は、点検対象面の撮影、画像処理、AIによるひびわれ等の変状検知、変状検知結果に基づく点検調書の作成の4工程からなります。本研究では、東京都大田区内にある跨線橋と横断歩道橋を対象として、跨線橋では夜間に、横断歩道橋では昼間にデジタル画像の撮影を行って、投光器やストロボといった照明や画像の合成処理方法などがひびわれ検出精度に及ぼす影響を従来の目視点検で検出されたひびわれの長さや幅、腐食範囲との比較によって詳細に調べました。また、これらの検討を通じて得られた知見として,デジタル画像とAIの活用による点検作業の効率化や合理化に資する効果と、デジタル写真を撮影する上での留意点についても明らかにしました。

社会的インパクト

本研究では、点検時間や点検方法の制限を受ける跨線橋と交通規制を伴う横断歩道橋の点検を、劣化・損傷箇所のデジタル画像と変状検知のAIの活用により効率化する手法を提案しました。これにより、点検作業に要する人手を削減することができるだけでなく、点検結果の整理や報告書の作成の自動化にも資することができます。また、点検作業に伴う道路の利用制限なども省略できるようになることから、市民生活の影響も軽減できます。さらに、点検結果のデジタル化が進むことから、点検結果のビッグデータ化や劣化予測の高度化を通じて、インフラ維持管理のDX化の進展に寄与することが期待されます。

今後の展開

今回対象とした跨線橋や横断歩道橋以外にも、点検の合理化が求められている橋梁やインフラは多数あります。デジタル画像やAIだけでなく、他のデジタル技術も活用しながら、インフラ維持管理全体の省力化、高度化のための研究を引き続き推進していきます。我が国では今後労働者人口が大幅に減少することが予測されていますが、これらの研究・開発により、そのような状況下においてもインフラの整備と維持管理を通じて、安全で安心な社会の実現に寄与していきます。

用語説明

[用語1]
セマンティックセグメンテーション:画像認識技術の一つで、画像内のそれぞれのピクセルがどのオブジェクトに属しているかを認識する技術。この技術は、車両の自動運転や医療分野の診断支援などのさまざまな分野で活用されている。

論文情報

掲載誌:
土木学会AI・データサイエンス論文集
タイトル:
橋梁点検でのデジタル画像とAIの活用と検証
著者:
穴吹まほろ、青木泰一郎、木村真嗣、後藤幹尚、岩波光保
DOI:
10.11532/jsceiii.6.1_86

研究者プロフィール


岩波 光保 Mitsuyasu IWANAMI
東京科学大学 環境・社会理工学院 土木・環境工学系 教授
研究分野:維持管理工学、コンクリート工学、海洋構造工学

関連リンク

プレスリリース デジタル技術を活用した橋梁点検の合理化—インフラ維持管理の省力化を目指して—(PDF)
世界初 深海でセメント硬化体の力学特性を計測開始|旧・東京工業大学

岩波 光保 Mitsuyasu Iwanami|研究者検索システム Science Tokyo STAR Search
社会基盤マネジメント研究室(岩波研究室)
環境・社会理工学院 土木・環境工学系
環境・社会理工学院

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