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愛媛大学 研究Discovery Saga
2025年4月8日

海はおもしろい! 目に見えない微生物の生きざまから海の生態系と地球環境を知る

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
複合領域環境学数物系科学生物学工学農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
環境変化/生物海洋/生物地球化学/海洋/微生物群集/海洋物理/数値実験/地球化学/生物群集/沿岸環境/地球環境/センサー/モデル化/微粒子/有機物/生態系/海洋生態/海洋生態系/食物網/微生物/物質循環/将来予測/蛍光顕微鏡/コミュニケーション/細菌
2025.04.08

※掲載内容は執筆当時のものです。 沿岸環境科学研究センター / 講師 大林 由美子 / 専門:微生物海洋学、生物地球化学

研究の概要

地球表面の7割を覆う海。地球の気候や環境の変化には海が大きく影響しますし、海産物は私たちの重要な食料にもなっています。透明に見える海水のなかには、実はいろいろな種類の目に見えない小さな生き物(微生物)がたくさんいて、そうした小さな生き物たちが大きな海の生態系を支え、また、地球の環境の維持にもだいじな役割を果たしています。しかしそのしくみや実態にはわかっていないことがたくさんあります。 私は、海水中の微生物の多様な生きざまを調べることから海洋生態系での物質循環(図1)のしくみを探る研究を行っています。
図1. 海洋生態系での食物網と有機物を中心とした物質循環の模式図

また、海洋を含む地球表層での物質循環は、環境が変化したらどう変わるでしょうか?環境の変化は、そこに生きる微生物の種類や生き方・代謝能に変化をもたらす可能性があります。そうした微生物の変化がさらなる環境変化につながる可能性や、微生物群集・機能の変化によって環境の恒常性が保たれている可能性もあります。このような、環境と微生物の相互作用を観測や実験から解析し、地球環境の維持における微生物の役割、微生物群集やその機能の多様性と環境との関わりなどを探る研究を行っています。
写真1. 蛍光顕微鏡での微生物の観察。水色に光っているのが、蛍光試薬で染色した海水中の従属栄養細菌細菌です。とても小さいので1000倍に拡大する顕微鏡で観察・計数します。自然海水中の細菌(左)と有機物の多い海水中で増殖した細菌(右)

研究の特色


海洋の様々な事象には、海水の動きなどの物理的な作用、海水に溶けている物質の化学的性質、そして微生物を含む多様な生物の様々な機能やそれらの相互作用が複雑に絡み合っています。ですから、海の生態系や環境に関する研究は、海洋物理・化学・生物などのバックグラウンドを持つ研究者が協力して行います。また、実際の海の状況を知るための観測や実験が重要であることはもちろんですが、広い海すべての観測は難しく、総合的な理解や将来予測に繋げるためにも、モデル化や数値実験などのコンピューターを活用した研究も重要です。私自身ができることは限られていますが、このようにいろいろな分野の研究者と連携して、身近にありながらまだまだ謎の多い海の科学研究を進めています。
写真2. 船上で採水作業中。東海大学、静岡大学の研究者との共同研究で、東海大学海洋学部の小型調査船「北斗」に乗船し、駿河湾の生態系を調べる観測を行っているところです。写真は、各種センサーと採水器(灰色の筒)が一体となった装置を水深1000 mまで沈めてから引き揚げた後、採水器から各深度の海水をボトルに採取しているところ。

研究の魅力


目に見えない微生物が環境の中でどんな生き方をしているか、他の生物とどんな繋がりを持っているか、などまだ誰も知らなかっただろう自然のしくみの一端が見えたかも!と思える瞬間はとてもわくわくします。さらに、そういった微生物の生きざまと海洋の物理・化学・生物情報を合わせた解析から、微生物の機能と地球の気候や環境変化とのつながりを示す新たな仮説を考えたり、その証拠をつかんだぞと思えると、またまたとてもわくわくします。

今後の展望


海は大気とも繋がっています。エアロゾルと呼ばれる大気中の微粒子や気体は、海洋の一番表層を通して大気-海洋間で出入りしており、地球の気候にも関係します。海の一番表層での微生物の機能は、海洋から大気へ出る物質の性質を左右すると考えられますし、大気から海洋に入る物質が海洋の内部(深いところ)へ入っていくかどうかにも関係するでしょう。海洋のみならず、大気の物理・化学や気象の研究者とも協力して、海洋の一番表層での微生物の機能から海洋と大気をつなぐ研究も発展させていきたいと思います。

この研究を志望する方へのメッセージ


海の研究に限りませんが、自然のなかの真実を探るには、いろいろな分野の研究者と協力したり連携したり議論したりすることもとてもだいじです。自然科学の研究にかかわるには、物理・化学・生物・地学・情報科学といった各分野のすべてを得意である必要はありませんが、自分の知らない分野・苦手な分野の話もちょっと聞いてみようという好奇心、多様な人とコミュニケーションをとる力、コミュニケーションをとろうとする意欲や理解しようとする努力も大切にしてください。