量子スピン液体の検証方法を確立
――磁場の方向で温まりやすさが変化することに着目――
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
量子計算/キタエフ模型/コバルト酸化物/スピン液体/マグノン/マヨラナ粒子/準粒子/熱測定/揺らぎ/陽電子/量子スピン/素粒子/磁場/量子スピン液体/絶縁体/持続可能/持続可能な開発/コバルト/スピン/極低温/酸化物/量子力学/結晶構造/ルテニウム
2025年3月17日 14:00
研究者情報
〇大学院理学研究科物理学専攻准教授 水上雄太(みずかみ ゆうた)
研究室ウェブサイト
発表のポイント
発表概要
東京大学大学院新領域創成科学研究科の房圣杰(ファン センジェー)大学院生、水上雄太助教(研究当時、現在東北大学大学院理学研究科准教授)、橋本顕一郎准教授、芝内孝禎教授らの研究グループは、磁場の角度によって比熱がどのように変化するかを測定することで、蜂の巣格子を持つコバルト酸化物磁性絶縁体Na₂Co₂TeO₆(NCTO)のスピン状態の詳細を解明しました。本研究では、アレクセイ・キタエフにより予測された量子スピン液体(キタエフ・スピン液体、注1)ではマヨラナ粒子(注2)が磁場の方向に敏感に依存して熱的に変化をもたらすことに着目しました。磁場方向を変えてNCTOの比熱を測定することで、マヨラナ粒子に見られる特徴的な現象が観測されず、代わりにマグノン(注3)と呼ばれるスピンの波が存在することが示唆されました。これは、NCTOが純粋なキタエフ・スピン液体状態ではなく、異なる磁気状態を持つことを意味します。
今回の研究により、比熱の磁場角度依存性がキタエフ・スピン液体状態を見分けるための強力なツールになることが示され、今後の研究の発展を促進することが期待されます。
本研究成果は、米国科学誌 Physical Review Lettersにオンライン掲載され、Editors' Suggestionに選出されました。
図1:Na₂Co₂TeO₆(NCTO)の結晶構造の模式図
NCTOでは磁性を担うCoイオン(青丸)が蜂の巣上に配置されている。H||a及びH||a*はそれぞれ磁場の印加方向を示しており、この磁場の方向の違いが比熱に特異的な変化をもたらすことが明らかになった。
用語解説
(注1)量子スピン液体、キタエフ・スピン液体物質中のスピンは複雑な相互作用により、一般的には低温で同じ向きや反対の向きにそろい、特定の秩序を示す。一方で、スピンに量子力学的な揺らぎが強く働く場合、低温であってもスピンの秩序が形成されないことがある。このように、量子力学的な効果に起因してスピンの自由度が凍結しない、いわば液体のような状態を量子スピン液体と呼ぶ。量子スピン液体にはさまざまな理論モデルがあり、キタエフ・スピン液体、量子スピン液体はその代表例である。キタエフ模型では、従来の量子スピン液体に比べ、理論的に厳密に扱うことができることに加え、マヨラナ粒子という特殊な準粒子の存在から非常に注目を集めている。
(注2)マヨラナ粒子
1937年にエットーレ・マヨラナにより理論的に提案された素粒子である。一般的に、電子等に代表される粒子には、その電荷などの性質が反対となる反粒子が存在する。例えば電子の場合は、陽電子がその反粒子である。これに対し、マヨラナ粒子は、粒子と反粒子が同一となる性質を持つ。
(注3)マグノン
マグノンとは、スピンの集団的な振る舞いを指す物理現象である。通常の磁石ではスピンが整列して並ぶが、外部からエネルギーを加えると、一部のスピンがその並びからずれて波のように伝わる。このスピンの波の集団的な動きをマグノンと呼ぶ。
論文情報
タイトル:Field-Angle-Resolved Specific Heat in Na2Co2TeO6: Evidence against Kitaev Quantum Spin Liquid著者: Shengjie Fang, Kumpei Imamura, Yuta Mizukami, Ryuichi Namba, Kota Ishihara, Kenichiro Hashimoto, and Takasada Shibauchi*
掲載誌:Physical Review Letters
DOI:10.1103/PhysRevLett.134.106701
詳細(プレスリリース本文)
問い合わせ先
(研究に関すること)東北大学大学院理学研究科
准教授 水上 雄太(みずかみ ゆうた)
TEL:022-795-6476
Email:mizukami*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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