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大阪大学 研究Discovery Saga
2025年5月2日

宇宙プラズマ衝撃波による宇宙線の選択的加速を レーザー実験で初観測

「実験による天文学」を切り拓く2種類のパワーレーザー装置

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学環境学数物系科学工学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
最適化/学際研究/パルス/宇宙線加速/高エネルギー/高エネルギー天体/エネルギースペクトル/宇宙プラズマ/気候変動/スペクトル/宇宙線/宇宙物理学/衛星/検出器/衝撃波/天文学/望遠鏡/惑星/生成機構/持続可能/持続可能な開発/シミュレーション/ピコ秒/プラスチック/レーザー/室内実験/人工衛星/イミン
2025-5-30●自然科学系レーザー科学研究所准教授坂和 洋一

発表のポイント

パワーレーザーで作られた宇宙プラズマ衝撃波によって、高エネルギーの荷電粒子「宇宙線」の特性(イオン種の選択的加速)を世界で初めて実験室で観測
2つのパワーレーザーを用いることで、宇宙プラズマ衝撃波の生成に加えて、衝撃波による宇宙線の加速過程も同時に観測
実験による天文学であるレーザー宇宙物理学によって、宇宙線の加速メカニズム解明の進展に期待

発表概要

大阪大学レーザー科学研究所の坂和洋一准教授、佐野孝好准教授、先導的学際研究機構のTatiana Pikuz特任准教授(常勤)らの研究グループは、同研究所の2種類のパワーレーザーを用いたレーザー宇宙物理学実験を実施し、宇宙プラズマ衝撃波による宇宙線の選択的加速の実験室での観測に世界で初めて成功しました。
宇宙空間を満たしているプラズマ中に生成される宇宙プラズマ衝撃波は、宇宙のいたるところで観測されています。この衝撃波で荷電粒子が加速されて宇宙線が作られていると考えられています。しかし、人工衛星や望遠鏡による観測研究では、宇宙線加速の物理過程を十分に解明することはできていませんでした。
研究グループは、パワーレーザー「LFEX」と「激光XII号」を用いて生成した宇宙プラズマ衝撃波によって、特定のイオン種のみが選択的に加速されることを世界で初めて観測しました(図1)。天文学の研究方法に「実験」が加わることで、様々な条件を能動的に制御でき、何度でも繰り返し計測できるという利点があり、宇宙線の研究が大きく進展することが期待できます。
本研究成果は、米国科学誌「Physical Review Letters」に、2024年11月6日に公開されました。

図1. プラズマ衝撃波が生成されていない時(上図)と、生成されている時(中図)の、加速されたイオンの検出器における生データ。左側ほどエネルギーの高いイオンを示す。上図のいくつかの線状の信号は価数の異なるイオン種を示す。中図のように、プラズマ衝撃波によって炭素イオンは加速されず、水素イオンのみが選択的に加速されている。下図は、中図から求めたプラズマ衝撃波によって加速された水素イオンのエネルギースペクトル。

研究の背景

宇宙プラズマ衝撃波は高エネルギー天体などで発生し、ここで宇宙線が加速されていると考えられています。しかし、宇宙線の生成機構や、観測されているようなエネルギー分布をなぜ示しているのかなどは解明されていません。
宇宙プラズマ衝撃波や宇宙線の生成など、宇宙でおこる物理現象の研究には、人工衛星による「その場」観測や望遠鏡を用いたリモート観測と、理論・シミュレーションが行われています。これらに加え、近年は大型パワーレーザーが開発されたことで、実験室で「レーザー宇宙物理学」研究が行われるようになっています。実験では様々な条件を制御して、何度も現象を調べることができます。また、衝撃波の全体構造と、局所的なプラズマ温度・密度・速度などの物理量を同時に計測することが可能です。そのため、室内実験が可能になれば、従来とは異なる研究方法で、宇宙物理学の理解が飛躍的に進展する可能性があります。

研究の内容

坂和洋一准教授らの研究グループは、レーザー宇宙物理学の研究方法を用いて、実験室で宇宙線加速の機構解明に取り組みました。
プラスチック薄膜に激光XII号からのパルス幅がナノ秒(10億分の1秒)のレーザー光を照射すると、薄膜がプラズマ化して広がっていきます。数ナノ秒後に、このプラズマにLFEXからのパルス幅がピコ秒(1兆分の1秒)の強度の高いレーザー光を照射すると、LFEXレーザーの圧力でプラズマが押され、プラズマ衝撃波が生成されました。
さらに、LFEXレーザーの強度を、また照射タイミングを変えることによってプラズマの密度を、それぞれ最適化しました。その結果、図1に示すように、炭素イオンと水素イオンを含むプラズマから、水素イオンのみが選択的に加速されるという、プラズマ衝撃波による加速に特有な選択的なイオン加速現象を世界で初めて実験でとらえることに成功しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

宇宙線は人工衛星の故障や宇宙飛行士の被ばくの原因となり、星や惑星の形成、惑星の長期的な気候変動、生命の進化にも影響を与えると考えられています。今回成功した、大型のパワーレーザーを使用したプラズマ衝撃波による宇宙線生成の方法を用いて、宇宙線研究の進展が期待されます。

特記事項

本研究成果は、2024年11月6日に米国科学誌「Physical Review Letters」に掲載されました。
タイトル:“Laser-Driven Proton-Only Acceleration in a Multicomponent Near-Critical-Density Plasma”
著者名:Y. Sakawa, H. Ishihara, S. N. Ryazantsev, M. A. Alkhimova, R. Kumar, O. Kuramoto, Y. Matsumoto, M. Ota, S. Egashira, Y. Nakagawa, T. Minami, K. Sakai, T. Taguchi, H. Habara, Y. Kuramitsu, A. Morace, Y. Abe, Y. Arikawa, S. Fujioka, M. Kanasaki, T. Asai, T. Morita, Y. Fukuda, S. Pikuz, T. Pikuz, Y. Ohira, L. N. K. Döhl, N. Woolsey, and T. Sano
DOI:https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.133.195102
なお、本研究は、大阪大学、関西光科学研究所、神戸大学、九州大学、東京大学、Russian Academy of Sciences(ロシア)、HB11 Energy Holdings(オーストラリア)、University of York(英国)との共同研究として、日本学術振興会 学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金 (P15H02154, JP17H06202, JP19H00668, JP19H01893, JP22H00119)、研究拠点形成事業 B アジア・アフリカ学術基盤形成型「アジアにおけるレーザー宇宙物理学国際研究教育拠点 (JPJSCCB20190003)」、文部科学省 光・量子飛躍フラッグシッププログラム (Q-LEAP)「光量子科学によるものづくりCPS化拠点(JPMXS0118067246)」、UK EPSRC Grants No. EP/L01663X/1, No. EP/P026796/1、および大阪大学レーザー科学研究所・共同利用研究などの支援のもと実施されました。

参考URL

坂和洋一准教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/a6ea7a1634002383.html

SDGsの目標