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名古屋大学 研究Discovery Saga
2025年4月23日

ナノカーボンを簡便に可溶化・変換する新手法を開発

~有機発光材料や生物蛍光標識剤など応用の拡大に期待~

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
環境学数物系科学化学総合理工工学総合生物農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
多環芳香族炭化水素/太陽/芳香環/芳香族/アントラセン/ピレン/ナフタレン/細胞イメージング/芳香族化合物/芳香族炭化水素/有機薄膜太陽電池/溶媒和/ナノグラフェン/有機分子/発光材料/有機薄膜/LED/ナノカーボン/ベンゼン/太陽電池/電池/カーボン/グラフェン/環境問題/光プローブ/生体内/エチレン/炭化水素/プローブ/ミトコンドリア/官能基/蛍光プローブ/蛍光標識/生体分子

化学
2025.04.23
トランスフォーマティブ生命分子研究所
ナノグラフェン
伊丹 健一郎
伊藤 英人
可溶化
多環芳香族炭化水素
理学研究科
細胞イメージング

名古屋大学大学院理学研究科の伊藤 英人 准教授、理化学研究所 開拓研究所・環境資源科学研究センターの伊丹 健一郎 主任研究員(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM) 主任研究員 兼任)・チームディレクター、同研究所 開拓研究所の天池 一真 研究員らは、有機溶媒への溶解性が低いナノカーボンの一種である多環芳香族炭化水素(PAH)を効率的に可溶化・変換させる新手法として「高溶解性スルホニウム化」の開発に成功しました。
主に六員環(ベンゼン)骨格から成るPAHは、天然に豊富に存在する有機化合物です。これらを原料として有機反応によってさらに複雑な骨格を持つ有機分子へと変換することで、有機発光ダイオード、有機薄膜太陽電池、細胞組織の蛍光標識剤などへの応用が行われています。しかし、PAHは平面性の高い構造を持ち、分子同士の相互作用が強く、水に不溶で有機溶媒への溶解性も非常に低いため、その化学変換や応用は多くの課題がありました。そのため、PAHを可溶化させながら効率的に変換する手法の開発が望まれています。
本研究では、有機溶媒だけでなく水への溶解性を高める「高溶解性スルホニウム基」の導入手法を新たに開発しました。水、有機溶媒双方との溶媒和能が高いトリエチレングリコール側鎖を持つ高溶解性ジアリールスルホキシドを新たに合成し、酸性条件でPAHとともに反応させることで、PAH-スルホニウム塩が収率よく得られました。PAH-スルホニウム塩の有機溶媒への高い溶解性を活かして、さらなる官能基変換やナノグラフェン合成が容易に行えることが分かりました。また、合成した水溶性ペリレンースルホニウム塩は、動物細胞中のミトコンドリアという細胞小器官を選択的に蛍光標識できることも見出しました。
本研究は広範な多環芳香族化合物を効率的に変換・可溶化する新しい指針となることが予想され、ナノグラフェン合成への応用だけでなく、蛍光標識剤としての利用など幅広い分野・用途での応用展開が期待されます。
本研究成果は、2025年4月11日(日本時間)付で英国王立化学会誌「Chemical Science」のオンライン速報版に掲載されました。
 

発表のポイント

・高溶解性ジアリールスルホキシドの開発。
・市販の多環芳香族炭化水素(PAH)注1)から容易にPAH-スルホニウム塩を合成。
・PAH-スルホニウム塩は有機溶媒や水に良く溶解し、さらなる有機変換が可能。
・PAH-スルホニウム塩を用いたナノグラフェン合成を達成。
・水溶性かつ蛍光性のPAH-スルホニウム塩によるミトコンドリア選択的蛍光標識注2)
 
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
 

用語説明

注1)多環芳香族炭化水素(PAH):
ベンゼンやナフタレンよりも多くの芳香環をもつ芳香族炭化水素の総称であり、比較的小さな分子にはアントラセン、フェナントレン、ピレン 、ペリレン、コロネンなどの慣用名がある。英語略称名でPAHとも呼ばれる。
注2)蛍光標識、蛍光プローブ:
動物や植物の細胞組織の可視化や顕微鏡観察、タンパク質や核酸などの定量を行うために、組織や生体分子と特異的に相互作用して蛍光を発する有機分子(蛍光標識剤あるいは蛍光プローブ)を用いた蛍光標識が広く用いられている。蛍光標識は生体内でおこる現象を捉えるための手段として生命科学分野でなくてはならない技術となっている。
 

論文情報

雑誌名:英国王立化学会誌「Chemical Science」
論文タイトル:“Functionalization and solubilization of polycyclic aromatic compounds by sulfoniumization”
著者:Johannes E. Erchinger#、奥村 翼#、中田 奏未、清水 大輔、Constanstin G. Daniliuc、天池 一真*、Frank Glorius、伊丹 健一郎*、伊藤 英人*
(*は責任著者、下線は名古屋大学関係者、#はco-first author)
DOI:10.1039/d5sc01415h
 
※【WPI-ITbMについて】(http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp
名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)は、2012年に文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の1つとして採択されました。
ITbMでは、精緻にデザインされた機能をもつ分子(化合物)を用いて、これまで明らかにされていなかった生命機能の解明を目指すと共に、化学者と生物学者が隣り合わせになって融合研究をおこなうミックス・ラボ、ミックス・オフィスで化学と生物学の融合領域研究を展開しています。「ミックス」をキーワードに、人々の思考、生活、行動を劇的に変えるトランスフォーマティブ分子の発見と開発をおこない、社会が直面する環境問題、食料問題、医療技術の発展といったさまざまな課題に取り組んでいます。これまで10年間の取り組みが高く評価され、世界トップレベルの極めて高い研究水準と優れた研究環境にある研究拠点「WPIアカデミー」のメンバーに認定されました。
 

研究代表者

大学院理学研究科 伊藤 英人 准教授
https://synth.chem.nagoya-u.ac.jp/wordpress/staff/itohideto