[Top page] [日刊 研究最前線 知尋] [Discovery Saga総合案内] [大学別アーカイブス] [Discovery Saga会員のご案内] [産学連携のご案内] [会社概要] [お問い合わせ]

大阪大学 研究Discovery Saga
2025年4月28日

有機分子によるエチレンのキャッチ&リリースに成功

金属を使わずにエチレンを分離・貯蔵・変換する新技術

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
環境学化学総合理工工学総合生物農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
光エネルギー/金属錯体/光反応/遷移金属錯体/有機分子/貴金属/遷移金属/可視光/持続可能/省エネ/持続可能な開発/熱力学/省エネルギー/分子システム/エチレン/ホウ素/アルケン/分子変換/有機合成
2025-4-24●自然科学系基礎工学研究科教授鷹谷 絢

発表のポイント

金属を用いずに、有機分子によりエチレンを捕捉・放出する新手法を開発
これまでエチレンと有機分子の反応は元に戻ることができない「一方通行」だったが、光エネルギーと熱エネルギーを組み合わせて用いることで、可視光によりエチレンを捕捉し、熱によりエチレンを放出するという「オンデマンドで往復可能」な反応を実現することに成功
エチレン分離・精製プロセスの省エネルギー化、エチレンの貯蔵技術、エチレンを原料にした有用物質合成への応用に期待

発表概要

大阪大学大学院基礎工学研究科 特別研究学生の柳大輝さん(研究当時/現:東京科学大学理学院化学系博士前期課程所属)、鷹谷絢教授らの研究グループは、ホウ素リンからなる有機分子を用いてエチレンをオンデマンドで(必要なときに)捕捉・放出する分子システムの開発に世界で初めて成功しました。
これまでエチレンと有機分子は、元に戻ることができない「一方通行」の反応しか実現していませんでした。今回、研究グループは、光エネルギーと熱エネルギーを外部刺激として用いることで、可視光によりエチレンを捕捉し、熱によりエチレンを放出するという「往復可能」な反応を実現することに成功しました。これにより、省エネルギーなエチレン分離・精製プロセスの実現や、エチレンの貯蔵、貴金属を用いないエチレンの有用物質合成への変換プロセスの開発などへの応用が期待されます。
本研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に、4月23日(水)0時(日本時間)に公開されました。

図1. 光と熱により、エチレンを“オンデマンド”で捕捉・放出する新技術

研究の背景

エチレンは石油化学工業における最も重要な基幹化学品として大量に生産されていますが、エチレンの分離・精製には多大なエネルギーとコストがかかるという課題があります。そのため、外部刺激に応じてエチレンとの化学結合を形成したり元に戻したりすることができる分子は、エチレンの分離・精製・貯蔵のための新たな材料候補として有望です。しかし、そのような分子はごく一部の遷移金属錯体に限られており、エチレンの捕捉と放出を双方向で行うことができる有機分子はこれまで存在しませんでした。

研究の内容

鷹谷教授らの研究グループでは、ホウ素とリンを併せ持つ有機分子の光反応性に着目することで、光と熱を外部刺激としてエチレンを捕捉・放出する新しい分子システムを実現することに成功しました。これにより、可視光によりエチレンを捕捉し、熱によりエチレンを放出するという、エチレンのオンデマンド固定化が可能になりました。さらに本反応系を利用することで、アルケンの1種であるシクロオクテンを熱力学的に安定なcis体からより不安定なtrans体へと選択的に異性化させることにも成功し、可視光エネルギーと有機分子を用いたアルケンの分子変換法としての有用性を実証しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、低温・高圧条件を必要としない省エネルギーなエチレン分離・精製プロセスの実現や、エチレンの貯蔵技術としての展開、貴金属を用いないエチレンの有用物質への変換プロセスの実現などが期待されます。

特記事項

本研究成果は、2025年4月23日(水)0時(日本時間)に米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Light- and Heat-responsive Frustrated Lewis Pairs Enables On-demand Fixation of Ethylene”
著者名:Taiki Yanagi, Jun Takaya*(責任著者)
DOI:https://doi.org/10.1021/jacs.5c03130
なお、本研究はJSPS科学研究費助成事業基盤Bならびに学術変革領域研究(A)「デジタル有機合成(Digi-TOS)(公募)」の一環として行われました。

参考URL

鷹谷 絢 教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/55261308c029172a.html

SDGsの目標